『坂の上の雲』に学ぶ先人の知恵(その4)

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 『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場で勝利をおさめる為のヒントが豊富に隠されています。『坂の上の雲』に学ぶマネジメント、今回は、先人の知恵、定石と応用 (その4)です。
 

5. 厳しい目標達成には全体でゆとりを持つ

 
 全体でゆとりを持つことは、日本の仕事の達人はほとんど実行していました。でも、最近ではそういうやり方は見かけなくなったようです。売上の目標達成や納期遵守など、単に厳しいだけで仕事を進めるとうまくいかないでしょう。
 

(1) 無用の用

 
 ゆとり、バファー、予備などというのは、一見無駄なように見えますが、かえって大切な役割を果していることがあり、それを無用の用と呼びます。ある中国人の2人が話をしていて、一方が、あなたの論議は全然役に立たないと言う。するともう1人は、役に立たないことがわかってこそ役立つことがわかるのだとたとえ話をする。地面を歩くときは、両方の足が着地するところだけあればよく、その他の地面は歩くことには不要だよね、じゃあ不要だからといって足が着くところだけあればそれ以外は土地がない、ずっと下は断崖絶壁になっているとしたら歩けるかな?怖くて歩けないね。だから歩くという意味では役立ってない土地も、ないと困るよね。それを「無用の用」という話がでています。無用の用とは何もないことの効用。一見なんの役にも立たないようなことに効用があるのです。
 
注:「故事成語」合田 究 講談社現代新書 1991年11月
 

(2) あそび

 
 しかし、ゆとりを持ったり予備を持ったりすると、これを削れというマネジャーがいるでしょう。遊びというのはクルマのハンドルにもついています(レースカーはプロフェッショナルが運転するから、遊びはうんと少ない)。素人は遊びがないと怖くて運転できないのです。その遊びのことです。ハンドルをちょっと動かしてもタイヤは動かない。人と機械との間にはだいたいこういう仕掛けがついています。それで安心して機械を使うことができるのです。ゆとり、遊びを確保すると、無用の用を理解することになります。70年代頃は日本も成長期で、どこの会社でも新入社員が多かったです。職場の所帯も大きく、この人何しているのかなと思う人が1つの課に必ずいたようです。そういう人は、職場の雰囲気づくりなどで役立っていたかなという気がする。それが30年、40年たったいまは非常に少なくなりました。人を教育するのも大変になり、無用の用は忘れ去られたようです。
 

(3) 親方の余裕(ゆとり)

 
 土木工事の世界では、現場の親方はこのゆとりを持っているのです。土木工事では雨が降れば工事ができないので、全体の納期に対して1週間分などのゆとりを持っています。その場合、親方はみんなにどれくらいゆとりを持っているかをオープンにしないのです。親方が隠し持っていて親方だけがゆとりの管理をしているのです。筆者のプロジェクトマネジメントでは、ゆとりは隠し持たないでオープンにしましょうと言っ...
 
 PERT 
 『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場で勝利をおさめる為のヒントが豊富に隠されています。『坂の上の雲』に学ぶマネジメント、今回は、先人の知恵、定石と応用 (その4)です。
 

5. 厳しい目標達成には全体でゆとりを持つ

 
 全体でゆとりを持つことは、日本の仕事の達人はほとんど実行していました。でも、最近ではそういうやり方は見かけなくなったようです。売上の目標達成や納期遵守など、単に厳しいだけで仕事を進めるとうまくいかないでしょう。
 

(1) 無用の用

 
 ゆとり、バファー、予備などというのは、一見無駄なように見えますが、かえって大切な役割を果していることがあり、それを無用の用と呼びます。ある中国人の2人が話をしていて、一方が、あなたの論議は全然役に立たないと言う。するともう1人は、役に立たないことがわかってこそ役立つことがわかるのだとたとえ話をする。地面を歩くときは、両方の足が着地するところだけあればよく、その他の地面は歩くことには不要だよね、じゃあ不要だからといって足が着くところだけあればそれ以外は土地がない、ずっと下は断崖絶壁になっているとしたら歩けるかな?怖くて歩けないね。だから歩くという意味では役立ってない土地も、ないと困るよね。それを「無用の用」という話がでています。無用の用とは何もないことの効用。一見なんの役にも立たないようなことに効用があるのです。
 
注:「故事成語」合田 究 講談社現代新書 1991年11月
 

(2) あそび

 
 しかし、ゆとりを持ったり予備を持ったりすると、これを削れというマネジャーがいるでしょう。遊びというのはクルマのハンドルにもついています(レースカーはプロフェッショナルが運転するから、遊びはうんと少ない)。素人は遊びがないと怖くて運転できないのです。その遊びのことです。ハンドルをちょっと動かしてもタイヤは動かない。人と機械との間にはだいたいこういう仕掛けがついています。それで安心して機械を使うことができるのです。ゆとり、遊びを確保すると、無用の用を理解することになります。70年代頃は日本も成長期で、どこの会社でも新入社員が多かったです。職場の所帯も大きく、この人何しているのかなと思う人が1つの課に必ずいたようです。そういう人は、職場の雰囲気づくりなどで役立っていたかなという気がする。それが30年、40年たったいまは非常に少なくなりました。人を教育するのも大変になり、無用の用は忘れ去られたようです。
 

(3) 親方の余裕(ゆとり)

 
 土木工事の世界では、現場の親方はこのゆとりを持っているのです。土木工事では雨が降れば工事ができないので、全体の納期に対して1週間分などのゆとりを持っています。その場合、親方はみんなにどれくらいゆとりを持っているかをオープンにしないのです。親方が隠し持っていて親方だけがゆとりの管理をしているのです。筆者のプロジェクトマネジメントでは、ゆとりは隠し持たないでオープンにしましょうと言っています。隠していると、まだあるはずだと浪費傾向になりますが、オープンにするとかえって節約傾向になり納期を守れるのです。日本人の集団は真面目だから、みんなの連帯責任になるから遅れるよりも早めたいと思う気持ちが働きます。たとえゆとりの日数を全部使ったとしても、予定内で納品が完了できることになるでしょう。
 
 【出典】
 津曲公二 著「坂の上の雲」に学ぶ、勝てるマネジメント 総合法令出版株式会社発行
 筆者のご承諾により、抜粋を連載。
  
  

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津曲 公二

技術者やスタッフが活き活きと輝きながら活動できる環境作りに貢献します。

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