技術戦略 研究テーマの多様な情報源(その35)

更新日

投稿日

 

オープンイノベーション

 
前回は、個人、組織単位で共通的にスパークの頻度を上げる方法について、解説しました。今回は、革新的テーマ創出・実現のためのスパーク(「新結合」)における、オープン・イノベーションの役割について解説します。
 

1.オープン・イノベーションはなぜ必要か

 
 P&Gは8,600人の科学者を雇用しイノベーションに努めている。しかし、社外には150万人の科学者がいる。社内ですべてのイノベーションを行うのは合理的だろうか。こればオープン・イノベーションを提唱しているヘンリー・チェスブローの本(「OPEN INNOVATION ハーバード流 イノベーション戦略のすべて」)からの引用です。
 
 革新的テーマ創出・実現のためのスパークに、この150万人を使わない手はありません。この内部の人材の数と外部の人材の数の比較から、これら外部の技術、アイデア、能力をうまく使うことができれば、スパークの頻度は格段に高まることがわかります。
 

2.スパークにおけるオープン・イノベーションの意義

 
 それではオープン・イノベーションはスパークにどのような意義があるのでしょうか、そこには2つの意味があると思います。
 

(1)スパークの原料拡大のソースとしての外部人材

 
 150万人の人達は、対象分野におけるスパークに寄与する技術、アイデア、能力がその周辺に集積している集団です。そこには、自社の知らない様々な技術情報・市場情報というスパークの原料が沢山存在している筈です。それらの技術情報・市場情報を収集・蓄積することで、スパークの原料が大きく増えますので、スパークの頻度は格段に向上する筈です。
 

(2)スパークの機能としての外部人材

 
 上の点に加えて、スパークに向けてこれら膨大な人達の知識だけでなく、直接的にスパークに向けて彼らの頭脳を使わない手はありません。これらの人達と議論の機会を持つことで、彼らの頭脳を活用してスパークを直接的に生み出すこともできます。
 

3.オープン・イノベーション使ってスパークを実現するには

 
 どのようにしたらこれら外部のソースを使って、スパークに結び付けたら良いのでしょうか、もちろん既にこのメールマガジンの中で議論してきた様に様々なオープン・イノベーションを実現するための具体的方策があります。しかし、それ以前に重要なことが、上の2点のスパークモデルにおけるオープン・イノベーションの重要性を理解し、下の点からオープン・イノベーションという活動に戦略的にコミットメントすることが重要です。
 

(1)大きな投資を決意する

 
 オープン・イノベーションを小規模でやっても、その効果は知れているでしょう。市場の知識や技術の知識が多少増え、外部の頭脳を多少利用しても、スパークの頻度はさほど変わらないように思えます。
 
 しかし、外部を使って、市場知識・技術知識を何倍にも拡大し、かつ多くの外部の頭脳を利用できる仕組みや活動があれば、スパークの頻度は格段に増えるでしょう。そこから大きな収益を生み出す可能性のあるイノベーティブなアイデアが、数多く...
 

オープンイノベーション

 
前回は、個人、組織単位で共通的にスパークの頻度を上げる方法について、解説しました。今回は、革新的テーマ創出・実現のためのスパーク(「新結合」)における、オープン・イノベーションの役割について解説します。
 

1.オープン・イノベーションはなぜ必要か

 
 P&Gは8,600人の科学者を雇用しイノベーションに努めている。しかし、社外には150万人の科学者がいる。社内ですべてのイノベーションを行うのは合理的だろうか。こればオープン・イノベーションを提唱しているヘンリー・チェスブローの本(「OPEN INNOVATION ハーバード流 イノベーション戦略のすべて」)からの引用です。
 
 革新的テーマ創出・実現のためのスパークに、この150万人を使わない手はありません。この内部の人材の数と外部の人材の数の比較から、これら外部の技術、アイデア、能力をうまく使うことができれば、スパークの頻度は格段に高まることがわかります。
 

2.スパークにおけるオープン・イノベーションの意義

 
 それではオープン・イノベーションはスパークにどのような意義があるのでしょうか、そこには2つの意味があると思います。
 

(1)スパークの原料拡大のソースとしての外部人材

 
 150万人の人達は、対象分野におけるスパークに寄与する技術、アイデア、能力がその周辺に集積している集団です。そこには、自社の知らない様々な技術情報・市場情報というスパークの原料が沢山存在している筈です。それらの技術情報・市場情報を収集・蓄積することで、スパークの原料が大きく増えますので、スパークの頻度は格段に向上する筈です。
 

(2)スパークの機能としての外部人材

 
 上の点に加えて、スパークに向けてこれら膨大な人達の知識だけでなく、直接的にスパークに向けて彼らの頭脳を使わない手はありません。これらの人達と議論の機会を持つことで、彼らの頭脳を活用してスパークを直接的に生み出すこともできます。
 

3.オープン・イノベーション使ってスパークを実現するには

 
 どのようにしたらこれら外部のソースを使って、スパークに結び付けたら良いのでしょうか、もちろん既にこのメールマガジンの中で議論してきた様に様々なオープン・イノベーションを実現するための具体的方策があります。しかし、それ以前に重要なことが、上の2点のスパークモデルにおけるオープン・イノベーションの重要性を理解し、下の点からオープン・イノベーションという活動に戦略的にコミットメントすることが重要です。
 

(1)大きな投資を決意する

 
 オープン・イノベーションを小規模でやっても、その効果は知れているでしょう。市場の知識や技術の知識が多少増え、外部の頭脳を多少利用しても、スパークの頻度はさほど変わらないように思えます。
 
 しかし、外部を使って、市場知識・技術知識を何倍にも拡大し、かつ多くの外部の頭脳を利用できる仕組みや活動があれば、スパークの頻度は格段に増えるでしょう。そこから大きな収益を生み出す可能性のあるイノベーティブなアイデアが、数多く生まれる可能性があるのですから、そのための投資を惜しんではなりません。
 

(2)長期で投資を回収する覚悟を持つ

 
 同様の理由で、オープン・イノベーションを始めたらすぐ、革新的テーマがスパークで生まれるとは限りません。なにしろスパークの頻度を格段に増やすためには、多くの市場情報や技術情報の収集・蓄積が必要であるからです。長い目で、かつ継続的にこれら活動に地道な投資を行い、組織や個人の中に市場知識・技術知識を蓄積していかなければなりません。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
イノベーション 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その141)

  イノベーションの活動を行うことを妨げる「失敗のコストのマネジメント」の解説をしていますが、今回もこの解説を続けたいと思います。 &n...

  イノベーションの活動を行うことを妨げる「失敗のコストのマネジメント」の解説をしていますが、今回もこの解説を続けたいと思います。 &n...


技術企業の高収益化:差異化の源泉は徹底的な顧客視点にある

   収益の源泉が差異化にあることは、この連載の読者なら常識的知識だと思います。差異化によって、顧客価値が拡大し、収益が上がるというのが理...

   収益の源泉が差異化にあることは、この連載の読者なら常識的知識だと思います。差異化によって、顧客価値が拡大し、収益が上がるというのが理...


『価値づくり』の研究開発マネジメント (その5)

  前回は、「自社の市場と技術を目いっぱい広げ活動する」の中の「市場」について議論しました。今回は「技術を目いっぱい拡大」に関する活動を議...

  前回は、「自社の市場と技術を目いっぱい広げ活動する」の中の「市場」について議論しました。今回は「技術を目いっぱい拡大」に関する活動を議...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
擦り合わせ型開発と組み合わせ型開発とは

   「擦り合わせ型開発」という言葉や考え方は、東京大学の藤本隆宏教授が著書「能力構築競争」(中公新書)などで示したものです。マスコミなどでは...

   「擦り合わせ型開発」という言葉や考え方は、東京大学の藤本隆宏教授が著書「能力構築競争」(中公新書)などで示したものです。マスコミなどでは...


設計改善研究会の成果 伸びる金型メーカーの秘訣 (その39)

        今回、紹介する機械装置メーカーは、株式会社 K製作所です。同社は、自動車メーカーや工作機械メ...

        今回、紹介する機械装置メーカーは、株式会社 K製作所です。同社は、自動車メーカーや工作機械メ...


コアコンピタンスを生かした開発と販売の発展とは

        今回は、次のような想定企業の状況で、自社の独自技術を生かした製品開発と販売方法について解説します。   1. 想定企業の経営状況...

        今回は、次のような想定企業の状況で、自社の独自技術を生かした製品開発と販売方法について解説します。   1. 想定企業の経営状況...