プロジェクト管理の仕組み (その13) 進捗管理の精度を上げる:第1回

 前回は進捗管理の基本的な考え方を紹介しました。今回は、この考え方にしたがってどのような方法で実際に進捗を把握できるのかを紹介したいと思います。具体的な話に入る前に、基本的な考え方についてもう一つ覚えていただきたいことがあります。
 
 図40のように進捗管理の基本は、計画と実績の乖離を定量的に把握することでした。そして、必要最小限の進捗管理指標として、図41のように基本メトリクスセットが効果的、効率的であることを紹介しました。したがって、基本メトリクスセットを使って進捗管理をするためには、基本メトリクスセットの各指標(メトリクス)について計画を立てておくこと、つまり、見積もりを作成しておく必要があります。
 
 
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    図40.計画作成と進捗管理
 
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    図41.基本メトリックスセット
 
 もう一つ覚えていただきたい考え方というのは、この見積もり作成の考え方です。ある程度仕組みが整った組織では、計画の重要性が理解されているので必ず見積もりを作成していますが、その作成手順や見積もり根拠は曖昧な状態になっていることが少なくありません。見積もりは属人的な作業になっていて、誰が見積もりを行ったかが重視されることになっているのです。したがって、見積もり作成も仕組み化することが大切です。見積もりのための基準を作り、見積もりは必ずこの基準をもとに作成するという仕組みですが、この仕組み化ための基本的な考え方が「基準モデル」です。まず、製品開発プロジェクトにおける適切な計画(見積もり)とはどんなものか考えてみてください。
 
 製品開発は1年程度の期間で開発し、商品としてマーケットにリリースして、顧客に買ってもらうことで利益をもたらすことを要求されています。したがって、製品開発プロジェクトにおける適切な計画とは、どこかのテキストにかかれてあるような理想でもなければ、できると思っていない顧客や営業から与えられたスケジュールでもありません。できるという確信につなげることができるのは、これまでの自分たちの成功パターンに乗っ取った開発になっている計画ではないでしょうか。それでも条件を整えるのは大変ですが。
 
 少なくとも、自分たちがこれまでやったこともないことを計画にしても、それができる保証はありません。結果として奇跡的にできることはありますが、その奇跡にかけるという判断もあるでしょうが、それはギャンブルといっていいでしょう。製品開発でギャンブルをしても良い状況はかなり限られているはずです。したがって、自分たちの成功パターンが明らかになっていて、それに従って計画を作成することができれば、計画の妥当性を議論することも容易になりますし、成功の確率は高くなると考えられます。基準モデルとは、このような考え方にもとづいて作成した、自分の組織の成功パターンを数値化したものの集合です。
 
 現実には、すべてのプロジェクトが自分たちの成功パターン通りにできることすら簡単なことではありません。個々のプロジェクトが目指すべきは、まずは、成功パターンにしたがった開発にすることです。すべてのプロジェクトが成功パターン通りに開発できれば組織としての開発力は格段に向上します。これが仕組み化のねらいです。そして、実際の開発組織では成功パターンが明確になっていないことが多く、成功パターンを誰もが参照できる定量的なモデル(基準モデル)として整理することからはじめる必要があります。図43 は基準モデル作成の流れを示しています。
 
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図43.基準モデルの作成方法
 
 最初にやることは、すでにあるプロジェクトの記録からできるだけ多くのデータを拾い出すことです。そして、成功したプロジェクトとそうでないものを層別し、成功データの傾向を分析します。そうすると、必ずあるパターンが存在することがわかります。このパターンを定量的に表現したものが基準モデルです。基準モデルはひとつのデータではなく、定量データの集合であり、その中には、ただの数値もあればグラフで表すような数値セットになっているものもあります。
 
 一度、基準モデルができれば、プロジェクトが終了するたびに基準モデルを見直します。成功のレベルは段々と高くなるはずですから、成功パターンである基準モデルは常に見直ししておくことが大切です。たとえ成功レベルが下がったとしても同じです。継続的に見直しをして、基準モデルが常に自分たちの成功パターンをあらわすようにしておく必要があります。上記の最初のステップができないという場合があるかもしれませんが、基準モデルを作る方法は必ずあります。とにかく作って、基準モデルからプロジェクト計画を作成し、プロジェクトが終わったら基準モデルを見直すというサイクルを一日でも早く回すことが大切です。
 
 次回は、進捗管理の精度を上げる:第2回を解説します。
 

この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

社会や生活を変える「ものづくり」と、そんな製品やサービスを開発する「ひとづくり」を行う組織づくりのために、日科技連石川賞を受賞した仕組み改革の実績や、オリンピック金メダルを生んだコーチング技術を活用した意識改革の実績など、持っているリソー…

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