品質管理 中国工場管理の基本事例(その13)

更新日

投稿日

中国工場

 

◆品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その3)

 前回は、定着率が悪化したために、従来型作業からの転換ができなかった日系工場の事例を紹介しました。今回は、作業者を定着させるために何が必要かを考えます。

1、定着させる-そのために何が必要か

 中国人は会社への帰属意識が薄いといわれています。これはその通りでしょう。そんな中国人に、少しでも自分の会社、自分の工場と思ってもらいたいものです。それが定着につながり、ひいては品質にも良い影響を与えることになります。今回は、作業者の定着に有効な2つの方法を紹介します。

 

(1) 方法:自分の仕事に誇りを持たせる

  ・内容:自分の作業の重要性を認識させる → やりがいにつながる

 香港・台湾・中国系の工場でこのようなことを見掛けることがあります。どのようなことかというと、作業者が自分は何を作っているのかを知らない、自分のやっている作業が一体何なのか分からないまま作業をしていることです。自分が何をやっているのか分からないのは、人間としてとても悲しいことですし、当然品質にも影響があります。

 この対応としては、作業者に自分の作業の重要性を認識してもらうことが重要です。工場の作業には一つとしていい加減に行っていいものはなく、どれも品質を確保するために必要な作業であるため、自分の作業も重要であることを分かってもらうのです。そうすることで、自分のやっている作業に責任を持ってもらう、それが仕事のやりがいにつながります。

 

(2) 方法:満足度を高める

  • 給与
  • 福利厚生の充実:食事、宿舎の設備、学習の機会

 従業員(作業者)の会社に対する満足度を高めることも必要です。満足度は、給料に加えて福利厚生を充実させることがポイントです。以前の中国では、作業者が求めていたのはお金(給料)でした。しかし、最近は給料が他社と同等以上なのは当たり前で、それに加えて福利厚生も充実させないと、定着はおろか応募も来ないような状況です。

 福利厚生の内容は、宿舎の設備や食事などです。会社で提供する食事は予算の制約があるのですが、可能な範囲でおいしいものを出すようにしたいものです。もう一つ筆者お薦めの福利厚生があります。それは、学習機会を与えることです。作業者の中にも向学心旺盛な人は少なくあり...

中国工場

 

◆品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その3)

 前回は、定着率が悪化したために、従来型作業からの転換ができなかった日系工場の事例を紹介しました。今回は、作業者を定着させるために何が必要かを考えます。

1、定着させる-そのために何が必要か

 中国人は会社への帰属意識が薄いといわれています。これはその通りでしょう。そんな中国人に、少しでも自分の会社、自分の工場と思ってもらいたいものです。それが定着につながり、ひいては品質にも良い影響を与えることになります。今回は、作業者の定着に有効な2つの方法を紹介します。

 

(1) 方法:自分の仕事に誇りを持たせる

  ・内容:自分の作業の重要性を認識させる → やりがいにつながる

 香港・台湾・中国系の工場でこのようなことを見掛けることがあります。どのようなことかというと、作業者が自分は何を作っているのかを知らない、自分のやっている作業が一体何なのか分からないまま作業をしていることです。自分が何をやっているのか分からないのは、人間としてとても悲しいことですし、当然品質にも影響があります。

 この対応としては、作業者に自分の作業の重要性を認識してもらうことが重要です。工場の作業には一つとしていい加減に行っていいものはなく、どれも品質を確保するために必要な作業であるため、自分の作業も重要であることを分かってもらうのです。そうすることで、自分のやっている作業に責任を持ってもらう、それが仕事のやりがいにつながります。

 

(2) 方法:満足度を高める

  • 給与
  • 福利厚生の充実:食事、宿舎の設備、学習の機会

 従業員(作業者)の会社に対する満足度を高めることも必要です。満足度は、給料に加えて福利厚生を充実させることがポイントです。以前の中国では、作業者が求めていたのはお金(給料)でした。しかし、最近は給料が他社と同等以上なのは当たり前で、それに加えて福利厚生も充実させないと、定着はおろか応募も来ないような状況です。

 福利厚生の内容は、宿舎の設備や食事などです。会社で提供する食事は予算の制約があるのですが、可能な範囲でおいしいものを出すようにしたいものです。もう一つ筆者お薦めの福利厚生があります。それは、学習機会を与えることです。作業者の中にも向学心旺盛な人は少なくありません。そうした人たちに勉強する場を提供するのです。日系工場であれば、日本語教室が手軽で受けもよくお薦めです。

 このようにがんばって定着を図るのですが、100%定着させるのは無理です。中国においては、一定の離職率があることを前提に体制や仕組をつくることが必要です。

 

・・・・・・・・・・・・・

 中国工場の品質がよくないのはなぜか、今回まで作業者について事例を交えて解説しました。次回からは、管理者や経営層について考えます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
新しいプロセス導入の進め方

【目次】  新しいプロセスの有効性は分かるものの、なかなか現場に浸透しない、というお話をよく耳にします。これは多くの組織が共通で抱え...

【目次】  新しいプロセスの有効性は分かるものの、なかなか現場に浸透しない、というお話をよく耳にします。これは多くの組織が共通で抱え...


改善を推進するための考え方

 経営工学会の機関紙である「経営システム」の2013年1月号に掲載されていた、富士フィルム木内清吾さんの記事「改善遂行のためのSWC思考」は、業務を革新す...

 経営工学会の機関紙である「経営システム」の2013年1月号に掲載されていた、富士フィルム木内清吾さんの記事「改善遂行のためのSWC思考」は、業務を革新す...


【2分でわかる】フレキシキュリティ(Flexicurity)

  日本において非正規雇用が増え、正規雇用との格差が社会問題化しているためフレキシキュリティが注目されています。従来のフルタイムの正規雇用...

  日本において非正規雇用が増え、正規雇用との格差が社会問題化しているためフレキシキュリティが注目されています。従来のフルタイムの正規雇用...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
「他人に教える事を前提で学ぶ」とは

 何かしら学ぶ時、それはあなた自身の為に行う事がほとんどだと思います。遡れば小学校からの義務教育は親からの強制の有無は別にしても自分の為に行ってきたと思い...

 何かしら学ぶ時、それはあなた自身の為に行う事がほとんどだと思います。遡れば小学校からの義務教育は親からの強制の有無は別にしても自分の為に行ってきたと思い...


人財教育・人材育成、仕事が自分自身で完了させなければ終わらない時と結果が出ない時

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「行動科学」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「分野別のカリキュラム」に関するオ...

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「行動科学」に関するセミナーはこちら! ▼さらに幅広く学ぶなら!「分野別のカリキュラム」に関するオ...


人的資源マネジメント:技術者育成のパフォーマンス(その6)

 前回のその5に続いて解説します。   3. 個人と組織とのエンゲージメント    組織の価値観と個人の価値観の重なりである共...

 前回のその5に続いて解説します。   3. 個人と組織とのエンゲージメント    組織の価値観と個人の価値観の重なりである共...