目で見る管理 流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その81)

投稿日

生産マネジメント

 

【実践編 第4章目次】

第4章 標準作業で作業のムダを取る

1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する
2. 動作分析で作業のムダを取る
3. 自働化と人離しで作業者の負担を減らす
4. 生産を守る保全・安全の取り組みを進める
5. 「目で見る管理」で現状をオモテ化する←今回の記事

 

【この連載の前回:流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その80)へのリンク】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!
 

5. 「目で見る管理」で現状をオモテ化する

問題解決のためには、オモテ化が前提。問題が目に見える職場をつくる。

 

(1)優秀な工場は問題のオモテ化ができている

私は仕事柄、多くの工場を見て歩きますが「ここは優秀だな」と思う工場と、残念ながら「これではダメだな」と感じてしまう工場があります。どこが違うと思いますか?

 

優秀な工場は、問題が少ないというのではありません。外からはわからなくても、どんな工場でも、大なり小なり、さまざまな問題を抱えているもので、きっと、問題のない工場などないのです。では、優秀な工場はどんなところが優秀なのでしょうか? 優秀な工場とダメな工場の分岐点はどこにあるのでしょうか?

 

それは、抱えている問題を素早く見つけて、解決できる力があるかどうかということです。優秀な工場は、問題やムダを顕在化、つまり、オモテ化するのがうまいのです。そして、問題は問題として受け止め、真の原因を究明して、その解決のために全社をあげて取り組む姿勢ができているのです。つまり、問題発見能力、原因究明能力、問題解決能力が鍛えられているのです。

 

ところが、ダメな工場にはこれが感じられません。いろいろな活動を手がけてはいるのですが、どうも効果が上がりません。見ていると、何が問題で、どんなムダがあるのかがよくわかっていないのです。そこで、むやみにさまざまな改革・改善に手を出すのですが、結局、その場しのぎに終わってしまうのです。

 

このような状態になったいちばんの原因は、問題がオモテに出にくくなっていることです。不良が出ても隠ぺいする、納期が遅れてもうやむやにする、といったことを続けていては、問題が潜在化してしまい、人の目に触れることはありません。当然のことながら、それらの問題が解決されることはありません。

 

問題を解決しても、しなくても、世の中は絶えず動いていて、新たな問題が次から次へと発生します。早く抜本的な改革を行なって、そのような状態から脱却しなければ、問題やムダはどんどん累積していき、その企業や工場はいつか淘汰されてしまうでしょう。この状態を解決するには、抱えている問題がオモテに出てくるしくみをつくらなければなりません。

 

正常と異常をきちんと区分し、異常やムダをあぶり出します。そして、ここで重要なことは、誰でもひと日でわかるようにして「目で見て管理できる」ようにすることです。えてして、管理とは、 書類や数値などによる机上の作業になりがちであり、また、一部の人だけがわかるような方法になりがちです。それでは全社活動として進展していきません。

 

いってみれば、「目で見る管理」とは、管理の「標準化」です。標準化とは、誰でもできるようにすることです。誰もがひと目で把握し管理できるしくみにすることが大事なのです。注意して見なくても、問題やムダのほうから、自然に目に飛び込んでくるような方法にしなければなりません。

 

異常を踏まえたうえで、モノをつくる環境、作業、工程について、それぞれの問題点や作業の進捗状況、ミスなどの異常がひと目でわかるようなしくみをつくっていく方法を紹介しましょう。

 

(2)職場環境の「目で見る管理」

① 赤札

改革・改善の基礎として、 5Sの「整理」を行なう際に、生産活動に不要なモノをオモテ化するために「赤札作戦」を行ないます。不要なモノに赤い紙を貼って、誰が見ても、それが不要であることをわからせる方法で、その赤い紙を「赤札」といいます。

 

② 工場のロケーション管理

工場全体の床面を碁盤の目状に分け、それぞれに、所番地を付けるようにコード付けをして、地図のように管理する方法をロケーション管理といいます。こうすることで、工場のどこに何があるかがわかり誰でも行きたい場所に行くことができるようになります。

 

③ 職場看板

表札のように、課・ライン・工程・機械のそれぞれの職場を示す看板で、工場・部・機械などの看板があります。

 

④ 置き場3定看板

部材・製品・治工具などについて、どこに(定位)、なにを(定品)、いくつ(定量)置くのかを決めて表示した看板です。

 

⑤ 区画線(置き場線)

通路やモノの置き場などを明らかにするために引いた区画のための線で、白線や黄線があります。

 

⑥ 扉の開閉線

扉の開閉の形に合わせて引いた線で、多くは、白もしくは淡色の破線が川いられます。これはKY(危険予知)運動の一環でもあります。

 

⑦ トラマーク

黄色と黒のトラの模様に似ていることからトラマークといわれ、通路の段差などの危険箇所をはっきりと示すためのマークです...

生産マネジメント

 

【実践編 第4章目次】

第4章 標準作業で作業のムダを取る

1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する
2. 動作分析で作業のムダを取る
3. 自働化と人離しで作業者の負担を減らす
4. 生産を守る保全・安全の取り組みを進める
5. 「目で見る管理」で現状をオモテ化する←今回の記事

 

【この連載の前回:流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その80)へのリンク】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!
 

5. 「目で見る管理」で現状をオモテ化する

問題解決のためには、オモテ化が前提。問題が目に見える職場をつくる。

 

(1)優秀な工場は問題のオモテ化ができている

私は仕事柄、多くの工場を見て歩きますが「ここは優秀だな」と思う工場と、残念ながら「これではダメだな」と感じてしまう工場があります。どこが違うと思いますか?

 

優秀な工場は、問題が少ないというのではありません。外からはわからなくても、どんな工場でも、大なり小なり、さまざまな問題を抱えているもので、きっと、問題のない工場などないのです。では、優秀な工場はどんなところが優秀なのでしょうか? 優秀な工場とダメな工場の分岐点はどこにあるのでしょうか?

 

それは、抱えている問題を素早く見つけて、解決できる力があるかどうかということです。優秀な工場は、問題やムダを顕在化、つまり、オモテ化するのがうまいのです。そして、問題は問題として受け止め、真の原因を究明して、その解決のために全社をあげて取り組む姿勢ができているのです。つまり、問題発見能力、原因究明能力、問題解決能力が鍛えられているのです。

 

ところが、ダメな工場にはこれが感じられません。いろいろな活動を手がけてはいるのですが、どうも効果が上がりません。見ていると、何が問題で、どんなムダがあるのかがよくわかっていないのです。そこで、むやみにさまざまな改革・改善に手を出すのですが、結局、その場しのぎに終わってしまうのです。

 

このような状態になったいちばんの原因は、問題がオモテに出にくくなっていることです。不良が出ても隠ぺいする、納期が遅れてもうやむやにする、といったことを続けていては、問題が潜在化してしまい、人の目に触れることはありません。当然のことながら、それらの問題が解決されることはありません。

 

問題を解決しても、しなくても、世の中は絶えず動いていて、新たな問題が次から次へと発生します。早く抜本的な改革を行なって、そのような状態から脱却しなければ、問題やムダはどんどん累積していき、その企業や工場はいつか淘汰されてしまうでしょう。この状態を解決するには、抱えている問題がオモテに出てくるしくみをつくらなければなりません。

 

正常と異常をきちんと区分し、異常やムダをあぶり出します。そして、ここで重要なことは、誰でもひと日でわかるようにして「目で見て管理できる」ようにすることです。えてして、管理とは、 書類や数値などによる机上の作業になりがちであり、また、一部の人だけがわかるような方法になりがちです。それでは全社活動として進展していきません。

 

いってみれば、「目で見る管理」とは、管理の「標準化」です。標準化とは、誰でもできるようにすることです。誰もがひと目で把握し管理できるしくみにすることが大事なのです。注意して見なくても、問題やムダのほうから、自然に目に飛び込んでくるような方法にしなければなりません。

 

異常を踏まえたうえで、モノをつくる環境、作業、工程について、それぞれの問題点や作業の進捗状況、ミスなどの異常がひと目でわかるようなしくみをつくっていく方法を紹介しましょう。

 

(2)職場環境の「目で見る管理」

① 赤札

改革・改善の基礎として、 5Sの「整理」を行なう際に、生産活動に不要なモノをオモテ化するために「赤札作戦」を行ないます。不要なモノに赤い紙を貼って、誰が見ても、それが不要であることをわからせる方法で、その赤い紙を「赤札」といいます。

 

② 工場のロケーション管理

工場全体の床面を碁盤の目状に分け、それぞれに、所番地を付けるようにコード付けをして、地図のように管理する方法をロケーション管理といいます。こうすることで、工場のどこに何があるかがわかり誰でも行きたい場所に行くことができるようになります。

 

③ 職場看板

表札のように、課・ライン・工程・機械のそれぞれの職場を示す看板で、工場・部・機械などの看板があります。

 

④ 置き場3定看板

部材・製品・治工具などについて、どこに(定位)、なにを(定品)、いくつ(定量)置くのかを決めて表示した看板です。

 

⑤ 区画線(置き場線)

通路やモノの置き場などを明らかにするために引いた区画のための線で、白線や黄線があります。

 

⑥ 扉の開閉線

扉の開閉の形に合わせて引いた線で、多くは、白もしくは淡色の破線が川いられます。これはKY(危険予知)運動の一環でもあります。

 

⑦ トラマーク

黄色と黒のトラの模様に似ていることからトラマークといわれ、通路の段差などの危険箇所をはっきりと示すためのマークです。

 

⑧ 通行線

その通路における右側通行、 もしくは左側通行を示す矢印やマークです。

 

⑨ 形跡整頓

治工具や部品などのモノを置く場所に、その形を描いておくことで、置き場の位置とそこに瞬くべきモノがはっきりと認識できます。

 

⑩ 色別整頓

置くモノと置かれる場所を同一の色にすることで、色によって、正しい置き場かどうか、ひと目でわかるようにする方法です。

 

⑪ 斜め線

棚などに納めるファイルの位置が正しいか否か、ひと目で判別するために、ひとかたまりのファイルの背全体に斜めに引いた線です。

 

⑫ 足型清掃点検

機械の点検ポイントの前に人の足型を描き、 日常清掃の際にその足型に立って機械の点検をするようにします。

 

次回は、作業の「目で見る管理」から解説します。

 

【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

古谷 誠

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!


「トヨタ生産方式」の他のキーワード解説記事

もっと見る
安全は生産を支える 流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その80)

  【実践編 第4章目次】 第4章 標準作業で作業のムダを取る 1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する2. 動作分析で作業のムダ...

  【実践編 第4章目次】 第4章 標準作業で作業のムダを取る 1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する2. 動作分析で作業のムダ...


: 工程の流れを見えるようにする JIT(その6)

【JIT(ジャストインタイム)連載目次】 1. リードタイムの短縮は、全体を見ることから 2. コストダウンはリードタイム短縮で 3. バッ...

【JIT(ジャストインタイム)連載目次】 1. リードタイムの短縮は、全体を見ることから 2. コストダウンはリードタイム短縮で 3. バッ...


基本的な考え方 ジャスト・イン・タイム生産(その13)

【目次】 第2章 基本的な考え方を押さえておく (1) 「改革」である   「改善」と「改革」の違いとは  「自己啓発」ではなく「自己革新」を行な...

【目次】 第2章 基本的な考え方を押さえておく (1) 「改革」である   「改善」と「改革」の違いとは  「自己啓発」ではなく「自己革新」を行な...


「トヨタ生産方式」の活用事例

もっと見る
トヨタ生産方式の応用 事例

1.ドイツ系電器メーカー  トヨタ生産方式が有名になり出した頃、筆者はシンガポールで技術協力の専門家として多くの会社の指導に当っていました。当時は多くの...

1.ドイツ系電器メーカー  トヨタ生産方式が有名になり出した頃、筆者はシンガポールで技術協力の専門家として多くの会社の指導に当っていました。当時は多くの...


トヨタ生産方式を賢く応用するKnow Why -シンガポールでの事例-

 トヨタ生産方式が1980年代半ばに世界に知られるようになってから30年、多くの企業が失敗を繰り返す中で、筆者は、「かんばん」とか「ジャスト・イン・タイム...

 トヨタ生産方式が1980年代半ばに世界に知られるようになってから30年、多くの企業が失敗を繰り返す中で、筆者は、「かんばん」とか「ジャスト・イン・タイム...


回転ずしに見るサプライチェーン

 寿司職人がにぎるカウンター方式のにぎり寿司は、需要予測によってあらかじめ用意されたシャリとネタをバッファ(在庫)として持ち、実需(オーダー)によってネタ...

 寿司職人がにぎるカウンター方式のにぎり寿司は、需要予測によってあらかじめ用意されたシャリとネタをバッファ(在庫)として持ち、実需(オーダー)によってネタ...