『価値づくり』の研究開発マネジメント (その7)

更新日

投稿日

 前回は、「技術を目いっぱい拡大」に関する活動の中でコア技術について、解説しました。今回は、企業にとってオープンイノベーションを進めるに当たり、コア技術が大変重要である点について解説したいと思います。
 

1.オープンイノベーションを成立させる2つの前提

 オープンイノベーションの重要な側面として、自社が求める能力や技術を持つ相手の民間企業や大学/公的機関が自社との協業に同意することが必要であるということがあります。その点から、オープンイノベーションには以下のいずれかが前提となります。
 

(1)前提その1:相手方が求める強みを自社が保有すること

 そもそも強みの無い企業は、オープンイノベーションを実現することは困難です。相手が自社に対して「この企業と協業をしたい」、と思わせるものがなければ、オープンイノベーションは成り立ちません。この相手に対して「この企業と協業をしたい」と思わせるものが、自社の強みです。
 
 相手が民間企業の場合、先方には何かの収益を上げるためのシナリオや目論見があって、それを実現するための強い能力をこの会社は持っていると思えばこそ、先方は自社とのオープンイノベーションを進めたいと考えます。
 
 また、大学や公的研究所の場合、自社が持つべき強みの水準は民間企業の場合程高くはないかもしれませんが(地域の企業の支援等)、やはり提供する技術やその他の支援が実を結ぶ可能性が高い企業を相手先として選択するものです。
 

(2)前提その2:金でオープンイノベーションを実現する

 実は、それ以外にもオープンイノベーションのパートナーを獲得する重要な手段があります。それは金です。なぜなら、先方が企業の場合、最終的な目的は収益拡大ですから、最終的な目的の実現のための金を差し出せば、具体的には技術をライセンシングする、更には先方企業を買収する等によりオープンイノベーションを実現することができます。
 
 大学や公的研究機関の目的は収益ではありませんが、オープンイノベーションの実現に向けて、金は大きな効果があることは、民間企業と同様です。
 

2.強みのない企業においては高い利益率を実現することはできない

 しかし、この2つの前提条件から、自社に強みがないと、収益の確保が困難であることが分かると思います。自社が相手方が価値があると認識する強みを持てば、オープンイノベーション実現の対価を払う必要はないかもしれませんし、対価を払うにしても、低コストで済ませることができます。したがって、オープンイノベーションを進めるに当たっての王道は、自社が相手がその価値の認識するなんらかの強みを持つことです。
 

3.自社の強みとは

 それでは、相手先が価値ある強みと認識する自社の強みには、どのようなものがあるのでしょうか?
 

(1)顧客価値を実現し、それを市場に届けるまでのバリューチェーン全体(エコシステム)

 まずは、最終的に顧客価値を実現し、それを市場の顧客一人一人、一社一社に提供するためのバリューチェーン全体(エコシステム)、もしくはそれをコントロールする体制や能力を持っていることは、大きな強みとなります。
 

(2)そのバリューチェーンの一部

 バリューチェーン全体では...
 前回は、「技術を目いっぱい拡大」に関する活動の中でコア技術について、解説しました。今回は、企業にとってオープンイノベーションを進めるに当たり、コア技術が大変重要である点について解説したいと思います。
 

1.オープンイノベーションを成立させる2つの前提

 オープンイノベーションの重要な側面として、自社が求める能力や技術を持つ相手の民間企業や大学/公的機関が自社との協業に同意することが必要であるということがあります。その点から、オープンイノベーションには以下のいずれかが前提となります。
 

(1)前提その1:相手方が求める強みを自社が保有すること

 そもそも強みの無い企業は、オープンイノベーションを実現することは困難です。相手が自社に対して「この企業と協業をしたい」、と思わせるものがなければ、オープンイノベーションは成り立ちません。この相手に対して「この企業と協業をしたい」と思わせるものが、自社の強みです。
 
 相手が民間企業の場合、先方には何かの収益を上げるためのシナリオや目論見があって、それを実現するための強い能力をこの会社は持っていると思えばこそ、先方は自社とのオープンイノベーションを進めたいと考えます。
 
 また、大学や公的研究所の場合、自社が持つべき強みの水準は民間企業の場合程高くはないかもしれませんが(地域の企業の支援等)、やはり提供する技術やその他の支援が実を結ぶ可能性が高い企業を相手先として選択するものです。
 

(2)前提その2:金でオープンイノベーションを実現する

 実は、それ以外にもオープンイノベーションのパートナーを獲得する重要な手段があります。それは金です。なぜなら、先方が企業の場合、最終的な目的は収益拡大ですから、最終的な目的の実現のための金を差し出せば、具体的には技術をライセンシングする、更には先方企業を買収する等によりオープンイノベーションを実現することができます。
 
 大学や公的研究機関の目的は収益ではありませんが、オープンイノベーションの実現に向けて、金は大きな効果があることは、民間企業と同様です。
 

2.強みのない企業においては高い利益率を実現することはできない

 しかし、この2つの前提条件から、自社に強みがないと、収益の確保が困難であることが分かると思います。自社が相手方が価値があると認識する強みを持てば、オープンイノベーション実現の対価を払う必要はないかもしれませんし、対価を払うにしても、低コストで済ませることができます。したがって、オープンイノベーションを進めるに当たっての王道は、自社が相手がその価値の認識するなんらかの強みを持つことです。
 

3.自社の強みとは

 それでは、相手先が価値ある強みと認識する自社の強みには、どのようなものがあるのでしょうか?
 

(1)顧客価値を実現し、それを市場に届けるまでのバリューチェーン全体(エコシステム)

 まずは、最終的に顧客価値を実現し、それを市場の顧客一人一人、一社一社に提供するためのバリューチェーン全体(エコシステム)、もしくはそれをコントロールする体制や能力を持っていることは、大きな強みとなります。
 

(2)そのバリューチェーンの一部

 バリューチェーン全体ではなくても、その一部の要素(機能)を保有することも自社の強みとなります。
 

(3)バリューチェーンを支える無形資産(ブランド、技術など)

 バリューチェーンを直接構成する機能ではなく、それをより基盤の部分で支えるような無形資産、例えばブランドや技術も自社の強みとして認識されるものになります。
 

4.自社の強みとしてのコア技術

 以上のように複数の強みの視点はあるものの、製造業であれば、やはり技術が極めて重要な自社が拠って立つべき強みとことができます。したがって、コア技術をオープンイノベーション成立の前提とすることは、大変理に適っていることと言えます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
原因、複数の結果 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その73)

 前々回から時系列や物理量で整理した知識を、更にそれらの関係性を考え整理・拡大することについて解説をしています。今回は「原因と結果」の2つ目の類型の「...

 前々回から時系列や物理量で整理した知識を、更にそれらの関係性を考え整理・拡大することについて解説をしています。今回は「原因と結果」の2つ目の類型の「...


研究開発テーマ、上司を説得する必要はあるのか~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その33)

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら! 「このテーマで良いんでしょうか?」と仰るのは技術者...

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「技術マネジメント」に関するセミナーはこちら! 「このテーマで良いんでしょうか?」と仰るのは技術者...


技術文書の品質管理(その1)文書の内容が明確に伝わるかどうかを確認

     【目次】 1. 技術文書の品質管理とは 製造業での品質管理とは「製品の品質に問題がないよう...

     【目次】 1. 技術文書の品質管理とは 製造業での品質管理とは「製品の品質に問題がないよう...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
オープンイノベーションにおけるライトハウスカスタマーの事例2件

 情報・知識を多様化するコンセプトとして、オープンイノベーションが注目されています。今回は、そのための情報発信先としてのライトハウスカスタマーについて、B...

 情報・知識を多様化するコンセプトとして、オープンイノベーションが注目されています。今回は、そのための情報発信先としてのライトハウスカスタマーについて、B...


進捗の可視化は必要最小限にするのがポイント(その1)

  1. メトリクスによる進捗管理サイクル    進捗管理とは、作成した計画にもとづいて現在の状況を把握することと、計画と実績に...

  1. メトリクスによる進捗管理サイクル    進捗管理とは、作成した計画にもとづいて現在の状況を把握することと、計画と実績に...


プリウスの開発事例から学ぶ画期的挑戦

トヨタ・プリウスが1997年に世界初の量産ハイブリッド車として市場に出た時は大きな衝撃を社会にもたらしました。2009年に20万8876台を売り上げ、...

トヨタ・プリウスが1997年に世界初の量産ハイブリッド車として市場に出た時は大きな衝撃を社会にもたらしました。2009年に20万8876台を売り上げ、...