クレーム顧客の信頼をつかむ訪問面談のコツ クレーム対応とは(その22)

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  クレーム対応
 
 前回のクレーム対応とは(その21)に続いて解説します。
 

5. 交渉と説得

 顧客訪問が企業の誠意を示す行動であることは重要なポイントですが、訪問目的を単なるパフォーマンスで終わらせては意味がありません。最も基本的な訪問目的としての、「交渉と説得」の相違をよく心得ておきましょう。交渉と説得というのは、似ているような響きの言葉ですが、その中身は大きく異なっているので注意が必要です。
 
 『交渉』というのは、相手との関係を認識しながら少しでも有利な状態にもっていく努力を重ねて、双方の主張の落とし所を探り合う行為を指します。双方の主張はときに対立し、ときに妥協し、お互いが納得できる内容を見つけながら、妥結点を浮かび上がらせていくことになります。
 
 一方、『説得』は、まったく異なった内容になります。相手を説得する必要があるときは、100%こちらの主張を相手に了解させる努力を傾注しなければならないのです。
 
 そこに存在するのは、妥協点の探り合いではなく、完全なる主張です。いかに手ごわい相手であっても、説得しなければならないスタッフは、可能なかぎりの努力を重ねて、100%の了解を勝ち取らなくてはならないのです。妥協が許される交渉と妥協が許されない完全勝利を目指す説得は、このようにまったく相容れないことになります。
 
 したがって、顧客を訪問するスタッフは、自分たちに与えられた使命が交渉なのか、説得なのかをしっかり自覚して、それぞれの準備を整えておかなければなりません。本来、交渉で臨むべき訪問で一方的に主張を繰り返したり、顧客を説得しなければならないときに妙な妥協をしてしまうと、後の展開で大きな足かせとなる場合が少なくないでしょう。
 
 交渉や説得に不慣れなスタッフは、顧客とのやり取りが白熱してくると、自分のミッションがわからなくなって混乱し、ついつい感情的な主張をして相手に言質を取られてしまうこともあります。説得に応じない顧客に立腹して不用意な発言を重ねれば、せっかくの話し合いをパーにしてしまいかねません。
 
 話し合いはつねに不確定で、アクシデントが起こりやすいものです。その修羅場で冷静に対応するためにも、交渉と説得の違いを熟知し、周到な準備をして話し合いに臨むことが大切です。
 

6. 同種のクレーム履歴調査

 今回発生したクレームと同種のものが過去になかったかどうかを調べ、発生していた場合は、そのときの対応経過と結果を確認することも、極めて大切です。今回対応するクレームが、まったく初めて起こったものなのか、過去に同様のクレームが存在し、対応がなされた事実があったのか。そうしたクレームの履歴も、訪問面談をする前にぜひ調べておくことです。もし、過去に対応の事実があれば、大変有効な参考資料になるだろうし、類似のクレームを理解するだけでも、有効な対応策が浮かんでくる可能性は高いでしょう。
 
 またときによって、まったく異なった商品に同じようなトラブルが発生することもあります。クレームの履歴調べでは、ただ単純に同じ商品だけで検索するのではなく、ほかの商品にまで範囲を広げて、類似クレームの有無を確認することが肝要です。なぜならば、たとえ商品は異なっていても、過去のクレームの対応(チェックリストなど)は応用が利く場合も決して少なくないからです。
 
 たとえ些細なクレームと感じられる内容であっても、記録して取り組みの顛末を蓄積し、メーカーであれば工場、設計開発、営業、物流等の各部門でいつでもそのデータを活用できるようにしておくことが必要です。またサービス業であれば、拠点名や店舗名、店長、担当者なども記録に残しておきましょう。
 
 クレーム顧客を訪問する際は、大切な準備作業として、クレームの履歴調査と類似クレームの検索をぜひとも実行して、最強のデータ武装を行うことです。
 

7. 早期訪問に勝る作戦なし

 最後は、やはりこの鉄則に戻りま...
 
  クレーム対応
 
 前回のクレーム対応とは(その21)に続いて解説します。
 

5. 交渉と説得

 顧客訪問が企業の誠意を示す行動であることは重要なポイントですが、訪問目的を単なるパフォーマンスで終わらせては意味がありません。最も基本的な訪問目的としての、「交渉と説得」の相違をよく心得ておきましょう。交渉と説得というのは、似ているような響きの言葉ですが、その中身は大きく異なっているので注意が必要です。
 
 『交渉』というのは、相手との関係を認識しながら少しでも有利な状態にもっていく努力を重ねて、双方の主張の落とし所を探り合う行為を指します。双方の主張はときに対立し、ときに妥協し、お互いが納得できる内容を見つけながら、妥結点を浮かび上がらせていくことになります。
 
 一方、『説得』は、まったく異なった内容になります。相手を説得する必要があるときは、100%こちらの主張を相手に了解させる努力を傾注しなければならないのです。
 
 そこに存在するのは、妥協点の探り合いではなく、完全なる主張です。いかに手ごわい相手であっても、説得しなければならないスタッフは、可能なかぎりの努力を重ねて、100%の了解を勝ち取らなくてはならないのです。妥協が許される交渉と妥協が許されない完全勝利を目指す説得は、このようにまったく相容れないことになります。
 
 したがって、顧客を訪問するスタッフは、自分たちに与えられた使命が交渉なのか、説得なのかをしっかり自覚して、それぞれの準備を整えておかなければなりません。本来、交渉で臨むべき訪問で一方的に主張を繰り返したり、顧客を説得しなければならないときに妙な妥協をしてしまうと、後の展開で大きな足かせとなる場合が少なくないでしょう。
 
 交渉や説得に不慣れなスタッフは、顧客とのやり取りが白熱してくると、自分のミッションがわからなくなって混乱し、ついつい感情的な主張をして相手に言質を取られてしまうこともあります。説得に応じない顧客に立腹して不用意な発言を重ねれば、せっかくの話し合いをパーにしてしまいかねません。
 
 話し合いはつねに不確定で、アクシデントが起こりやすいものです。その修羅場で冷静に対応するためにも、交渉と説得の違いを熟知し、周到な準備をして話し合いに臨むことが大切です。
 

6. 同種のクレーム履歴調査

 今回発生したクレームと同種のものが過去になかったかどうかを調べ、発生していた場合は、そのときの対応経過と結果を確認することも、極めて大切です。今回対応するクレームが、まったく初めて起こったものなのか、過去に同様のクレームが存在し、対応がなされた事実があったのか。そうしたクレームの履歴も、訪問面談をする前にぜひ調べておくことです。もし、過去に対応の事実があれば、大変有効な参考資料になるだろうし、類似のクレームを理解するだけでも、有効な対応策が浮かんでくる可能性は高いでしょう。
 
 またときによって、まったく異なった商品に同じようなトラブルが発生することもあります。クレームの履歴調べでは、ただ単純に同じ商品だけで検索するのではなく、ほかの商品にまで範囲を広げて、類似クレームの有無を確認することが肝要です。なぜならば、たとえ商品は異なっていても、過去のクレームの対応(チェックリストなど)は応用が利く場合も決して少なくないからです。
 
 たとえ些細なクレームと感じられる内容であっても、記録して取り組みの顛末を蓄積し、メーカーであれば工場、設計開発、営業、物流等の各部門でいつでもそのデータを活用できるようにしておくことが必要です。またサービス業であれば、拠点名や店舗名、店長、担当者なども記録に残しておきましょう。
 
 クレーム顧客を訪問する際は、大切な準備作業として、クレームの履歴調査と類似クレームの検索をぜひとも実行して、最強のデータ武装を行うことです。
 

7. 早期訪問に勝る作戦なし

 最後は、やはりこの鉄則に戻りましょう。よく企業のスタッフが訪問時期について知恵を絞っている姿を見かけますが、私は特別な事情を抱えているのでなければ、「一刻も早い訪問がベスト」であると確信しています。スタッフが顧客を訪問するメリットは、これまでに検証してきたように数多く存在するのです。
 
 したがって、その数多くの訪問メリットを確実に引き寄せるためにも、できるだけ早期の訪問が望ましいのです。時間が経てば経つほどクレーム顧客の怒りは増幅し、解決に手間取るようになります。クレーム内容を第三者に相談したり多くの人に話したり、インターネットで告知したり、最後は法的手段に訴えるケースも出てくるのです。クレーム顧客への早期訪問が、深刻なトラブルを早期に解決する「魔法」であることを肝に銘じていただきたいと思います。
 
 次回に続きます。
 
 【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント  ダイヤモンド社発行
           筆者のご承諾により、抜粋を連載

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この記事の著者

武田 哲男

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。

常に顧客を中核とする課題取組みにより「業績=顧客の“継続”支持率達成!」 「顧客との良質で永いご縁の創造」に取組んできた。モノづくりとサービスの融合に注力。


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