‐能力開発のシステム創り 製品・技術開発力強化策の事例(その48)

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◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。
   (1) 情報伝達の仕組み創り
   (2) 目標を明確にする
   (3) 目標達成に必要な基礎知識の習得
   (4) 目標達成感を味わい自信を持つ事
   (5) 会合技術の確立
   (6) 競争意識の醸成
   (7) リ-ダの育成
   (8) 先進事例を知り危機感を持つ
   (9) 日々改善する職場風土の育成
  (10)担当以外の分野にも関心を注ぐ企業風土創り
  (11)収益性の判定基準
 
 これらの項目を満たしそれぞれの項目間で相互作用が働くような運用をする事で能力開発が自ずから進められるようになります。 以上の条件が満たされていない企業では、損失が随所に発生していて企業に活力が乏しく、従業員の能力開発も進みません。以下にこれらの1~11の事項について解説します。このページでは、第5回に続いて10項、11項について、解説します。
 

(10)担当以外の分野にも関心を注ぐ企業風土創り

 専門を究める事は大切な事ですが、専門を究めるにはその周辺の技術や経営問題にも関心を注がないと、自己の専門にしている業務が適切に行えない事になります。 つまり、営業の担当者は自企業の商品がどのような技術で構成されているのか、技術の担当者は顧客の要求がどのように変化しつつあるのか、それらが理解できていなければ、有用な開発は行えません。自分の専門領域に閉じこもっていては経営に資する業務処理はできないで、独善的な仕事の処理に陥ります。
 
 経営のシステム化が大切であると述べてきましたが、自己の担当業務以外の関連部門に関する情報伝達に関するル-ルが創り上げられるように互いに努力する企業風土が育成されない限り、経営のシステム化は空文と化して効率的な経営は展開できません。
 
 具体的な方法としては、定期的な職場の配置換えが有用です。営業と技術の職場を経験させるようにしている従業員60名程度の機械メ-カがあります。この企業の経営者によると「技術が分からなくては営業が出来ない。反対に顧客が何を考えているのか、それが判らないと市場に受け入れられる製品開発は出来ない」そのような考え方により両部門間での人事交流が定期的に行われています。
 
 そして、人員構成から人事交流が難しい企業の場合、営業の案件により技術部門の担当者を同行させて顧客の声や現場に接する機会を設けて技術者の見識が閉鎖的にならないように配慮する必要があります。更に、この企業では営業や資材部門を経験した管理者に経理課長を担当させています。担当した当初は状況が判らなくて女性の経理担当者に教えてもらっていますが、半年もすると結構てきぱきと業務をこなしています。この様に現場が判る管理者が経理を担当しているので、生産コストに対する意識が強く、経営会議では生産担当者にこんなコスト管理ではだめだ。と厳しく指摘していても、生産担当者はもっともな事として、反発する事無く意見を受け入れて改善が進んでいます。
 
 規模が小さくなるほど人員の組合せが固定化し、管理者と作業員の関係に変化が出てくる事は稀です。 それでは作業員は何時まで経っても指示される立場のままです。 このような環境下では従業員が夢を描き出す事は難しく、ピラミット組織では意欲的に仕事に従事するような組織運営は出来なくなります。より多くの人が能力に応じて担当業務別のリ-ダになり、その業務が完了した時にはリ-ダから解放され、適時適切な役割分担の制度が理想です。
 
 経営システムの根本は経営方針を展開していく過程で、円滑な事業が進められる様に様々なル-ルを創り上げ、そのル-ルを確実に守りながら、不都合な点を改善していくことで効率経営が実現できます。一度合意を得て決めたル-ルは必ず守る厳しさが必要で、その反面でル-ルを決めるまでは意見の吸収に努め、理解していない事項があると考えられた場合には、親切に教えることが大切です。
 

(11)収益性の判定基準

 厳しい不況下のため売上高の増加に関心が傾きやすいが、実際には利益の確保に関心が注がれなければなりません。 売上高を上げるために技術面で未経験の製品を受注して大きな赤字を発生させた例や時には倒産に追い込まれた例が見られています。 技術面で未経験の分野が含まれる製品を受注する場合、甘い期待を描くことなく、先行投資のために技術的な経験を積むことを狙って、赤字の発生も覚悟しての受注であれば問題は少ないでしょう。
 
 どの企業よりも短い納期で品質クレ-ムゼロを実現する事、他社では...
◆能力開発のシステム化に必要不可欠の条件。
   (1) 情報伝達の仕組み創り
   (2) 目標を明確にする
   (3) 目標達成に必要な基礎知識の習得
   (4) 目標達成感を味わい自信を持つ事
   (5) 会合技術の確立
   (6) 競争意識の醸成
   (7) リ-ダの育成
   (8) 先進事例を知り危機感を持つ
   (9) 日々改善する職場風土の育成
  (10)担当以外の分野にも関心を注ぐ企業風土創り
  (11)収益性の判定基準
 
 これらの項目を満たしそれぞれの項目間で相互作用が働くような運用をする事で能力開発が自ずから進められるようになります。 以上の条件が満たされていない企業では、損失が随所に発生していて企業に活力が乏しく、従業員の能力開発も進みません。以下にこれらの1~11の事項について解説します。このページでは、第5回に続いて10項、11項について、解説します。
 

(10)担当以外の分野にも関心を注ぐ企業風土創り

 専門を究める事は大切な事ですが、専門を究めるにはその周辺の技術や経営問題にも関心を注がないと、自己の専門にしている業務が適切に行えない事になります。 つまり、営業の担当者は自企業の商品がどのような技術で構成されているのか、技術の担当者は顧客の要求がどのように変化しつつあるのか、それらが理解できていなければ、有用な開発は行えません。自分の専門領域に閉じこもっていては経営に資する業務処理はできないで、独善的な仕事の処理に陥ります。
 
 経営のシステム化が大切であると述べてきましたが、自己の担当業務以外の関連部門に関する情報伝達に関するル-ルが創り上げられるように互いに努力する企業風土が育成されない限り、経営のシステム化は空文と化して効率的な経営は展開できません。
 
 具体的な方法としては、定期的な職場の配置換えが有用です。営業と技術の職場を経験させるようにしている従業員60名程度の機械メ-カがあります。この企業の経営者によると「技術が分からなくては営業が出来ない。反対に顧客が何を考えているのか、それが判らないと市場に受け入れられる製品開発は出来ない」そのような考え方により両部門間での人事交流が定期的に行われています。
 
 そして、人員構成から人事交流が難しい企業の場合、営業の案件により技術部門の担当者を同行させて顧客の声や現場に接する機会を設けて技術者の見識が閉鎖的にならないように配慮する必要があります。更に、この企業では営業や資材部門を経験した管理者に経理課長を担当させています。担当した当初は状況が判らなくて女性の経理担当者に教えてもらっていますが、半年もすると結構てきぱきと業務をこなしています。この様に現場が判る管理者が経理を担当しているので、生産コストに対する意識が強く、経営会議では生産担当者にこんなコスト管理ではだめだ。と厳しく指摘していても、生産担当者はもっともな事として、反発する事無く意見を受け入れて改善が進んでいます。
 
 規模が小さくなるほど人員の組合せが固定化し、管理者と作業員の関係に変化が出てくる事は稀です。 それでは作業員は何時まで経っても指示される立場のままです。 このような環境下では従業員が夢を描き出す事は難しく、ピラミット組織では意欲的に仕事に従事するような組織運営は出来なくなります。より多くの人が能力に応じて担当業務別のリ-ダになり、その業務が完了した時にはリ-ダから解放され、適時適切な役割分担の制度が理想です。
 
 経営システムの根本は経営方針を展開していく過程で、円滑な事業が進められる様に様々なル-ルを創り上げ、そのル-ルを確実に守りながら、不都合な点を改善していくことで効率経営が実現できます。一度合意を得て決めたル-ルは必ず守る厳しさが必要で、その反面でル-ルを決めるまでは意見の吸収に努め、理解していない事項があると考えられた場合には、親切に教えることが大切です。
 

(11)収益性の判定基準

 厳しい不況下のため売上高の増加に関心が傾きやすいが、実際には利益の確保に関心が注がれなければなりません。 売上高を上げるために技術面で未経験の製品を受注して大きな赤字を発生させた例や時には倒産に追い込まれた例が見られています。 技術面で未経験の分野が含まれる製品を受注する場合、甘い期待を描くことなく、先行投資のために技術的な経験を積むことを狙って、赤字の発生も覚悟しての受注であれば問題は少ないでしょう。
 
 どの企業よりも短い納期で品質クレ-ムゼロを実現する事、他社では出来ない技術分野を保有している事などが収入を上げるのに不可欠の事項です。利益確保の状況を確認するため、一人当たり及び主要品目別の限界利益の目標を立て、月次決算で業績を明確にし、目標を達成するにはどのような問題解決を図らねばならないのか。 その対策を研究討議する。 改善策を研究しないで、月次決算の数値だけを議論しても成果は得られません。 決算に現れる数値は何かの行動をした結果であるから、何が原因でこのような結果になったのか、今後はどのような改善が必要なのか、行動のあり方に視点を当てて見る必要があります。
 
   限界利益=売上高-(材料費+外注費+仕入商品)
 
 開発テ-マを決めるための情報収集に始まり、開発への取り組み方から販路開拓に当たっての留意点について記述し、更に、開発品の生産性向上のためには、社内情報が設計に集約される必要のあることを事例に基づいて記述してきました。そして、これらの一連の経営の効率を高めるには、志の高い経営方針の展開のあり方が非常に重要で、 これらの事業展開の過程で、人材育成が図られるような人材育成のシステム創りが必要です。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

事業革新の仕組み作りを通じて、貴社の組織を活性化します。

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