製品・技術開発力強化策の事例(その43)‐能力開発のシステム創り

◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。

   (1) 情報伝達の仕組み創り
   (2) 目標を明確にする
   (3) 目標達成に必要な基礎知識の習得
   (4) 目標達成感を味わい自信を持つ事
   (5) 会合技術の確立
   (6) 競争意識の醸成
   (7) リ-ダの育成
   (8) 先進事例を知り危機感を持つ
   (9) 日々改善する職場風土の育成
  (10)担当以外の分野にも関心を注ぐ企業風土創り
  (11)収益性の判定基準があること
 
 これらの項目を満たしそれぞれの項目間で相互作用が働くような運用をする事で能力開発が自ずから進められるようになります。 以上の条件が満たされていない企業では、損失が随所に発生していて企業に活力が乏しく、従業員の能力開発も進みません。これから、これらの1~11の事項について解説します。今回の第1回では、(1)について、以降は、第2回から、順番に解説します
 
 変化の激しい経済環境の下、変化に迅速に対応可能な柔軟性のある組織を作り上げる事は多くの中小企業の課題である。仮に、情報収集とそれに伴う研究開発活動で成果を上げていても、それ以降の生産等の企業内の業務で開発成果を軌道に乗せて、新しい変化をきちっと受け止めて対応できるような組織運営が行われていなければ、開発の成果を業績に反映させる事は出来なくなります。
 
 その意味から、全社の従業員がそれぞれの立場で日常から継続的に改善に取り組み、変化に対して柔軟に対処できる行動様式を体得する事が不可欠の事項です。つまり、問題の取り上げ方と処理の仕方が問われるのです。それには、日常業務を通じて従業員の能力開発が進められるような組織運営が行われている必要があります。「従業員を社外研修に派遣して多額の投資をしたが、一向に効果が現れない。中小企業では元々磨いて光るような素質のある人材がいないのだから、人材育成は大変困難である」そのような感覚を持つ経営者は少なくありません。このように個々の対策で人材育成を図る事は、既に多くの企業でやり尽くされているのに効果を上げていない理由は、システム化された業務展開により能力開発が自ずから促されるような仕組みが出来ていないからです。
 
 企業が事業を進めていくには、様々な問題解決を図る必要があり、その問題解決の経験をする事で能力開発が可能になります。社外の研修講座に参加する等の方法を講じる事は知識の習得には必要であるが、応用能力を育成するには業務処理の過程で遭遇する問題を解決する体験をさせる必要があります。 つまり、日常業務の中で能力開発が進められるような組織運営のあり方が講じられている必要があります。これらについて考えてみます。
 

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(1)情報伝達の仕組み創り

 組織に活力のある企業では、経営に関する様々な情報伝達のル-ルが確立していて、この後で記述する情報処理に関する基本的な原則に適った運営法が取られています。つまり、顧客からの情報収集や競合企業の動向観察等は企業の進路決定に大きな影響を及ぼします。顧客の潜在的なニ-ズや競合企業の情報を収集する仕組みが作られており、それが社内に伝達され、分類集約されていく活動が定着していて、 顧客と接触する立場にある担当者は情報を収集し報告する事が日常業務になっています。 このため、 解決すべき問題点そして企業の今後の進むべき方向は如何にあるべきか、これらに関する情報蓄積が確実に行われているため、顧客に対する提案営業や経営判断の資料を改まって整備されなければならないような事態にはなりません。また、社内の業務処理過程で発生した問題点(ロスタイム、不良品、納期遅れ、設備トラブル、受注を他社に奪われた内容分析等)が記録報告され、その情報は解析されて対策を講じることが日常業務になっています。 そのために、似たような問題が再発する事は余りなく、必然的に生産性の向上が図られています。この様な情報処理の仕組みが創り上げられていると、自ずから能力開発が促される様になります。 情報の収集伝達が有効に作用するには次の原則に適った組織運営法が講じられている必要があります。
 
     ◆情報は連続して流される事
     ◆双方向で処理される事
     ◆情報は関係者の間で共有する事
 
①情報は連続して流される事
 
 情報は伝達されるル-トが決められていて、停滞する事なく関係者の間を連続して流されていくル-ルが定着していなければなりません。情報が停滞するとタイミングを失したり、問題処理が円滑に進められなくなります。その他予期せぬ損失が生じる事が起こります。その結果、情報の価値は大きく減退します。
 
 情報の内容に応じた情報伝達のル-トが定められていて、仮に停滞した場合、誰のところでどの程度の時間が停滞していたのか、それが分る様になっていて、警告する責任者も明確になっている必要があります。 パソコンの普及でこれらの情報伝達の状況は直ぐに補足できるようになってきましたが、多くの中小企業では文書での情報伝達が主流であるから、日付印などの利用により回覧日付が判るようなル-ルを設ける必要があります。更に大切な事は、回覧されてくる文書の保管法を決め、停滞している文書が一目で判るような管理法が取られている事が何よりも大切な事です。文書の保管法がまちまちで何処に何を置くべきか、そのル-ルが無いため、停滞している文書の存在に気がつかないで何時までも放置されるような事が生じます。
 
 最も良くない事は、口頭での情報伝達です。口頭では聞き違い、聞き漏らし、忘れる等の問題が確実に発生します。 必ず何らかの形の文書にして情報伝達するようにしなければなりません。しかし、いちいち文字にして報告する事は、中小企業では人材不足のため出来ません。と平然と言い放つ経営者が少なくありません。 文字にして情報を示すように努める事で、考える機会ができ、その積み上げで観察力が向上していきます。 口頭での説明では曖昧な表現でも済まされることが、文字にして現す段階になるといい加減な表現では済まされなくなります。
 
②双方向で処理される事
 
 報告を受けた上司は報告者に直ちにコメントを示し、双方向の情報処理が行われる事で報告者は報告の遣り甲斐を感じて、以降の報告にも力が入ります。また、その都度コメントすることで、情報に付加価値が付くような作用も働きます。そのような仕組みが出来ていないと、以降の情報の収集と報告は確実に減衰していきます。 例えば、営業日報に所定の事項を記載するように要求しているのに協力しない。と嘆いている上司の場合。その上司は営業日報の所見欄に何の記載もしていない事が多く見られます。
 
③ 情報は関係者の間で共有する事
 
 関係者の間に情報が伝達されるル-ルがあり、情報を共有する仕組みが出来上がっていること。 人は何かの問題に遭遇した場合、それと類似の問題と比較し判断して行動します。 つまり、日常から伝達されている情報が判断に影響する事になるので、情報伝達は非常に大切な能力開発の手段になります。
 
 これに反して「このことは彼等に関係ないから伝える必要がない」と見なして伝達範囲を狭めたり、作業者まで下ろす必要がない。として一方的に情報伝達の必要性を否定する事は、基本的に間違っています。現場の声として、「遅くまで時間を費やして会議をしているが、一体何を話しているのか、何の説明もなく判らない。上層部の管理者の会議だから重要な事を検討していると思うが、自分達は知らなくてよいのか、協力のしようがない」このような考え方をしている作業員はかなり多く見かけています。事前に様々な情報が伝えられていると、 困難な問題に遭遇した場合協力的な行動が現れ、伝達される情報が少なくなるほど、非協力的な作業員が増えます。
 

この記事の著者

新庄 秀光

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・会社の業務と各自の能力開発への取組みの整合性を図ることで、組織が活性化します。又、その仕組み創りの支援を行います。 ・問題解決の経験を多く積むことが知識の応用力を啓発することになります。学習した知識が豊富でも応用力が乏しければ、能力は…

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