3Mにおける組織内の知識・情報活用の事例

3Mイノベーション
 研究テーマの設定、推進にあたって、組織内の知識・情報(特に技術に関する)の活用は極めて有用ですが、それを徹底しているのがイノベーションで有名な3Mです。ここでは3Mの仕組みを見てみましょう。

 

1.テクニカルフォーラム

 3Mが、プラットフォーム技術を設定し、社内全体で組織横断的にそれらプラットフォーム技術を核として様々な製品や事業を創出する戦略をとっていることは有名です。現在プラットフォーム技術は40以上もあり、定期的に経営陣により見直されています。

 3Mはこのプラットフォーム技術毎に、テクニカルフォーラムという事業部門の垣根や国境を越えて技術とテーマアイデアの交流を促進し、また技術者の専門知識の強化・拡大をするための仕組みを導入しています。このテクニカルフォーラムは、3Mの全技術者(現時点で8,400人)が参加する大規模なものです。この活動は既に1951年にスタートして、半世紀以上もの長い間利用されており、興味深いことに技術者の自主的な活動により運営されていますが、活動資金は会社が負担します。

 具体的な活動としては、年2回技術者が自分の技術を全社に発表し、また他の技術者の発表を聞く場を設け、技術の交流を行います。また、技術毎の勉強会(チャプターと呼ばれる)も開かれています。3Mでは、このような活動からも、多くの製品や事業のアイデアが創出されています。

 

2.15%カルチャー

 3Mの15%ルールは有名で、現在は15%カルチャーという名前に変更されています。この変更は、「15%ルール」は会社が決めたルールではなく、自主的に活用するものであるという理由によります。15%カルチャーとは、技術者・研究者の自分の時間の15%程度を限度に、自分に組織内で与えられた仕事以外に、自分の意思で自由に時間を使って良いというものです。3Mでは、その時間を使って、他部門の人達を支援するということなどが行われています。 

 たとえば、上で紹介したテクニカルフォーラムで知り合った別々の組織に属する研究者の間で、ある研究者が別の研究者にあるテーマの支援の依頼をすると、もう一人の研究者が自分の15%の時間を使って、その依頼者を支援するということができるわけです。3Mではこのような、技術に関し、組織の垣根を越えた交流の促進が明文化されています。

 

3.技術は全社に属す 

 3Mでは、技術は全社の資産として位置付けられています。 企業が事業部制をとるようになると、各事業部は、お互いに協力するどころか、競合関係にもなりえます。私が以前勤務していたエレクトロニクス会社では、同じ製品分野を複数の事業部門が対象としていたために、事業部門同志は明確に競合関係であり、反目しあっているという状況でした。各事業部門は収益目標の達成という大きな責任が与えられていますので、そのような状況になるのはある意味必然とも言えます。 

 それは3Mとて同様であると思います。しかし、3Mでは、こと技術に関しては、このように明確に全社の資産であると位置づけられているのです。そもそも技術は使っても、減ることはありませんし、むしろ技術は使うことにより、より進化・深化していくものです。そのような活動を全社横断的に行えば、その技術の進化・深化は大きく促進されます。まさに3Mのプラットフォーム戦略はその点を狙っています。このように3Mでは、全社に存在する技術を積極的に活用する風土・仕組みがあるのです。

 

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4.技術を使って組織に横串を通す

 知識・情報は技術に関するものとは限りません。市場の情報や、他組織の持つその他の能力や資産なども含まれます。3Mの場合は技術を中心に組織間のシナジーの発揮の工夫がなされていますが、このような技術を使って横串がさされる工夫があれば、当然技術以外の情報の流通も促進されるということが起こります。


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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