‐開発品の効果的な生産の仕組み創り‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その24)

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 前回の事例その23に続いて解説します。多品種少量生産で利益が出る経営形態を実現するに際して、最も効果が上がるのは設計時点の取り組み方です。設計段階の思想が曖昧なままで、それ以降の工程で如何にコストダウンの努力をしても大きな成果を上げることは出来ません。技術開発の得意な企業は、顧客の要求する製品の開発を比較的に簡単に引き受けています。その結果、見積もり段階では利益が得られると考えて受注した製品は、生産の段階になって、図面の通りに加工が出来ないことがあります。組み立て段階で組みつけが出来ないことがあります。検査では要求されている性能が発揮できないことがあります。これらの問題に直面し設計図の訂正を行う必要に迫られる事は、少量受注生産の場合には開発と生産が同時に進捗するために、多く見られる現象です。
 
 このような問題は初めて設計する製品では避ける事が出来ません。繰り返し生産の場合にはこのような問題は初期の段階で解決され、以降の生産では問題を発生させる事なく円滑に流されて予定の利益を確保できます。初めての製品では生産に着手した段階で、加工や組み立てが図面通りに出来ないことが判り、図面の訂正をしなければならなくなることは、珍しいことではありません。しかし、その都度異なる仕様の製品であっても、製品を構成する全ての要素技術や部品が新規に設計されるのでなく、部分的に類似の個所、同一の個所が存在している場合が少なくありません。この視点に基づいて類似性のある要素技術や部品の抽出をして標準化を図り、その再利用度を高くする事で生産コストの低減を図っていくような取り組み方は、非常に大切な事です。繰り返し性の高い製品は発注企業が内製化を進めるのが普通ですから、一般の中小企業では単品受注品の中から技術の共通点を見つけ出し、その再利用を図って生産性の向上に結び付けていく視点が不可欠です。実際に取られている方法としては次のような内容があります。
 
    1.要素技術の蓄積を図る.
    2.ユニットとしての標準品を増やして、その再利用を図る.
    3.部品の標準化を図り、その再利用度を高める
    4.資料の保管
    5.営業と技術のチ-ムワ-ク
 
 以上の様な標準化へ取り組みの中で自社に適した最も効果を上げやすい方法を決めます。時には、複数の方法の組合せで事業展開を図り、技術面、作業面での再利用頻度を高くして、生産性の向上と品質の安定化した製品を開発するような組織運営を行います。具体的な取り組み方を次に記述します.
 

1.要素技術の蓄積

 受注傾向について技術的側面での分析を行う。縦軸に用途(業界も併記)横軸に製品別とその下段に要素技術を記入する表を作成して、過去の受注実績に基づき該当個所に○印を記入する。これらの製品別の要素技術の内容を一覧した上で、最も利用度が高いと考えられる要素技術は何か、または今後期待される技術は何か、その利用度により順位を決めます。この順位にしたがって、再利用が可能になる様に要素技術のデ-タ-を整理して、再利用し易いようにデ-タ-ベ-スを作り、再利用に備えます。
 

2.ユニットの標準化

 製品を構成するユニットの部分を幾つかに分けて分類し、この再利用が可能になる様に整備し、それに特別仕様の部分を付け加えて設計し、完成品にします。製品の全てを始めから設計する事を避けるため、既有の技術の再利用が図れるように社内の意思統一を図り、営業担当者もその意向を理解して受注活動を行います。仕様の打ち合わせ段階で、当社のユニット品を利用しても顧客は使用上で差し支えがないと、考えられる場合には、これを採用するように先方に働きかけるようにします。
 
 つまり、標準ユニット品を使用することで納期が短くなることや品質の安定性も高まることを強調します。更に、価格が幾らか割安になることを示して採用してもらうように努めます。営業が相手の要求をそのまま聞き入れる様であれば、御用聞きの営業に過ぎず、営業として付加価値の向上に務めていると言えません。顧客が実際に必要としている仕様なのか、否か、それを見極めて交渉します。実際面で自社の標準ユニットを採用して問題ないと考えられる場合には、特別仕様を回避するように交渉する事が両者の利益になります。
 

3.部品の標準化

 前記した受注品の要素技術の分類観察とは別に、製品を構成する部品の中で、再利用度がある程度得られると考えられる部品を登録して、その再利用を設計時点で図っていきます。設計者が勝手自在に設計しないで、標準化された部品を一定割合で使用するように設計方針を掲げている例があります。例えば、標準部品50%以上を設計におり込むこと。と指示されている。標準化された部品の利用度を高めるには、部品登録方法のル-ルを決める必要があります。
 
 CADを利用して登録する場合には、部品の名称と部品の加工法、部品の機能、形状等により分類登録します。 別途、登録する場合には台帳に図番、図名及び代表的な技術項目(材料種別、物性値、安全性、測定法など)の中からキ-ワ-ドを選んで登録するようなル-ルを決める必要があります。これらのル-ルを決めた上で、設計者に自分が設計した部品の登録をさせて、その再利用度の高い部品を多く登録した技術者を表彰するような制度を採っている例もあります。ソフトウエアの場合も同様で、幾つかのステップをまとめたモジュ-ルの登録制を取りそれを再利用します。出典等(設計のムダ退治 伊豫部将三著 日刊工業新聞社刊)(デ-タベ-ス 魚田勝臣、小碇暉雄共著 日科技連...
 前回の事例その23に続いて解説します。多品種少量生産で利益が出る経営形態を実現するに際して、最も効果が上がるのは設計時点の取り組み方です。設計段階の思想が曖昧なままで、それ以降の工程で如何にコストダウンの努力をしても大きな成果を上げることは出来ません。技術開発の得意な企業は、顧客の要求する製品の開発を比較的に簡単に引き受けています。その結果、見積もり段階では利益が得られると考えて受注した製品は、生産の段階になって、図面の通りに加工が出来ないことがあります。組み立て段階で組みつけが出来ないことがあります。検査では要求されている性能が発揮できないことがあります。これらの問題に直面し設計図の訂正を行う必要に迫られる事は、少量受注生産の場合には開発と生産が同時に進捗するために、多く見られる現象です。
 
 このような問題は初めて設計する製品では避ける事が出来ません。繰り返し生産の場合にはこのような問題は初期の段階で解決され、以降の生産では問題を発生させる事なく円滑に流されて予定の利益を確保できます。初めての製品では生産に着手した段階で、加工や組み立てが図面通りに出来ないことが判り、図面の訂正をしなければならなくなることは、珍しいことではありません。しかし、その都度異なる仕様の製品であっても、製品を構成する全ての要素技術や部品が新規に設計されるのでなく、部分的に類似の個所、同一の個所が存在している場合が少なくありません。この視点に基づいて類似性のある要素技術や部品の抽出をして標準化を図り、その再利用度を高くする事で生産コストの低減を図っていくような取り組み方は、非常に大切な事です。繰り返し性の高い製品は発注企業が内製化を進めるのが普通ですから、一般の中小企業では単品受注品の中から技術の共通点を見つけ出し、その再利用を図って生産性の向上に結び付けていく視点が不可欠です。実際に取られている方法としては次のような内容があります。
 
    1.要素技術の蓄積を図る.
    2.ユニットとしての標準品を増やして、その再利用を図る.
    3.部品の標準化を図り、その再利用度を高める
    4.資料の保管
    5.営業と技術のチ-ムワ-ク
 
 以上の様な標準化へ取り組みの中で自社に適した最も効果を上げやすい方法を決めます。時には、複数の方法の組合せで事業展開を図り、技術面、作業面での再利用頻度を高くして、生産性の向上と品質の安定化した製品を開発するような組織運営を行います。具体的な取り組み方を次に記述します.
 

1.要素技術の蓄積

 受注傾向について技術的側面での分析を行う。縦軸に用途(業界も併記)横軸に製品別とその下段に要素技術を記入する表を作成して、過去の受注実績に基づき該当個所に○印を記入する。これらの製品別の要素技術の内容を一覧した上で、最も利用度が高いと考えられる要素技術は何か、または今後期待される技術は何か、その利用度により順位を決めます。この順位にしたがって、再利用が可能になる様に要素技術のデ-タ-を整理して、再利用し易いようにデ-タ-ベ-スを作り、再利用に備えます。
 

2.ユニットの標準化

 製品を構成するユニットの部分を幾つかに分けて分類し、この再利用が可能になる様に整備し、それに特別仕様の部分を付け加えて設計し、完成品にします。製品の全てを始めから設計する事を避けるため、既有の技術の再利用が図れるように社内の意思統一を図り、営業担当者もその意向を理解して受注活動を行います。仕様の打ち合わせ段階で、当社のユニット品を利用しても顧客は使用上で差し支えがないと、考えられる場合には、これを採用するように先方に働きかけるようにします。
 
 つまり、標準ユニット品を使用することで納期が短くなることや品質の安定性も高まることを強調します。更に、価格が幾らか割安になることを示して採用してもらうように努めます。営業が相手の要求をそのまま聞き入れる様であれば、御用聞きの営業に過ぎず、営業として付加価値の向上に務めていると言えません。顧客が実際に必要としている仕様なのか、否か、それを見極めて交渉します。実際面で自社の標準ユニットを採用して問題ないと考えられる場合には、特別仕様を回避するように交渉する事が両者の利益になります。
 

3.部品の標準化

 前記した受注品の要素技術の分類観察とは別に、製品を構成する部品の中で、再利用度がある程度得られると考えられる部品を登録して、その再利用を設計時点で図っていきます。設計者が勝手自在に設計しないで、標準化された部品を一定割合で使用するように設計方針を掲げている例があります。例えば、標準部品50%以上を設計におり込むこと。と指示されている。標準化された部品の利用度を高めるには、部品登録方法のル-ルを決める必要があります。
 
 CADを利用して登録する場合には、部品の名称と部品の加工法、部品の機能、形状等により分類登録します。 別途、登録する場合には台帳に図番、図名及び代表的な技術項目(材料種別、物性値、安全性、測定法など)の中からキ-ワ-ドを選んで登録するようなル-ルを決める必要があります。これらのル-ルを決めた上で、設計者に自分が設計した部品の登録をさせて、その再利用度の高い部品を多く登録した技術者を表彰するような制度を採っている例もあります。ソフトウエアの場合も同様で、幾つかのステップをまとめたモジュ-ルの登録制を取りそれを再利用します。出典等(設計のムダ退治 伊豫部将三著 日刊工業新聞社刊)(デ-タベ-ス 魚田勝臣、小碇暉雄共著 日科技連刊)
 

4.資料類の保管

 仕様書、資料類の保管により似たような資料を幾つも始めから作成し、それらが少しずつ相違しているため、作業が複雑になり、ムダな業務が増えていくので、仕様書、図面、試験報告書、調査報告書、クレ-ム対策書、等の資料類のキ-ワ-ドを決めて登録し設計者は必要な情報を直ぐに取り出せるようにします。電子ファイル、文書ファイル等に登録する。
 

5.営業と技術のチ-ムワ-ク

 受注した製品、構成部品は全てが新規に作られることはなく、その大部分は前回に製作したものと非常に類似している場合が少なくありません。この点に着目して、類似品の中で共通項を見つけ出し、それを標準品(ユニットまたは部品)にして再利用します。一般に技術者は製品の開発には工夫努力するが、「今までに受注した製品の中から共通事項を見つけ出して、標準化を図り、その繰り返し利用を図っていく」そのような視点で技術向上を図る考え方は強い方針を示さない限り出てきません。これには根気と創造的な取り組みが必要で、高度な技術開発に相当します。営業と技術の担当者が自己の目先だけの便利性を優先させないで、経営方針に基づく全社的な視点から上述した取り組みにより標準化にどのような切り口で取り組むべきか、受注傾向を踏まえた意見調整の上で重点順位を決めて根気良く取り組む事が何よりも大切な事です。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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