製品・技術開発力強化策の事例(その35)‐経営方針の設定‐

 前回の事例その34に続いて解説します自企業の特徴を強く意識し、それを中心に技術を向上させながら事業を伸ばして、その周辺に新事業の展開を図るために創造性を発揮する。そのような取り組み方をする事が、限られた人材の有効活用の近道です。経営者を始め従業員の全てが企業の特徴を意識して業務に従事する事で、自企業についての誇りが持てるようになります。それが仕事に対する興味になり意欲的に働く原動力にもなります。
 
 企業の特徴を意識し、特徴を伸ばす方向に力を入れる事は、仕事に対する興味を募らせる事であり、人材育成の根本的な原則です。経営方針と企業の特徴は表裏一体の関係にあり、これらを具体的な行動に落とし込む事が年次経営計画になります。経営者の意思が経営方針に示され、それを具体化するための事業活動が経営計画に落とし込まれている事で、組織的な活動が効果的に行われるようになり、従業員が何を目標にして活動しなければならないのか、目的意識も明確になります。ただ、漠然と流れてくる仕事の処理に忙しい思いをするだけでは、従業員の意欲を導き出す事は難しく能力向上は期待できません。
 
 多くの中小企業の場合、発注元から提示されたテ-マに関し集中的に取り組み、 製品を作り上げていく事は得意です。しかし、 その視点での経営改革ではいき詰まります。自企業でテ-マを見つけ出し、それを事業の柱に据えて事業展開を図るような行動様式が課題です。 その核をなすのが自企業の特徴を自覚する事であり、経営者がこれからやりたい事業を明確にする事が経営方針の設定です。
 
 企業に根付いている経営方針を設定している事例を調べてみると次のように分類できます。
 
1.創業当初から狙いにしている業務分野があり、その分野での地位を企業の成長と共により高い状態に    置き換えている事例。
 
2.企業内で発生している問題点を高い目標設定の下で解決していく過程で技術開発テ-マが浮上して、それが企業の針路に形成されていく事例。
 
3.自企業の事業内容を分析し、その中から特徴を捕らえてそれを伸ばす方向に経営方針を結び付けている事例。
 
4.自企業の針路を如何にすべきか、経営トップは悩み、各種研究グル-プに参加している過程で事業展開の方向性を感じ取り、経営方針に結び付けている事例。
 
5.経営幹部が興味を持っている分野の研究を深めていく過程で、周囲の反響が良い事に自信を得てこの分野を中心にして経営方針にまとめ上げている事例。
 
 それぞれにおかれている環境により、改革の方法は異なっていても、経営システムの高度化を図る事が課題で、システムの高度化を図るために必要不可欠の最低限の条件として、次の事項が上げられます。
 
(1)高い志のある経営方針の下で組織全体がそれを理解して行動している。
(2)経営方針に基づく年次計画が幹部社員の参画で立てられ計画推進の役割分担が明確なっている。
(3)情報の共有化が図られている。
(4)顧客満足の視点で全ての事業が運営されている。
(5)年次経営計画の推進状況の月次報告が定例として実施され、目標未達の処置が取られている。
  
  ◆経営方針に示される志の現れ方の例。
 
       (志の曖昧な例)         (高い志が明確になっている例)
     コストダウンで危機を乗り切る    品質・コスト・納期で同業者No1へ
     高付加価値経営を目指す       ○○の分野でオンリ-ワン企業を目指す
     やれることは何でもこなす      業界の隙を狙って独自性を発揮する
 
 経営方針に曖昧な部分が多く含まれているほど、経営者の志が事業に反映されることはありません。日常の業務処理においても曖昧な部分が多くなり、損失を増加させ、強い競争力を発揮できる企業になりきれません。大切なことは、難しくて困難を感じる程度に目標を高く設定し達成のスピ-ドをより速めることです。 年単位から月単位へと改善のスピ-ドを競う状況を形成することです。実際に自企業に適した経営方針は簡単に決められるものでなく、数年を掛けて方針を模索し、訂正を何回か重ねる経験の中から説得力のある経営方針に練り上げられるものです。
 

この記事の著者

新庄 秀光

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