同期版離れコンタクト印刷 高品質スクリーン印刷標論(その17)

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高品質スクリーン印刷の実践を目的とする皆様の標となるように、論理的で整合性のある解説を心掛けたいと思います。前回のその16に続いて解説します。
【目次】
     

    1. コンタクト印刷とペースト粘弾性の時間依存性

     
    クリームはんだのようなペーストは、粘弾性の変化に時間依存性があります。ペーストに速いせん断速度を加えると、時間とともにやわらかく(粘弾性が低下)なり、静止すると時間とともにかたく(粘弾性が上昇)なります。
     
    スクリーン印刷
    図1. コンタクト印刷でのペーストの流動状態から疑似固体化への変化
     
    図1のように、コンタクト印刷で、メタルスキージにより、ローリングのせん断速度を与えられたはんだペーストは、粘弾性が低下し、流動状態となりメタルマスクの開口部に充てんされます。
     
    なお、このペースト充てんの力は、スキージのアタック面に垂直の方向に生じるもので、アタック角度が小さいほど大きな「充てん力」を得ることが出来ます。「充てん力」により、押しだされたペーストがメタルマスク開口の前方の壁面に当たり、手前に戻るようにして完全に充てんされます。決して、ローリングの力で充てんされるのではありません。
     
    コンタクト印刷では、この後、数秒の時間を経て、基板からメタルマスクを剥がす「版離れ」工程を行います。つまり、「時差版離れ」原理です。このとき、マスク開口内のはんだペーストは、数秒間、静止状態になるため粘弾性が上昇し、疑似的な固体のような性状になります。このため、コンタクト印刷での円形パターンの印刷形状は、「円錐台」の形状となります。
     
    以上の事から、コン...
     
    高品質スクリーン印刷の実践を目的とする皆様の標となるように、論理的で整合性のある解説を心掛けたいと思います。前回のその16に続いて解説します。
    【目次】
       

      1. コンタクト印刷とペースト粘弾性の時間依存性

       
      クリームはんだのようなペーストは、粘弾性の変化に時間依存性があります。ペーストに速いせん断速度を加えると、時間とともにやわらかく(粘弾性が低下)なり、静止すると時間とともにかたく(粘弾性が上昇)なります。
       
      スクリーン印刷
      図1. コンタクト印刷でのペーストの流動状態から疑似固体化への変化
       
      図1のように、コンタクト印刷で、メタルスキージにより、ローリングのせん断速度を与えられたはんだペーストは、粘弾性が低下し、流動状態となりメタルマスクの開口部に充てんされます。
       
      なお、このペースト充てんの力は、スキージのアタック面に垂直の方向に生じるもので、アタック角度が小さいほど大きな「充てん力」を得ることが出来ます。「充てん力」により、押しだされたペーストがメタルマスク開口の前方の壁面に当たり、手前に戻るようにして完全に充てんされます。決して、ローリングの力で充てんされるのではありません。
       
      コンタクト印刷では、この後、数秒の時間を経て、基板からメタルマスクを剥がす「版離れ」工程を行います。つまり、「時差版離れ」原理です。このとき、マスク開口内のはんだペーストは、数秒間、静止状態になるため粘弾性が上昇し、疑似的な固体のような性状になります。このため、コンタクト印刷での円形パターンの印刷形状は、「円錐台」の形状となります。
       
      以上の事から、コンタクト印刷工法は、はんだペーストの時間経過による粘弾性変化を利用した「型抜き」工法であるともいえます。この工法では、はんだペーストの粘弾性変化がパターン内のすべてで均一に起こることはなく、また、「版離れ」もパターン周囲から中央部にかけて時間差が生じるため全エリアで均一にメタルマスクを剥がすことはできません。私は、このことが狭ピッチメタルマスクでの「コンタクト印刷」における「欠け」不具合発生の原理的な問題であると考えています。
       

      2. スクリーン印刷は、「同期版離れ」原理

       
      本標論では、主に、基材とスクリーン版と間に「隙間(クリアランス)」を設定して、版の反発力で「同期版離れ」させる本来のスクリーン印刷(オフコンタクト印刷)について解説しています。この「同期版離れの」原理では、流動状態のまま、ペーストの充てんと「版離れ」を時間差なく実現し、ペーストは基材に転移されたあと徐々に疑似固体化します。
       
      実は、他の印刷工法も、全て流動状態のインキ・ペーストを基材に転移するものです。このため、版を洗浄しなくても連続で印刷を実施することが出来るのです。
       
      「同期版離れ」の原理では、スキージの移動に合わせ、ペーストの充てんに「版離れ」が追随するため、印刷パターンの全面で、均一な粘弾性のペースト状態で、均一な版離れが実現できます。つまり、「同期版離れ」は、印刷均一性を損なうような、時間経過によるペースト粘弾性変化や版離れ時間差による印刷品質ばらつきのリスクを無くすことが出来ます。
       

      3. 「同期版離れコンタクト印刷」工法

       
      以上のように、はんだペーストを狭開口のメタルマスクを使用して、均一に印刷する場合には、「同期版離れ」原理を利用することが有利です。しかし、前回述べたように、通常のオフコタンタクト印刷では、スキージ前方へのペースト漏れの問題がありました。
       
       スクリーン印刷
      図2.「同期版離れコンタクト印刷」での前コンタクト状態のメタルマスク
       
      この問題を解決するために、図2のような前コンタクト状態の「同期版離れコンタクト印刷」を考案しました。メタルスキージより前方は、メタルマスクをコンタクト状態にしてペーストの前漏れを防ぎます。後方は、スクリーン版の反発力で「版離れ」できるようにすることで、「同期版離れ」を実現できます。
       
       スクリーン印刷
      図3. 傾斜させたスクリーン枠のリフトアップの方法
       
      実際の装置では、図3のようにスクリーン枠を傾斜してセットして、実クリアランス量を変えない条件で、スキージストロークに同期して傾斜を大きくすることで実現できます。
       
      この「同期版離れコンタクト印刷」では、はんだペーストを流動体のまま、充てん・版離れさせますので、印刷形状は、「円錐台」形状とはならず、少しとがった山形となります。
       
      これまで、「円錐台」形状だけが適正な印刷形状であると認識されてきた方には、すこし、違和感があると思いますが、印刷の目的は「均一塗布」であると割り切ってください。「同期版離れコンタクト印刷」で、印刷均一性は、格段に向上します。
       
      さらに、「同期版離れ」のため印刷での、にじみによるブリッジの可能性が格段に小さくなりますので、適正なはんだペーストの粘度は、通常の50%程度の100Pa.S程度とすることが出来、スキージ速度も100~200mm/secの高速印刷が可能になります。
       
      ここまでの説明で気が付かれた方も多いと思いますが、実は、この印刷装置は第13回で紹介した「版離れ角度維持装置」と同じです。同じ印刷装置で、メタルマスク(コンビネーション仕様)とメタルスキージを使用して印刷するものです。
       

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      この記事の著者

      佐野 康

      明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。

      明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。


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