BCPの基本方針 物流BCPについて考える(その8)

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【物流BCPについて考える 連載目次】

1. 経営者が関与するBCP

 
 物流BCPを策定していくにあたり、最初から完璧なものを目指す必要はありません。それぞれの企業ができるところから着手し、継続的な取り組みによって徐々に災害に強い体制を築いていくことが望ましいと言えるでしょう。
 
 BCPも物流品質管理や安全管理などといったマネジメントシステムと同様に、次の取り組みが重要になります。
 
  • 経営者が取り組む
  • 実施する内容は企業自身で決定する
  • 継続的改善を行う
 
 ここで言うところの「継続的改善」とは次のステップを指します。
 
  • 経営者が方針を立て
  • 計画を立案し
  • 日常業務として実施・運用し
  • 従業員の教育・訓練を行い
  • 結果を点検・是正し
  • 経営者が見直す
 
 このステップを繰り返していくことが重要だと言えます。
 
 私たちは常日頃から改善に取り組んでいます。そこで上記のようなマネジメント・サイクルを回すことには慣れていると言えるのではないでしょうか。
 
 このサイクルの優れている所は「経営者が関与する」ところにあります。逆から見れば経営者が関与していないBCPでは継続的な改善は成立しないということです。
 
 経営者が自ら先頭に立って社員を引っ張り、人を育て、有事に備えての訓練を行っていくことが必要になってくるのです。
 

2. BCP: 事業継続の基本方針

 
 物流BCPを進めるにあたり、経営者は災害時の事業継続について計画づくりに取り組むことを決定し、その基本方針を策定する必要があります。
 
 経営者は社内外の関係者に対して事業継続に関する活動について説明し、了解を取り付けることが必要です。この場合、経営トップ自らが関与することが必要であり、そうでないと計画の実効性が問われ、事業継続への対応を当然と考える内外の企業からの信頼は得られません。
 
 基本方針は取締役会あるいは経営会議の決議を経るべきでしょう。さらに、承認された方針は公表することが望ましいでしょう。経営者は、基本方針に沿った活動を行うために、必要な予算や要員などの経営資源を確保することが求められます。
 
 このように物流BCPは経営者の強力なリーダーシップのもと、また経営者が自ら参加し、必要な資源を確保して進めていくことになります。BCPの策定を部下にまかせっきりにすることなどは許されません。なぜなら、事業継続は経営そのものであり、そのかじ取りは経営者の責務であるからです。
 
 BCPを策定する過程で検討対象とする災害を特定する必要があります。ここでは前々回にもお話させていただいた通り、まず一つのリスクを選んで取り組むべきで、我が国においては「地震」が最優先課題であると考えるべきでしょう。
 
 地震を想定した場合、それによって事業が停止となった場合にその停止期間がどの程...
 
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【物流BCPについて考える 連載目次】

1. 経営者が関与するBCP

 
 物流BCPを策定していくにあたり、最初から完璧なものを目指す必要はありません。それぞれの企業ができるところから着手し、継続的な取り組みによって徐々に災害に強い体制を築いていくことが望ましいと言えるでしょう。
 
 BCPも物流品質管理や安全管理などといったマネジメントシステムと同様に、次の取り組みが重要になります。
 
  • 経営者が取り組む
  • 実施する内容は企業自身で決定する
  • 継続的改善を行う
 
 ここで言うところの「継続的改善」とは次のステップを指します。
 
  • 経営者が方針を立て
  • 計画を立案し
  • 日常業務として実施・運用し
  • 従業員の教育・訓練を行い
  • 結果を点検・是正し
  • 経営者が見直す
 
 このステップを繰り返していくことが重要だと言えます。
 
 私たちは常日頃から改善に取り組んでいます。そこで上記のようなマネジメント・サイクルを回すことには慣れていると言えるのではないでしょうか。
 
 このサイクルの優れている所は「経営者が関与する」ところにあります。逆から見れば経営者が関与していないBCPでは継続的な改善は成立しないということです。
 
 経営者が自ら先頭に立って社員を引っ張り、人を育て、有事に備えての訓練を行っていくことが必要になってくるのです。
 

2. BCP: 事業継続の基本方針

 
 物流BCPを進めるにあたり、経営者は災害時の事業継続について計画づくりに取り組むことを決定し、その基本方針を策定する必要があります。
 
 経営者は社内外の関係者に対して事業継続に関する活動について説明し、了解を取り付けることが必要です。この場合、経営トップ自らが関与することが必要であり、そうでないと計画の実効性が問われ、事業継続への対応を当然と考える内外の企業からの信頼は得られません。
 
 基本方針は取締役会あるいは経営会議の決議を経るべきでしょう。さらに、承認された方針は公表することが望ましいでしょう。経営者は、基本方針に沿った活動を行うために、必要な予算や要員などの経営資源を確保することが求められます。
 
 このように物流BCPは経営者の強力なリーダーシップのもと、また経営者が自ら参加し、必要な資源を確保して進めていくことになります。BCPの策定を部下にまかせっきりにすることなどは許されません。なぜなら、事業継続は経営そのものであり、そのかじ取りは経営者の責務であるからです。
 
 BCPを策定する過程で検討対象とする災害を特定する必要があります。ここでは前々回にもお話させていただいた通り、まず一つのリスクを選んで取り組むべきで、我が国においては「地震」が最優先課題であると考えるべきでしょう。
 
 地震を想定した場合、それによって事業が停止となった場合にその停止期間がどの程度企業に影響を与えるのかを評価し、事業としていつまで耐えられるのかの「目標復旧時間」を設定する必要があります。
 
 この影響度の評価の結果を踏まえて、継続が求められる重要業務は何かを決定し、復旧の優先順位を設定します。また、目標復旧時間を確保するために障害となる重要な要素(ボトルネック)を抽出することになります。
 
 この影響度の評価はビジネス・インパクト分析と呼ばれ、BCPでは重要視されています。尚、ビジネス・インパクト分析については、その12で解説します。
 
 次回に続きます。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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