技術戦略 研究テーマの多様な情報源(その33)

更新日

投稿日

 
inf342
前回の『価値づくり』に向けての三位一体の技術戦略 第3回では、個人単位でテーマ創出のためのスパーク(革新的アイデアの創出)を起こす重要性を解説しました。一方で、スパークの頻度は多ければ多い程良いので、スパークを起こす場を個人に限定する必要はありません。今回は、組織単位でスパークを起こす意義およびその方法について解説したいと思います。
 

1.個人単位でスパークを起こすデメリット:スパークの原料である知識の制約

 
 個人単位でスパーク起こす利点は、一人の頭の中に市場知識と技術知識が蓄積されていれば、24時間いつでもどこでもスパークが起こる可能性があることという話をしました。しかし、そこには当然デメリットがあります。それは、スパークの頻度は、市場や技術の知識の量に大きく左右されますが、個人一人一人の頭の中に蓄積されている市場知識や技術知識は、限定的であるということです。
 

2.組織単位でスパークを起こすための活動の3つの意義

 
 一方で、組織単位すなわち複数の人間の知識間のスパーク、具体的には複数のメンバーの間でのブレーンストーミング等の議論であれば、スパークの原料である市場や技術の知識は、当然個人単位の場合より多くより多様になります。その結果、個人単位では実現できないような知識や情報の組み合わせが生まれ、新しいアイデア発想頻度が高まります。
 

 また、人間は個人により、その思考の志向、すなわち考える方向性の癖のようなものや、発想力(スパークの頻度)そのものにも相違あるように思えます。したがって、仮に同じ市場や技術の知識をベースにしても、その思考の志向の違いなどにより、異なるアイデアが発想されるということもあるでしょう。
 

 また副次的な効果として、複数のメンバーの参加の下アイデア発想のためのブレーンストーミングなどを行うわけですが、その過程でメンバー間で市場や技術の知識の交換がなされ、個人の知識が拡大します。これにより、その後のスパークの活動の中で、個人単位でのスパークを含め、よりその頻度が増えることになります。
 

3.組織単位でスパークを起こすための工夫

 
 以上のような意義を、組織単位でより強化された形で実現するためには、いくつかの工夫が必要です。
 
(1)異なる知識や発想の志向を持つメンバーを選択する
 
 上でも述べたように、組織単位でスパークを起こすメリットは、多様な知識や多様な思考の志向をベースに発想できることです。もし、メンバーが同じような知識や思考の志向しか持っていないのであれば、スパークの頻度は原理的に増えません。したがって、異なった知識や異なる思考の志向を持つ人を選ぶ、すなわち多様性の追求が重要となります。
 
(2)対象者を都度変える
 
 しかし、いつも同じメンバーで議論すると、その内アイデアが枯渇する可能性があります(もちろん日々の活動の中で、新たな市場や技術に関する知識の吸収・蓄積が行われている筈ですが)したがって、メンバーを都度変えることも有効です。
 
(3)他者のアイデアに触発され新しいアイデアを連想するような工夫をする
 
 複数の人間の間でスパークを起こすには、必ずそのための時間と場所が必要となります。この制約の中で数多くのスパークを実現するためにも、工夫が必要です。1つ目の工夫は、単に意見の出し合いではなく、他のメンバーにより...
 
inf342
前回の『価値づくり』に向けての三位一体の技術戦略 第3回では、個人単位でテーマ創出のためのスパーク(革新的アイデアの創出)を起こす重要性を解説しました。一方で、スパークの頻度は多ければ多い程良いので、スパークを起こす場を個人に限定する必要はありません。今回は、組織単位でスパークを起こす意義およびその方法について解説したいと思います。
 

1.個人単位でスパークを起こすデメリット:スパークの原料である知識の制約

 
 個人単位でスパーク起こす利点は、一人の頭の中に市場知識と技術知識が蓄積されていれば、24時間いつでもどこでもスパークが起こる可能性があることという話をしました。しかし、そこには当然デメリットがあります。それは、スパークの頻度は、市場や技術の知識の量に大きく左右されますが、個人一人一人の頭の中に蓄積されている市場知識や技術知識は、限定的であるということです。
 

2.組織単位でスパークを起こすための活動の3つの意義

 
 一方で、組織単位すなわち複数の人間の知識間のスパーク、具体的には複数のメンバーの間でのブレーンストーミング等の議論であれば、スパークの原料である市場や技術の知識は、当然個人単位の場合より多くより多様になります。その結果、個人単位では実現できないような知識や情報の組み合わせが生まれ、新しいアイデア発想頻度が高まります。
 

 また、人間は個人により、その思考の志向、すなわち考える方向性の癖のようなものや、発想力(スパークの頻度)そのものにも相違あるように思えます。したがって、仮に同じ市場や技術の知識をベースにしても、その思考の志向の違いなどにより、異なるアイデアが発想されるということもあるでしょう。
 

 また副次的な効果として、複数のメンバーの参加の下アイデア発想のためのブレーンストーミングなどを行うわけですが、その過程でメンバー間で市場や技術の知識の交換がなされ、個人の知識が拡大します。これにより、その後のスパークの活動の中で、個人単位でのスパークを含め、よりその頻度が増えることになります。
 

3.組織単位でスパークを起こすための工夫

 
 以上のような意義を、組織単位でより強化された形で実現するためには、いくつかの工夫が必要です。
 
(1)異なる知識や発想の志向を持つメンバーを選択する
 
 上でも述べたように、組織単位でスパークを起こすメリットは、多様な知識や多様な思考の志向をベースに発想できることです。もし、メンバーが同じような知識や思考の志向しか持っていないのであれば、スパークの頻度は原理的に増えません。したがって、異なった知識や異なる思考の志向を持つ人を選ぶ、すなわち多様性の追求が重要となります。
 
(2)対象者を都度変える
 
 しかし、いつも同じメンバーで議論すると、その内アイデアが枯渇する可能性があります(もちろん日々の活動の中で、新たな市場や技術に関する知識の吸収・蓄積が行われている筈ですが)したがって、メンバーを都度変えることも有効です。
 
(3)他者のアイデアに触発され新しいアイデアを連想するような工夫をする
 
 複数の人間の間でスパークを起こすには、必ずそのための時間と場所が必要となります。この制約の中で数多くのスパークを実現するためにも、工夫が必要です。1つ目の工夫は、単に意見の出し合いではなく、他のメンバーにより発想されたアイデアに触発され、新しいアイデアの連想が促進されるような議論の進め方が必要です。もう1つの工夫が、限られた時間の中で数多くのアイデアに触れることにより連想の頻度も向上しますので、事前に参加メンバーは、できるだけ数多くのアイデアを準備し、当日の議論の場に臨むことです。
 
(4)スパークの場を数多く持つ
 
 そして単純ではありますが、複数の人の間でのスパークの場を数多く持つということです。革新的テーマの創出はいずれの企業にとって極めて重要なことですので、このような活動に経営資源を優先的に投入する価値は十分あります。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
計画と実施1 技術人材育成の進め方(その1)

  人口減少による人手不足、既存製品のコモディティ化、新技術の導入などに対応していくために、企業は自社の開発力を迅速に強化する必要がありま...

  人口減少による人手不足、既存製品のコモディティ化、新技術の導入などに対応していくために、企業は自社の開発力を迅速に強化する必要がありま...


設計品質の作り込みと、人的設計ミス防止策(その1)

  【設計品質の作り込みと人的設計ミス防止策 連載目次】 1. 設計品質とはなにか 2. 設計プロセスと設計ミス回避策 3. 設計ミ...

  【設計品質の作り込みと人的設計ミス防止策 連載目次】 1. 設計品質とはなにか 2. 設計プロセスと設計ミス回避策 3. 設計ミ...


ムーンショットとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その62)

◆ 挑戦的な研究開発:ムーンショット型研究開発事業について感じたこと  今回は、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度」の話題です。  ム...

◆ 挑戦的な研究開発:ムーンショット型研究開発事業について感じたこと  今回は、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度」の話題です。  ム...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
‐市場の観察から開発テ-マを得る‐  製品・技術開発力強化策の事例(その6)

 前回の事例その5に続いて解説します。新技術が社会に普及し始めると、それに関連した新商品を顧客の要求に即応して供給出来ないで、新技術搭載製品の供給不足が起...

 前回の事例その5に続いて解説します。新技術が社会に普及し始めると、それに関連した新商品を顧客の要求に即応して供給出来ないで、新技術搭載製品の供給不足が起...


開発工数メトリクス1 プロジェクト管理の仕組み (その21)

 前回のプロジェクト管理の仕組み (その20)に続いて解説します。    進捗管理のための基本メトリクスセットについての解説を続けています。...

 前回のプロジェクト管理の仕組み (その20)に続いて解説します。    進捗管理のための基本メトリクスセットについての解説を続けています。...


先行技術テーマを企画段階で評価するには

1.先行技術開発    イノベーション、すなわち価値創造がものづくり企業におけるR&Dのミッションとして期待される中で、それを実現す...

1.先行技術開発    イノベーション、すなわち価値創造がものづくり企業におけるR&Dのミッションとして期待される中で、それを実現す...