マトリクス体制での品質保証3 プロジェクト管理の仕組み (その32)

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 前回のマトリクス体制での品質保証2に続いて解説します。
 
 これまで説明してきたのは、プロジェクトごとに作成する品質計画(プロジェクト品質計画)、マトリクス体制では縦軸で作成する品質計画ですが、組織品質計画は、横軸の技術領域(職能)軸で作成する品質計画です。技術領域軸は、技術領域ごとにプロジェクトを横断した組織ですから、そのマネジャー(グループマネジャー; GM)の役割は、個々のプロジェクトではなくすべてのプロジェクトでバランスよく自分のグループメンバーのパフォーマンスを最大化することであり(全体最適)、そのために中期的にグループメンバーのスキルアップやレベルアップを行うことになります。
 
 組織品質計画も、このようなグループマネジャーの役割に合わせた内容になります。つまり、グループでの中長期的な品質レベルを向上するための計画です。したがって、中長期的に品質レベルを上げるためのチャレンジをすること、その結果として、個々のプロジェクトでのメンバーのパフォーマンスを継続的に向上させるような計画になっている必要があります。現状維持ではなく品質レベルを上げるための挑戦的な計画だということです。このような計画にするためには、グループごとに現状を分析して共通課題を明らかにし、その課題を解決するための手法・技法の導入や根本原因に迫る作業改善を行う必要があります。従来と同じようなことを実施するだけの計画ではダメです。
 
 組織品質計画はこのような目的、位置づけのものですから、記述する内容は以下のようなものになります。実施する対策ごとに次に示す項目を具体的に記述します。
 
【課題】
この対策で解決する現状の課題。現状の定量的な分析も含めて記述します。
 
【目標】
この対策で達成すること。目標達成を何で(どのような指標で)測定するのかと達成すべきその数値目標を記述します。
 
【実施内容】
この対策で実施する手法や技法の説明。現状の延長ではないレベルアップを実現するために、どのようなアプローチ(方法)をとるのかを記述します。
 
【実施手順】
前述の実施内容をどのような手順で実施するのかの説明。実施にはどのようなステップが必要なのかということ、そして、ステップごとのオーナー(責任者)と実施期限を記述します。
 
【実施対象】
ほとんどの場合、対策の適用先は実際のプロジェクトになる。したがって、この対策をどのプロジェクトに対して適用するのかを記述します。
 
【進捗確認方法】
対策実施の状況をどのような方法で確認するのかの説明。進捗確認のための管理指標を明確にして、四半期ごとなど適切な期間ごとにその管理指標値の目標値(マイルストーン)を記述します。
 
【実施スケジュール】
前述の実施手順、実施対象、進捗確認のための管理指標とその値などを、ひとつのスケジュール上で把握できるようにしたものです。
 
 このように、マトリクス体制における品質計画は、短期的でバラツキをなくす活動が中心となるプロジェクト品質計画と、中長期的でより高い品質レベルを目指す品質計画の両方が必要です。そして、この2つの品質計画にもとづいて品質活動が並行して実施されることになります。図66 はこの2つの品質計画を説明したもので...
 前回のマトリクス体制での品質保証2に続いて解説します。
 
 これまで説明してきたのは、プロジェクトごとに作成する品質計画(プロジェクト品質計画)、マトリクス体制では縦軸で作成する品質計画ですが、組織品質計画は、横軸の技術領域(職能)軸で作成する品質計画です。技術領域軸は、技術領域ごとにプロジェクトを横断した組織ですから、そのマネジャー(グループマネジャー; GM)の役割は、個々のプロジェクトではなくすべてのプロジェクトでバランスよく自分のグループメンバーのパフォーマンスを最大化することであり(全体最適)、そのために中期的にグループメンバーのスキルアップやレベルアップを行うことになります。
 
 組織品質計画も、このようなグループマネジャーの役割に合わせた内容になります。つまり、グループでの中長期的な品質レベルを向上するための計画です。したがって、中長期的に品質レベルを上げるためのチャレンジをすること、その結果として、個々のプロジェクトでのメンバーのパフォーマンスを継続的に向上させるような計画になっている必要があります。現状維持ではなく品質レベルを上げるための挑戦的な計画だということです。このような計画にするためには、グループごとに現状を分析して共通課題を明らかにし、その課題を解決するための手法・技法の導入や根本原因に迫る作業改善を行う必要があります。従来と同じようなことを実施するだけの計画ではダメです。
 
 組織品質計画はこのような目的、位置づけのものですから、記述する内容は以下のようなものになります。実施する対策ごとに次に示す項目を具体的に記述します。
 
【課題】
この対策で解決する現状の課題。現状の定量的な分析も含めて記述します。
 
【目標】
この対策で達成すること。目標達成を何で(どのような指標で)測定するのかと達成すべきその数値目標を記述します。
 
【実施内容】
この対策で実施する手法や技法の説明。現状の延長ではないレベルアップを実現するために、どのようなアプローチ(方法)をとるのかを記述します。
 
【実施手順】
前述の実施内容をどのような手順で実施するのかの説明。実施にはどのようなステップが必要なのかということ、そして、ステップごとのオーナー(責任者)と実施期限を記述します。
 
【実施対象】
ほとんどの場合、対策の適用先は実際のプロジェクトになる。したがって、この対策をどのプロジェクトに対して適用するのかを記述します。
 
【進捗確認方法】
対策実施の状況をどのような方法で確認するのかの説明。進捗確認のための管理指標を明確にして、四半期ごとなど適切な期間ごとにその管理指標値の目標値(マイルストーン)を記述します。
 
【実施スケジュール】
前述の実施手順、実施対象、進捗確認のための管理指標とその値などを、ひとつのスケジュール上で把握できるようにしたものです。
 
 このように、マトリクス体制における品質計画は、短期的でバラツキをなくす活動が中心となるプロジェクト品質計画と、中長期的でより高い品質レベルを目指す品質計画の両方が必要です。そして、この2つの品質計画にもとづいて品質活動が並行して実施されることになります。図66 はこの2つの品質計画を説明したものです。マトリクス体制においても、個別プロジェクトでの品質維持(バラツキ削減)と、継続的な品質向上を保証することが可能になります。
 
R&D
図66.マットリックス体制における品質計画
 
 今回はマトリクス体制での品質計画の運用方法について解説しました。繰り返しになりますが、品質管理の仕組みを正しく運用するための基本は適切な品質計画を作成することです。今回解説した考え方は、適切な品質計画を作成するための仕組みの一例ですので、これを参考に皆さんの組織での運用を考えてみていただきたいと思います。
 
 

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この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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