概要 ジャスト・イン・タイム生産(その3)

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【目次】

第1章 概要を理解しておこう

(1) 変化の時代に対応する
 いま、なぜジャスト・イン・タイムなのか
  中小企業にこそ効果的
  「改革」である
  「ムダ取り」である
  「流れ」である
  「実践」である

(2) 改革の全体像をみておこう
  「5S・3定」で改革の土台をつくる ← 今回の記事
  改革は3要素を中心に推進する ← 同上
  改革のサイクルを繰り返す

(3) 生産の3要素を中心に改革を進める
  生産のメロディ・リズムハ一モニー

(4) 11の改革でJIT生産を目指す
  11の改革項目
  7つの経営課題に対応

 

第1章 概要を理解しておこう

(2) 改革の全体像をみておこう

◆「5S・3定」で改革の土台をつくる

 JIT改革はどのように行なうのか、最初に全体像をみておきましょう。JIT改革は、下図のような体系になっています。

 

生産マネジメント

図.ジャスト・イン・タイムの体系

 下の項目から着手し、上に向かって順に(あるいは並行して)改革を進めていき、最終的にJIT生産ができる体制になるよう職場や現場全体を改革していきます。
 それでは、順にみていきましょう。改革の前提となるのは「意識改革」です。まったく違う考え方を採り入れるのですから、最初に頭を切り替えなければなりません。続いて「5S・3定」で改革の基礎をつくります。「5S」とは整理・整頓・清掃・清潔・躾、「3定」[1]は、定品・定位・定量で、企業改革の定番として長く行なわれている手法です。

 

◆ 改革は3要素を中心に推進する

 改革の土台ができたら、いよいよJIT改革がスタートします。改革は、以下に示す生産の3要素を中心に展開していきます。

  • 流れ生産・・・・モノの流れをつくること
  • 平準化・・・・・生産の波を小さくすること
  • 標準作業・・・・人、モノ、機械の効率的な組み合わせにより作業の調和を図ること

 この3要素はそれぞれ、以下の関連項目で構成されています。

  • 流れ生産・・・・多工程持ち/かんばん
  • 平準化・・・・・段取り替え/品質保証
  • 標準作業・・・・自働化/保全・安全

 また、上記3要素のほか、JIT改革には下記のように2つの要素もあり、3要素における6つの関連項目は、この2つの要素の関連項目にもなっています。

  少人化…顧客の要求に合わせて、最も効率的に人員を投入すること

  ・多工程持ち
  ・段取り替え
  ・自働化

  目で見る管理…文字通り、目で見て管理できるようにするしくみ

  ・かんばん
  ・品質保証
  ・保全・安全

 つまり、ジャスト・イン・タイムは、3要素を中心にした、13の項目が有機的につながりながら体系を構成しているのです。

 一つひとつの項目は独立しているように見えて、互いに関係し合い、影響を及ぼし合っています。改革は1項目ずつ(あるいは、いくつか並行して)進めていきますが、次第に一つの取り組みがさまざまなところに影響を及ぼし、全体的に効果が上がっていることが実感できるようになります。

 ジャスト・イン・タイムの...

 

【目次】

第1章 概要を理解しておこう

(1) 変化の時代に対応する
 いま、なぜジャスト・イン・タイムなのか
  中小企業にこそ効果的
  「改革」である
  「ムダ取り」である
  「流れ」である
  「実践」である

(2) 改革の全体像をみておこう
  「5S・3定」で改革の土台をつくる ← 今回の記事
  改革は3要素を中心に推進する ← 同上
  改革のサイクルを繰り返す

(3) 生産の3要素を中心に改革を進める
  生産のメロディ・リズムハ一モニー

(4) 11の改革でJIT生産を目指す
  11の改革項目
  7つの経営課題に対応

 

第1章 概要を理解しておこう

(2) 改革の全体像をみておこう

◆「5S・3定」で改革の土台をつくる

 JIT改革はどのように行なうのか、最初に全体像をみておきましょう。JIT改革は、下図のような体系になっています。

 

生産マネジメント

図.ジャスト・イン・タイムの体系

 下の項目から着手し、上に向かって順に(あるいは並行して)改革を進めていき、最終的にJIT生産ができる体制になるよう職場や現場全体を改革していきます。
 それでは、順にみていきましょう。改革の前提となるのは「意識改革」です。まったく違う考え方を採り入れるのですから、最初に頭を切り替えなければなりません。続いて「5S・3定」で改革の基礎をつくります。「5S」とは整理・整頓・清掃・清潔・躾、「3定」[1]は、定品・定位・定量で、企業改革の定番として長く行なわれている手法です。

 

◆ 改革は3要素を中心に推進する

 改革の土台ができたら、いよいよJIT改革がスタートします。改革は、以下に示す生産の3要素を中心に展開していきます。

  • 流れ生産・・・・モノの流れをつくること
  • 平準化・・・・・生産の波を小さくすること
  • 標準作業・・・・人、モノ、機械の効率的な組み合わせにより作業の調和を図ること

 この3要素はそれぞれ、以下の関連項目で構成されています。

  • 流れ生産・・・・多工程持ち/かんばん
  • 平準化・・・・・段取り替え/品質保証
  • 標準作業・・・・自働化/保全・安全

 また、上記3要素のほか、JIT改革には下記のように2つの要素もあり、3要素における6つの関連項目は、この2つの要素の関連項目にもなっています。

  少人化…顧客の要求に合わせて、最も効率的に人員を投入すること

  ・多工程持ち
  ・段取り替え
  ・自働化

  目で見る管理…文字通り、目で見て管理できるようにするしくみ

  ・かんばん
  ・品質保証
  ・保全・安全

 つまり、ジャスト・イン・タイムは、3要素を中心にした、13の項目が有機的につながりながら体系を構成しているのです。

 一つひとつの項目は独立しているように見えて、互いに関係し合い、影響を及ぼし合っています。改革は1項目ずつ(あるいは、いくつか並行して)進めていきますが、次第に一つの取り組みがさまざまなところに影響を及ぼし、全体的に効果が上がっていることが実感できるようになります。

 ジャスト・イン・タイムの考え方はとてもシンプルですが、適用範囲は広く、ものづくりに関わるほぼすべてに関係します。そのため、体系は少し複雑になっていますが、全体的な改革を進めていくのに効果的なのです。企業の状態や必要性に合わせて、取り組みやすい項目を部分的に、または1項目からでも改革していくことも可能です。

 次回もこのテーマで解説を続けます。

 

 【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)
 【用語解説】
 [1]3定
: 定品、決まった品物。 定位、どこにあるか分かる場所。 定量、決まった量。

 

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この記事の著者

古谷 誠

「5S・3定」で改革・改善の基礎をつくり!JIT思想でムダを徹底して取り!心を生かしたモノづくりを目指す!

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