赴任者のために 中国工場管理の基本事例(その3)

更新日

投稿日

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その1)

◆ 赴任直後にすべきこと

 企業がグローバル化して海外展開を加速させている中で海外拠点、ここでは中国工場ですが、その経営がうまくいくか、いかないかが本社の経営に与える影響は、以前に比べて格段に大きくなっています。ですから、中国工場の成否、そしてそれを委ねた駐在員、特に総経理・工場長がしっかりやってくれるかどうかは、本社としての重要経営課題になっています。

 そのような意味で中国工場の駐在員、特に総経理・工場長として赴任した方は非常に重要な役割を担っています。「大過なく自分の任期が終えられればよい」。この記事を読んでらっしゃる皆様の中に、このような考えの方はいないと思いますが、これではいけません。責任者としてミッションをしっかり果すことが期待されているのです。

 中国工場運営においては、現地社員(中国人)をマネジメントすることが最も重要なことです。この連載では、赴任者が知っておくべき、また、注意すべき現地社員のマネジメントについて書くことにします。

 第1回目の今回は「赴任直後に力を入れるべきこと」についてです。

 何事も最初が肝心です。中国赴任も同じで初めにきちんとした対応をすることがあなたの赴任を成功に導きます。

(1) 前任者からの引き継ぎ

 前任者からの引き継ぎはちゃんとやるようにしてください。前任者から現地の事情や情報をしっかり聞きます。社内のことはもちろんですが、社外のことも聞いておくことが大事です。社内であれば、例えばキーマンは誰だとか、注意が必要な人は誰とか。他にも生産上の問題や人事・労務の問題などを確認します。

 社外であれば、顧客、取引先はもちろんですが、地元政府などの関係者にも挨拶を忘れてはいけません。中国で企業活動をする上で必要なことです。他にも日系企業や日本人会などの集まりにも交代の挨拶をします。

 ただし、こうした前任者からの話はあくまで情報として受け止め、すべてを鵜呑みにはしないこと。それは前任者の好き嫌いや想いが多分に含まれていることがあり、客観的な事実とは少し異なるからです。入手した情報はあくまでも参考にとどめ、自分で確かめ判断することが大事です。

(2) 工場の現状把握

 次にやって欲しいのが工場の現状把握です。現状が分からないうちにあれこれ手や口を出すと、失敗する可能性が高いといえます。特に総経理や工場長として赴任する人は、工場の財務状況は必ず把握しなければなりません。

 これなどは赴任する前にチェックできる...

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その1)

◆ 赴任直後にすべきこと

 企業がグローバル化して海外展開を加速させている中で海外拠点、ここでは中国工場ですが、その経営がうまくいくか、いかないかが本社の経営に与える影響は、以前に比べて格段に大きくなっています。ですから、中国工場の成否、そしてそれを委ねた駐在員、特に総経理・工場長がしっかりやってくれるかどうかは、本社としての重要経営課題になっています。

 そのような意味で中国工場の駐在員、特に総経理・工場長として赴任した方は非常に重要な役割を担っています。「大過なく自分の任期が終えられればよい」。この記事を読んでらっしゃる皆様の中に、このような考えの方はいないと思いますが、これではいけません。責任者としてミッションをしっかり果すことが期待されているのです。

 中国工場運営においては、現地社員(中国人)をマネジメントすることが最も重要なことです。この連載では、赴任者が知っておくべき、また、注意すべき現地社員のマネジメントについて書くことにします。

 第1回目の今回は「赴任直後に力を入れるべきこと」についてです。

 何事も最初が肝心です。中国赴任も同じで初めにきちんとした対応をすることがあなたの赴任を成功に導きます。

(1) 前任者からの引き継ぎ

 前任者からの引き継ぎはちゃんとやるようにしてください。前任者から現地の事情や情報をしっかり聞きます。社内のことはもちろんですが、社外のことも聞いておくことが大事です。社内であれば、例えばキーマンは誰だとか、注意が必要な人は誰とか。他にも生産上の問題や人事・労務の問題などを確認します。

 社外であれば、顧客、取引先はもちろんですが、地元政府などの関係者にも挨拶を忘れてはいけません。中国で企業活動をする上で必要なことです。他にも日系企業や日本人会などの集まりにも交代の挨拶をします。

 ただし、こうした前任者からの話はあくまで情報として受け止め、すべてを鵜呑みにはしないこと。それは前任者の好き嫌いや想いが多分に含まれていることがあり、客観的な事実とは少し異なるからです。入手した情報はあくまでも参考にとどめ、自分で確かめ判断することが大事です。

(2) 工場の現状把握

 次にやって欲しいのが工場の現状把握です。現状が分からないうちにあれこれ手や口を出すと、失敗する可能性が高いといえます。特に総経理や工場長として赴任する人は、工場の財務状況は必ず把握しなければなりません。

 これなどは赴任する前にチェックできるのであればやっておきたいものです。財務状況に問題があるのかないのか、どこに問題があるのかなどを最初の時点で掴んでおく必要があります。

 現地での仕事の流れも最初に理解します。同じ製品の生産に関しても日本とは違う流れになっていることも少なくありません。それは、現地の事情に合わせてアレンジすることも多いからです。アレンジした理由を確認もしないで「どうしてこんな方法にしているんだ」などと怒る人もたまにいますが、これなどは信頼を失うことに繋がってしまいます。他にも中国人スタッフの人間関係や力関係なども把握しておきたいところです。

 次回に続きます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改...


「生産マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
ものづくり工場の日常管理のしくみ(その3)

◆三現主義を定着化する(製造業の工場品質改善の進め方・事例の解説) ◆関連解説『生産マネジメントとは』    前回のその2に続いて解説しま...

◆三現主義を定着化する(製造業の工場品質改善の進め方・事例の解説) ◆関連解説『生産マネジメントとは』    前回のその2に続いて解説しま...


改善とは革新とは何か、作業環境:5S、ムダ【連載記事紹介】 

  改善とは革新とは何か、作業環境:5S、ムダが無料でお読みいただけます!   ◆改善とは革新とは何か、作業環境:5S、ムダ...

  改善とは革新とは何か、作業環境:5S、ムダが無料でお読みいただけます!   ◆改善とは革新とは何か、作業環境:5S、ムダ...


中小製造業の利益の出るトヨタ式生産管理のポイント(その3)

 前回のその2に続いて解説します。 ◆関連解説『トヨタ生産方式とは』    受注生産を行っている、ものづくり中小企業において生命線とも...

 前回のその2に続いて解説します。 ◆関連解説『トヨタ生産方式とは』    受注生産を行っている、ものづくり中小企業において生命線とも...


「生産マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
油圧部品などの中ロット生産 伸びる金型メーカーの秘訣 (その21)

 今回、紹介する部品加工メーカーは、M精密工業です。同社は、NC旋盤を主とした機械加工を行っており、特に小型サイズの精密部品の加工を得意としています。筆者...

 今回、紹介する部品加工メーカーは、M精密工業です。同社は、NC旋盤を主とした機械加工を行っており、特に小型サイズの精密部品の加工を得意としています。筆者...


ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その14)

    前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その13)に続けて解説します。   ◆【特集】 連...

    前回のゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その13)に続けて解説します。   ◆【特集】 連...


ゼロ・ベース経営のすすめ、7ゼロ生産実現マニュアル(その6)

  『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~ 第1章7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)...

  『7ゼロ生産』実現マニュアル~生産性7つの阻害要因とゼロベース思想~ 第1章7ゼロ生産意識改革PICQMDS(ピックエムディーエス)...