高品質スクリーン印刷標論(その8)スキージ印圧の定義と「実印圧」

 高品質スクリーン印刷の実践を目的とする皆様の標となるように、論理的で整合性のある解説を心掛けたいと思います。前回のその7に続いて解説します。
 

1. スクリーン印刷:スキージ印圧の定義と「実印圧」

 
 実際の印刷作業で、最も頻繁に変更することが多く、また、間違った理解も多い印刷パラメータであるスキージ印圧について説明します。
 
 私は、「スキージ印圧とは、スキージが下降して、スクリーン版を押し下げ、基材を押す力」と定義しています。スキージの下降圧力が、スクリーン版の反発力より小さい場合、版は基材に接触しません。少しずつスキージを押し下げてスクリーン版が基材に接触した状態を「実印圧=0」としています。印刷の際には、この「実印圧」を適正な大きさにして、印刷面全体が均一に印刷できるようにする必要があります。
 

2. スクリーン印刷:二通りのスキージ印圧の設定方法

 
 スキージ印圧の設定方法には、大きく分けて二通りあります。「押し込み」方式と「エアー圧」方式です。前者は、スキージ下降時の下降端の高さ「押し込み量」で、スキージゴムの変形量を増減して印圧を制御するものです。後者は、スキージヘッドを下降させる「エアー圧」を制御して、スキージゴムに加わる荷重を制御するものです。
 
 通常、印刷機にはスキージの下降量を増減できる調整ネジやサーボモータと併せエアー圧制御用レギュレータも装備されています。装置メーカーも「エアー圧と押し込み量の両方が設定出来ます」と紹介し、あたかも併用できるかのように説明することもあります。
 
 私が「スキージ印圧はいくつですか」と訊くと、「エアー圧0.02Mpaで押し込み量0.5mm」と二つの数字が返ってくることがあります。これは、作業者が二つ数字を印圧設定の管理項目としているためであり、正しくありません。スキージ印圧の制御は、「押し込み」方式か、「エアー圧」方式の、どちらか片方しか使用してはいけません。
 
 「押し込み」方式を使用する時は、エアー圧は最大値に固定してください。印圧の管理項目は、「押し込み」量だけで、単位は「mm」です。
 
 「エアー圧」方式を使用するときは、押込み量は十分な大きさの5mmに固定してください。印圧の管理項目は、エアー圧だけで「Mpa」又は、荷重換算値の「Kgf」です。
 

3. スクリーン印刷:「押し込み」方式での印圧制御

 
 適正な研磨と面取り仕上げを施した平スキージや斜め研磨スキージを使用する場合、スキージの下降端の高さを精密に制御する「押し込み」方式で、印圧を管理することが出来ます。図1のように実際に加わる荷重は、押し込み量相当のスキージ変形による反発力となります。図2のように「押し込み」量(mm)と実荷重は、リニアな相関ではありませんが、エアー圧を最大の0.4MPaに固定すれば、十分に再現性が高いと考えられます。なお、スキージの種類や取り付け角度が異なると、同じ押し込み量でも実荷重の値は変わりますが、条件再現のための「管理項目」とすることが出ます。
 
スクリーン印刷
図1. スキージ変形
 
 
スクリーン印刷
図2. 押し込み量と実荷重
 
 近年の印刷装置は、スキージの下降端をサーボモータで制御できる製品もあり、印圧を0.01mm単位で管理可能になりました。また、スクリーン版の上からスキージの平行出しと印圧設定を自動で行うことができる装置も実用化されています。
 
 私は、適正印圧領域から極低印圧領域まで再現性が高い印圧制御が可能な「押し込み」方式を推奨しています。適正印圧領域での押し込み量は、「1.0~2.0mm」です。
 
 

4. スクリーン印刷:「エアー圧」方式での印圧制御

 
 「エアー圧」方式は、図3のようにスキージヘッドを上向きに持ち上げる一定量(例;0.10MPa)に「背圧」設定して、下向きのエアー圧を加えることで印圧を制御するものです。実印圧「ゼロ」とは、印圧と背圧と「差圧」とスキージヘッドの重量に対してスクリーン版の反発力が均衡して、基板に接触した状態の印圧0.13MPaです。印刷時のエアー圧0.20MPaでの実印圧は、0.07MPaとなります。
 
スクリーン印刷
図3. 印圧の制御
 
 実印圧を重量に換算して実荷重Kgfとして表示することもあります。また、実荷重を、スキージ長さ(cm)で除して、単位長さ1cm当たりの実印圧(g/cm)として表すことも出来ます。適正印圧領域での実印圧は、「400~600g/cm」です。
 
 「エアー圧」方式の利点は、基材の厚みが変化した場合、つまり、実質クリアランス量が変化しても「実印圧」変化への影響が少ない事です。
 
 これまで「エアー圧」方式は、「低印圧印刷」が容易で、基材の凹凸にスキージが追随するフロート機能があるかのような説明されることがありますが、間違いです。印刷の際、スキージヘッドの慣性で、スキージが「ジャンプ」する不具合の可能性があります。また、スキージヘッド重量が重くなる大型装置では、低印圧領域で、スキージの上下動がスムーズに動かないことがあります。
 
 なお、同一のスキージを使用した場合、「押し込み」方式でも「エアー圧」方式でも適正印圧領域でのスキージの変形量は同じであり、印刷結果は、同じです。
 
 

この記事の著者

佐野 康

明確なスクリーン印刷理論を用い、納得できる具体的手法により、エレクトロニクスのみならず全ての分野の高品質スクリーン印刷技術の実践をお手伝いします。

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