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伸びる金型メーカーの秘訣 (その9)汎用機械とNC機械(後編)


 
生産マネジメント
 前回に引き続き、K工業の事例を紹介します。同社は、従来の個人事業体制から、チームによる組織体制へと変革を図っており、今年新たに従業員を4名採用しました。その成果を発揮させるべく、筆者と共にさまざまな取り組みを行いました。
 
 同社は主に設備メーカーなどで製造される、生産設備機械の部品のフライスや旋盤加工などを行う機械加工業ですが、同社の取り組みは、チームとして組織をまとめていく点で、金型メーカーも、ぜひ参考にして下さい。
 
 今回、紹介する取り組みのポイントは、①金型メーカーの経営目標は何の指標を使えば良いのか、②会社目標と個人目標をリンクさせる方法、③機械加工メーカーの人事制度の一例、④機械加工の育成方法の一例、などです。
  

1. 組織の見える化と人事制度の構築

 同社はまず、採用した技術者の統制を図るため、a)組織の見える化と、b)人事制度の構築を行いました。その目的は、a)責任と役割分担を明確にする、b)技術者のがんばる基準を明確にすることです。まず組織の見える化については、直近、1年先、3年先、5年先までの組織図を作りました。これについては、人による体制図を作るのではなく、機能別で作ることがポイントです。機能別で組織図を作ると、多くの金型メーカーが、組織の中に兼任者が多いことに気づかされます。この兼任者が多いことに気づくための機能別組織図です。
 
 兼任者が多いことは、マルチプレーヤーの存在というメリット面もありますが、安定した事業の継続という視点においては不安定です。すぐに解決は難しいかもしれませんが、ぜひ1年後から数年後には解消したい課題です。そういった意味で、1年後や3年後の機能別組織図に責任者・担当者の名前を入れた体制図を作るのです。
 
 次に人事制度ですが、本来企業としては、ア)等級制度・イ)給与制度・ウ)評価制度の3つがしっかり整い、機能していることが理想です。今回、同社は、ア)等級制度と、ウ)評価制度の整備に着手しました。
 
 等級制度については、主任・係長・課長・部長・工場長といった各職制に必要な、能力と責任範囲、給与手当などを明確に規定しました。これにより、何となく就業年数が経過したから昇格したとか、○長なのに△△ができない、といったギャップを会社として減らしていくことができます。また、評価制度については、後述する個人目標をベースとし、毎年の期初、技術者ごとに設定する個人目標について、その達成度を期末に評価することにしました。
 
 ここからは具体的な取り組みを見ていきます。まず成果指標の設定ですが、一企業の特定部門ではなく、会社全体で成果を見る場合、筆者は、A)労働分配率と、B)一人あたり付加価値の2つで見ています。労働分配率を使うことで、企業として最も負担の大きな固定費である労務費と、売上から企業に残る価値(付加価値=売上-社外に支払う費用(材料費や外注費))のバランスを管理することができます。
 
 この割合は少ないほど良好で、40~50%であれば良好から普通、50~60%なら普通から悪化の兆候ありといった見方をします。また労働分配率だけでは、仮に付加価値が少なくても、労務費を削ることで数値改善を図ることができますが、企業としては本来、稼いだ付加価値をがんばる技術者へ多く分配することがあるべき姿です。したがって、一人あたり付加価値の指標も使い、絶対額として、どれだけ多くの付加価値を稼いだのか管理するようにしています。
 
 この数値については、事業規模にもよりますが、一般的な技術者の給与から算定すると、月次で70~80万円以上あると望ましいでしょう。同社はこの2つの指標のうち、経営者は労働分配率を、技術者は一人あたり付加価値を、毎月の目標としています。特に一人あたり付加価値については、一定期間ごとに達成数値に応じて、例えば、月次ベースで80万円を超えたら特別賞与、100万円を超えたら遠方への社員旅行などといったインセンティブを与えている点が面白いのです。
 
 次に、設定した会社全体目標に対し、具体的に各技術者が何に取り組んでいくかを取り決めていきました。実はこの点が、同社の社長が最も悩んでいたポイントでした。実は多くの金型メーカーでも起こっている問題です。例えば、売上を上げようとか、利益を増やそうといった会社全体目標は、これだけ掲げているだけではうまくいかないことが多いのです。
 
 それは、会社全体目標だけでは内容が漠然としており、各技術者個人の具体的な「行動」までは明確になっていないためです。言い換えれば、個人が明日からとるべき「行動」まで落とし込んで、初めて会社目標は機能します。そこで同社は技術面を中心に、個人目標の整備に取り組みました。毎期の会社目標を達成するために、各技術者が、どんな技術を・どれだけ・いつまでに習得できなければならないか、洗い出していきました。主に使ったのは、スキルマップです。
 
 スキルマップに記載される項目としては、知識面は「◯◯を理解している」と表現され、技能面は「△△ができる」と表現されるはずです。それは、知識は、OJTやOFF-JT、本、会社で作製・蓄積している資料などを使って記憶をしていくものであり、技能は反復効果を効かせて練習し徐々に習得していくものだからです。こう表現することで、ある項目で知識不足・未習熟があった技術者は、それを是正するために、◯◯を全て覚える、△△を標準時間で作業できるようにする、といった次の対策につなげていくことができます。
 
 例えば、マシニング作業を例にとってみる。知識面においては、主に使うGコードを全て理解している、段取り手順を全て理解している、全ての穴加工種類のプロセスを理解している、全ての切削パターンのプロセスを理解している、測定方法を全て理解している、トラブルシューティングを一人で対応できる、などの項目が考えられます。また、技能面においては、段取り作業を標準時間内で作業できる、工具セットを標準時間内で作業できる、加工プログラミングを標準時間内で作業できる、などが考えられます。
 
 このように知識面は、知っているか・正しく理解しているかが評価のポイントであり、技能面では、標準時間内で作業できるほど習熟しているのか・標準よりも早く作業できるのかといった習熟度の評価がポイントです。
 

2. 今後の展望

 同社は新たにマシニングセンターを導入し、事業の幅を広げる計画をしています。同社は、汎用機械とNC機械の使い分けができているため、マシニングについても、コスト・必要品質に合わせた使い方をしていくことでしょう。企業として組織の分業と統制がとれる体制を整備し、今後まさにチームとして一体的なものづくりを行っていこうとする同社の技術力・経営力の成長に期待をしています。
 
 この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「型技術」掲載』の記事を筆者により改変したものです。
  

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(むらかみ ひでき) / 専門家A / ビジネスアシストshoei

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私は、金型メーカーや部品加工業専門の経営コンサルタント、中小企業診断士で、小規模事業者のコンサルティングを得意としています。規模の大きい企業とは異なり、技術そのものをさらに高める、より高く売る、より多くの仕事を集める、といったダイレクトなコンサルをしています。直接、技術の面から事業・経営を何とかし… 続きを読む



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