マジョリティ 研究テーマの多様な情報源(その8)

更新日

投稿日

 『非』重要顧客から情報・知識を集める活動において、『非重要顧客』は情報の活用の面から3つのグループ、すなわち、新製品購入時期で区分されるライトハウスカスタマー(もっとも最初に関心を示す層)、マジョリティ(ライトハウスカスタマーやその次に新製品に関心を示すアーリーアダプターの評判を聞いて購入する層・市場の最も大きな部分を占める)そしてラガード(一番最後に購入する層)に分けて考えることができます。今回は、その内のマジョリティについて議論をしたいと思います。

1.アーリーアダプターとマジョリティの間に横たわる溝(キャズム)

 「キャズム」(地面などの裂け目)とは、米国人のジェフリー・ムーアが唱えた概念で、アーリーアダプターとマジョリティの間に横たわる裂け目のことを指し、その裂け目の存在により、多くの製品がアーリーアダプターに採用されながら、売上の大半を占めそれゆえに商業化の成功に欠かせないマジョリティに受け入れられず、失敗することを意味します。つまり、アイデア創出において、マジョリティの顧客に関する情報をいかに集めるかが、商業化・事業化の成功においては極めて重要であるということです。

2.マジョリティの情報収集上の顧客の特長

マジョリティには、情報収集の観点から以下の2つの大きな特徴があります。

(1)数が多く市場の全体構造の把握が難しい

 まず、「マジョリティ」という名前がついているように、市場の大半を占める顧客ですので、数が多いということです。問題は、これら顧客は数が多いゆえ様々な顧客から構成されていて、マジョリティの全体像を捉えることが難しいのです。それゆえ、自社が対象とすべき市場セグメントはどこなのか、そしてその共通的なニーズが何なのかを見極めることが難しいということがあります。

(2)自分のニーズが分かっていない

 マジョリティは、別名フォロアー(追随者)とも呼ばれます。フォロアーは、アーリーアダプター達の購買行動を見て、それに触発されて購入を始める層ですので、自分達の確たるニーズを明確に認識しているわけではありません。したがって、マジョリティに「何か困っていることはありませんか?」という問いかけをしても、明確な答えは返ってきません。

 

3.アーリーアダプターについての効果的な情報を集めるには

(1)数多くの顧客とコンタクトを持つ 

 効率は悪いのですが、数多くの顧客とコンタクトをする必要があります。逆に、効率が悪いゆえ、多くの企業がこのような活動をしようとしませんから、むしろ他社が追随しないような大きな規模で数多くの顧客とコンタクトをすることができれば、他社に対して差別化することができます。このような活動をしている企業に、女性下着メーカーであるワコールがあります。ワコールは...

 『非』重要顧客から情報・知識を集める活動において、『非重要顧客』は情報の活用の面から3つのグループ、すなわち、新製品購入時期で区分されるライトハウスカスタマー(もっとも最初に関心を示す層)、マジョリティ(ライトハウスカスタマーやその次に新製品に関心を示すアーリーアダプターの評判を聞いて購入する層・市場の最も大きな部分を占める)そしてラガード(一番最後に購入する層)に分けて考えることができます。今回は、その内のマジョリティについて議論をしたいと思います。

1.アーリーアダプターとマジョリティの間に横たわる溝(キャズム)

 「キャズム」(地面などの裂け目)とは、米国人のジェフリー・ムーアが唱えた概念で、アーリーアダプターとマジョリティの間に横たわる裂け目のことを指し、その裂け目の存在により、多くの製品がアーリーアダプターに採用されながら、売上の大半を占めそれゆえに商業化の成功に欠かせないマジョリティに受け入れられず、失敗することを意味します。つまり、アイデア創出において、マジョリティの顧客に関する情報をいかに集めるかが、商業化・事業化の成功においては極めて重要であるということです。

2.マジョリティの情報収集上の顧客の特長

マジョリティには、情報収集の観点から以下の2つの大きな特徴があります。

(1)数が多く市場の全体構造の把握が難しい

 まず、「マジョリティ」という名前がついているように、市場の大半を占める顧客ですので、数が多いということです。問題は、これら顧客は数が多いゆえ様々な顧客から構成されていて、マジョリティの全体像を捉えることが難しいのです。それゆえ、自社が対象とすべき市場セグメントはどこなのか、そしてその共通的なニーズが何なのかを見極めることが難しいということがあります。

(2)自分のニーズが分かっていない

 マジョリティは、別名フォロアー(追随者)とも呼ばれます。フォロアーは、アーリーアダプター達の購買行動を見て、それに触発されて購入を始める層ですので、自分達の確たるニーズを明確に認識しているわけではありません。したがって、マジョリティに「何か困っていることはありませんか?」という問いかけをしても、明確な答えは返ってきません。

 

3.アーリーアダプターについての効果的な情報を集めるには

(1)数多くの顧客とコンタクトを持つ 

 効率は悪いのですが、数多くの顧客とコンタクトをする必要があります。逆に、効率が悪いゆえ、多くの企業がこのような活動をしようとしませんから、むしろ他社が追随しないような大きな規模で数多くの顧客とコンタクトをすることができれば、他社に対して差別化することができます。このような活動をしている企業に、女性下着メーカーであるワコールがあります。ワコールは、1964年から女性の体形のデータを収集・蓄積しており、今では4万件のデータを持っていると言われています。加えて、その中には同じ女性の体形の経年変化のデータも含まれており、他社がこのようなデータを集めたいと思っても、年月を必要とする点で他社に対する模倣困難性を実現しています。

(2)アイデアをぶつけて反応を見る

 マジョリティの顧客には、「何か困っていることはありませんか?」という問いかけではなく、アイデア仮説をぶつけ、そしてて反応を見ることが効果的です。直接のアイデア仮説を得るのはライトハウスカスタマーやアーリーアダプターであり、その仮説を検証する対象がマジョリティになるという関係になります。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「ステージゲート法」の他のキーワード解説記事

もっと見る
革新的テーマ創出のための環境「失敗を罰しない」(後編)

 前回の、失敗を罰しないの前編に続いて後編です。革新的創出に向けた環境として「失敗を罰する」意味について議論を続けます。 ◆関連解説『ステージゲート法と...

 前回の、失敗を罰しないの前編に続いて後編です。革新的創出に向けた環境として「失敗を罰する」意味について議論を続けます。 ◆関連解説『ステージゲート法と...


革新的テーマを継続的に創出するための外発的動機付け

 動機づけには「内発的」なものと「外発的なもの」があるわけですが、一般的に「内発的動機づけ」は「内発的」であるがゆえに、モチベーションを故意に作り出すマネ...

 動機づけには「内発的」なものと「外発的なもの」があるわけですが、一般的に「内発的動機づけ」は「内発的」であるがゆえに、モチベーションを故意に作り出すマネ...


技術の目利きを考える

 時々、私が行なっているステージゲート法のセミナーで参加者の皆さんから出される質問に、テーマの選定には「技術の目利き」が必要かというものがあります。今回は...

 時々、私が行なっているステージゲート法のセミナーで参加者の皆さんから出される質問に、テーマの選定には「技術の目利き」が必要かというものがあります。今回は...


「ステージゲート法」の活用事例

もっと見る
3Mにおける組織内の知識・情報活用の事例

 研究テーマの設定、推進にあたって、組織内の知識・情報(特に技術に関する)の活用は極めて有用ですが、それを徹底しているのがイノベーションで有名な3Mです。...

 研究テーマの設定、推進にあたって、組織内の知識・情報(特に技術に関する)の活用は極めて有用ですが、それを徹底しているのがイノベーションで有名な3Mです。...


オープンイノベーションにおけるライトハウスカスタマーの事例2件

 情報・知識を多様化するコンセプトとして、オープンイノベーションが注目されています。今回は、そのための情報発信先としてのライトハウスカスタマーについて、B...

 情報・知識を多様化するコンセプトとして、オープンイノベーションが注目されています。今回は、そのための情報発信先としてのライトハウスカスタマーについて、B...


積極的情報発信の事例

  「情報の収集のための積極的情報発信」の必要性については、りんご(情報)を収穫するのに、一つ一つのりんごをりんごの木からもぎ取るのではなく、りんごの木の...

  「情報の収集のための積極的情報発信」の必要性については、りんご(情報)を収穫するのに、一つ一つのりんごをりんごの木からもぎ取るのではなく、りんごの木の...