導電ペーストの抵抗値 高品質スクリーン印刷標論(その25)

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【関連解説:印刷技術】

高品質スクリーン印刷の実践を目的とする皆様の標となるように、論理的で整合性のある解説を心掛けたいと思います。

1. スクリーン印刷:導電ペーストの抵抗値

 エレクトロニクス分野において、スクリーン印刷工法で導電ペーストを印刷する事が一般的に行われています。古くは、真空プロセスで成膜する「薄膜プロセス」(thin film process)に対し、スクリーン印刷工法は、「厚膜プロセス」(thick film process)と呼ばれていました。前者が、1μm以下の薄い膜を形成できる工法に対して、後者は、数μmから数十μmの厚い膜を形成できるために名付けられたものです。近年では、MLCC(積層セラミックコンデンサー)での内部電極としての低粘度・低金属含有量のニッケルペーストのスクリーン印刷で、焼成後、0.5μm以下の膜厚が形成されています。

 スクリーン印刷用の銀ペーストには、通常は、セラミック、ガラス、シリコン基板用の焼成タイプと、フィルム基材上に印刷する樹脂タイプに分けられます。前者は、印刷、乾燥後500℃以上の高温で熱処理するため、バインダーの樹脂成分が燃焼し、無機フィラー成分が固着します。このため、体積抵抗率は、金属銀の1.6×10-6Ω・㎝に近い値の、2~3×10-6Ω・㎝まで下がります。後者は、200℃以下の熱処理であるため、バインダーの樹脂成分が残るため体積抵抗率は、一桁大きい5~10×10-5Ω・㎝に留まります。

2. スクリーン印刷:体積抵抗率とシート抵抗

  スクリーン印刷

 図1.体積抵抗率の測定方法のイメージ

 体積抵抗率とは、図1のように1cm×1cm×1cmの立方体の抵抗値であり、単位はΩ・cmです。抵抗値は、電流が流れる方向の長さに比例し、断面積に反比例しますので、1辺の長さを1/10にした1mm×1㎜×1㎜の立方体では、抵抗値も、(10)×(1/100)で、1/10に小さくなります。

 体積抵抗率を測定のために、銀ペーストを1cm角の立方体に形成することは、現実的には、困難です。では、どのように測定するのでしょうか。銀ペーストの体積抵抗率は、実際に、基板上に印刷,熱処理して、その配線抵抗値を測定して、そのライン幅、長さ、膜厚から算出します。

 例えば、ライン幅1㎜、長さ100㎜のパターンを印刷して、配線の抵抗値が10Ωであった場合を例とします。幅1㎜、長さ100㎜の配線とは、1㎜角の正方形が一列に100個連なったものと考えることが出来ます。長さ100㎜で、抵抗値が10Ωですので、この1/100の長さの1㎜角の正方形では、0.1Ωとなります。この正方形での抵抗値のことをシート抵抗と呼びます。単位は、Ω/□です。

 1㎜角の正方形が10㎜角の正方形に大きくなっても、長さは10倍、断面積が1/10になりますので、抵抗値は同じです。つまり、シート抵抗は、正方形の1辺の長さには関わらない値です。但し、シート抵抗を表記する場合は、必ず膜厚を明記する必要があります。

 シート抵抗が0.1Ω/□で、膜厚が10μmの場合の体積抵抗率を計算します。1辺が1cmのシートと考え、(1cm)×(1cm)×(1×10-3)cmで、抵抗値が0.1Ω、つまり10-1Ωです。つまり、厚みが1000倍の1cm×1cm×1cmの立方体での体積抵抗率は、1/1000倍の1×10-4Ω・cmとなります。

 
 

3. 低温焼結型スクリーン印刷用銀ナノインク

 2000年代初頭に、フィルム基材用の導電ペーストとして、100nm以下の銀ナノ粒子を低温で焼結できる「銀ナノインク」が登場しました。200℃以下の低温で焼結できる銀ナノインクの体積抵抗率は、5~3×10-6Ω・㎝まで低下します。つまり、銀ナノインクは、通常の銀ペーストに比べて一桁低い体積抵抗率であるという事です。

 銀ナノインクは、低温焼結性を維持するために、粘度調整のための樹脂成分を含有することが出来ません。このため、当初、銀ナノインクは、粘度が低い、インクジェット用かコーティング用が一般的でした。また、PET基材への密着性が悪いことから、光焼結で基材を溶融して密着させる必要があるとも思われていました。

 近年、フランスGENESINK(ジンズインク)社からスクリーン印刷で回路を形成できる中粘度の銀ナノインクが製品化されました。市販の易接着コートPETフェイルムに150℃、30分の熱処理で、良好な密着性を示します。

 スクリーン印刷

 図2.銀ナノインク(左)と銀ペースト(右)の断面形状

 スクリーン印刷

 図3.銀ナノインク(左)と銀ペースト(右)の平滑性

 図2に、一般の銀ペーストと銀ナノインクをポリエステル250メッシュで、500μmラインを印刷、熱処理した断面を示します。前者の厚みは、約7.5μm、後者は、1/5の約1.5μmです。両社の体積抵抗率の違いは、10倍ですので、銀ナノインクの配線抵抗は、銀ペーストに比べて約1/2になることが分かります。図3は、両者の平滑性の違いです。銀ナ...

 

【関連解説:印刷技術】

高品質スクリーン印刷の実践を目的とする皆様の標となるように、論理的で整合性のある解説を心掛けたいと思います。

1. スクリーン印刷:導電ペーストの抵抗値

 エレクトロニクス分野において、スクリーン印刷工法で導電ペーストを印刷する事が一般的に行われています。古くは、真空プロセスで成膜する「薄膜プロセス」(thin film process)に対し、スクリーン印刷工法は、「厚膜プロセス」(thick film process)と呼ばれていました。前者が、1μm以下の薄い膜を形成できる工法に対して、後者は、数μmから数十μmの厚い膜を形成できるために名付けられたものです。近年では、MLCC(積層セラミックコンデンサー)での内部電極としての低粘度・低金属含有量のニッケルペーストのスクリーン印刷で、焼成後、0.5μm以下の膜厚が形成されています。

 スクリーン印刷用の銀ペーストには、通常は、セラミック、ガラス、シリコン基板用の焼成タイプと、フィルム基材上に印刷する樹脂タイプに分けられます。前者は、印刷、乾燥後500℃以上の高温で熱処理するため、バインダーの樹脂成分が燃焼し、無機フィラー成分が固着します。このため、体積抵抗率は、金属銀の1.6×10-6Ω・㎝に近い値の、2~3×10-6Ω・㎝まで下がります。後者は、200℃以下の熱処理であるため、バインダーの樹脂成分が残るため体積抵抗率は、一桁大きい5~10×10-5Ω・㎝に留まります。

2. スクリーン印刷:体積抵抗率とシート抵抗

  スクリーン印刷

 図1.体積抵抗率の測定方法のイメージ

 体積抵抗率とは、図1のように1cm×1cm×1cmの立方体の抵抗値であり、単位はΩ・cmです。抵抗値は、電流が流れる方向の長さに比例し、断面積に反比例しますので、1辺の長さを1/10にした1mm×1㎜×1㎜の立方体では、抵抗値も、(10)×(1/100)で、1/10に小さくなります。

 体積抵抗率を測定のために、銀ペーストを1cm角の立方体に形成することは、現実的には、困難です。では、どのように測定するのでしょうか。銀ペーストの体積抵抗率は、実際に、基板上に印刷,熱処理して、その配線抵抗値を測定して、そのライン幅、長さ、膜厚から算出します。

 例えば、ライン幅1㎜、長さ100㎜のパターンを印刷して、配線の抵抗値が10Ωであった場合を例とします。幅1㎜、長さ100㎜の配線とは、1㎜角の正方形が一列に100個連なったものと考えることが出来ます。長さ100㎜で、抵抗値が10Ωですので、この1/100の長さの1㎜角の正方形では、0.1Ωとなります。この正方形での抵抗値のことをシート抵抗と呼びます。単位は、Ω/□です。

 1㎜角の正方形が10㎜角の正方形に大きくなっても、長さは10倍、断面積が1/10になりますので、抵抗値は同じです。つまり、シート抵抗は、正方形の1辺の長さには関わらない値です。但し、シート抵抗を表記する場合は、必ず膜厚を明記する必要があります。

 シート抵抗が0.1Ω/□で、膜厚が10μmの場合の体積抵抗率を計算します。1辺が1cmのシートと考え、(1cm)×(1cm)×(1×10-3)cmで、抵抗値が0.1Ω、つまり10-1Ωです。つまり、厚みが1000倍の1cm×1cm×1cmの立方体での体積抵抗率は、1/1000倍の1×10-4Ω・cmとなります。

 
 

3. 低温焼結型スクリーン印刷用銀ナノインク

 2000年代初頭に、フィルム基材用の導電ペーストとして、100nm以下の銀ナノ粒子を低温で焼結できる「銀ナノインク」が登場しました。200℃以下の低温で焼結できる銀ナノインクの体積抵抗率は、5~3×10-6Ω・㎝まで低下します。つまり、銀ナノインクは、通常の銀ペーストに比べて一桁低い体積抵抗率であるという事です。

 銀ナノインクは、低温焼結性を維持するために、粘度調整のための樹脂成分を含有することが出来ません。このため、当初、銀ナノインクは、粘度が低い、インクジェット用かコーティング用が一般的でした。また、PET基材への密着性が悪いことから、光焼結で基材を溶融して密着させる必要があるとも思われていました。

 近年、フランスGENESINK(ジンズインク)社からスクリーン印刷で回路を形成できる中粘度の銀ナノインクが製品化されました。市販の易接着コートPETフェイルムに150℃、30分の熱処理で、良好な密着性を示します。

 スクリーン印刷

 図2.銀ナノインク(左)と銀ペースト(右)の断面形状

 スクリーン印刷

 図3.銀ナノインク(左)と銀ペースト(右)の平滑性

 図2に、一般の銀ペーストと銀ナノインクをポリエステル250メッシュで、500μmラインを印刷、熱処理した断面を示します。前者の厚みは、約7.5μm、後者は、1/5の約1.5μmです。両社の体積抵抗率の違いは、10倍ですので、銀ナノインクの配線抵抗は、銀ペーストに比べて約1/2になることが分かります。図3は、両者の平滑性の違いです。銀ナノインクで極めて平滑な薄い膜が形成できる事が分かります。

  スクリーン印刷

 図4.25μm厚PETフィルム上の銀ナノインク回路外観

 スクリーン印刷

 図5.配線部拡大写真 200μmライン(左) 500μmピッチ(右)

 また、銀ナノインクは、樹脂バインダーが含まれていないため、焼結時にPET基材に収縮応力を生じないため、薄い基材でも「反り」「シワ」を発生しません。図4、図5は、銀ナノインクを25μm厚の易接着コートPETフィルムに高精細スクリーン版で印刷した回路の外観と拡大写真です。回路外側のベタ部の膜厚は、約0.8μmの「薄膜」となっています。つまり、厚膜プロセスであるスクリーン印刷で、「薄膜」が形成できた事になります。

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この記事の著者

佐野 康

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。


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