ピッキングの仕方で工数削減できる レイアウトと物流(その6)

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生産マネジメント

 

1.品番で探すと非常に時間が掛かり、間違いも多い

倉庫業務のピッキング作業は、多品種小ロット化になって部品数はドンドン増えており、ピッキングリストに印刷されている品番も桁数が多いので、とても覚えきれるものではなくなってきています。ピッキングする時にはその品番と棚に格納してある部品と照合しますが、品番をすべて見るわけでなく、右側の3桁を見て検数しています。

 

覚えている部品はそれでよいのですが、新人や応援の人たちがこのピッキング作業をやるとトランプ合わせのように非常に疲れる作業になっています。照合、確認、検数を1日数百件も繰り返しやることは、緊張が続かなく結果的に違ったものをピッキングしたり、検数間違いを発生させてしまったりしています。実はピッキングだけでなく、仕入先から納入した時の倉庫への格納作業も同じことを繰り返しているのです。

 

ピッキングミスがあって後工程の製造から呼び出されると、その往復の時間だけでなく、文句を言われるおまけまで付きます。そうなるとお互いの気分が悪くなってしまい、人間関係まで影響していきます。倉庫に戻り間違いの修正のために入出庫作業を繰り返すと、思った以上の時間を浪費してしまいます。

 

また作業のリズムが狂ってしまい、さらにミスを誘発することにもなります。またその間違った部品で製造が加工さらに組立をして、最終検査で発見されるとそれまでの工数や光熱費などがすべてムダになっています。些細なことですが、最初の間違いで発見があとになって分かるほど被害は大きくなっていくものです。ピッキングは単純作業であっても正確に確実にしかもタイミングよく繰り返し行う必要がありますが、倉庫業務には余り改善のメスが入っていないことが多くあります。しかしやるべきことは非常に多いことが、現場に行けば見えてきます。

 

2.品番から棚番や背番号に替えて視認性を上げる

長い数字は記憶できるものではないので、それに代わるものとして背番号や棚番があります。背番号は野球やサッカーのユニホームにつける背番号と同じ考えで、遠くから文字を読んで認識するのではなく、簡単な数字で認識するものです。実際に部品に反映させると4桁までの表示になり、「A123」というように1つだけ文字を付けて、後は3桁の数字にすれば、単純に2万7千の区分ができます。

 

棚番はもっと簡単であり、棚の番号と棚段差をつければよいのです。さらに細かくすると、段差のあとに例えば左から何番目という表示を加えていきます。これは郵便番号のように、数値で所番地が分かるものです。例えば、「A-1-3」であれば、Aという棚の1番下の左から3番目にあることが分かります。普通棚の段差は、ビルでも下から1階、2階と数えていきます。でも工場により上から見た方が早いということで、段差を上から1をつける時もありますが強制はしないので工場にお任せしています。そして品番も少し手を加えて、下3桁もしくは4桁目を拡大して表示するようにすれば、視認性も一気によくなります。視認性の一つの目安としては、表示標識が3m離れていても確実に判別できることを各企業に紹介しています。

 

現場での実例として、大型の倉庫で約1万点の部品をピッキングするのに、フォークリフトでの作業は広くて大きいこともあり、部品がどこにあるのかを覚えるのに約1年もかかっていました。そこで棚番をすべてにつけて、「A-1-3」でピッキングしたら何と新人でも1週間で約9割の作業レベルに到達できるようになりました。

 

別な事例として、M2の小さなネジやワッシャ、ナットなど数十点のピッキング作業は似た物同士を隣に並べていました。M2×4mm、その隣が6mm、8mmとなっていました。小さい箱に入れていたので手を入れにくく、品番も小さく見づらく、しかも隣同士のネジが混在しても分からない状態でした(実際に混在していた)。そこで、M2ネジの隣にナット、ワッシャなどまったく別なものに置き換えました。そして棚番も新たに登録し箱も変更して作業すると、すぐに工数は半減してミスも20分の1以下になりました。

 

またちょっとのヒントで機種別でよく使うものをグルーピングして歩行のムダをなくしたり、セット化やキット化のアイデアも思いつくようになりました。また一筆書きのように、一方向に進んでピッキングをするために、順番のソートができる工夫をする。よく使う部品はライン内ストアやダブルビン方式での補充も可能です。

 

視認性が最もよいのは、色の区分によるものですが、10種類以上になるとどの色がどんな意味かも分からなくなるので注意が必要です。次は形状による区分で、色と組み合わせることもできます。例えば赤の四角、青の丸、黄色の台形、緑のひし形などは、見た目ですぐに判別ができます。交通標識がよい事例なので、それを倉庫や工場内に使わない手はありません。その次が数字であり、これも長いと逆に混乱するので3桁か4桁がよいでしょう。

 

最後は文字で、できるだけ簡潔にまとめます。これらはいわゆるユニバーサルデザインであり、タバコ禁止のマークが○に左からの斜めの線があるのは、禁止=NOの文字をデザイン化したものです。でも8割の人は右斜めからと答えるのは、意味を知らないからであり、意味を理解するともう忘れることのない良い事例です。

 

さらには現物を接着剤で固定して、比較が現物でできることは作業の上でも安心ができます。これはシャドーボードの応用編であり、部品の写真を撮っても実際の大きさと違うような小物は、このような現物を...

生産マネジメント

 

1.品番で探すと非常に時間が掛かり、間違いも多い

倉庫業務のピッキング作業は、多品種小ロット化になって部品数はドンドン増えており、ピッキングリストに印刷されている品番も桁数が多いので、とても覚えきれるものではなくなってきています。ピッキングする時にはその品番と棚に格納してある部品と照合しますが、品番をすべて見るわけでなく、右側の3桁を見て検数しています。

 

覚えている部品はそれでよいのですが、新人や応援の人たちがこのピッキング作業をやるとトランプ合わせのように非常に疲れる作業になっています。照合、確認、検数を1日数百件も繰り返しやることは、緊張が続かなく結果的に違ったものをピッキングしたり、検数間違いを発生させてしまったりしています。実はピッキングだけでなく、仕入先から納入した時の倉庫への格納作業も同じことを繰り返しているのです。

 

ピッキングミスがあって後工程の製造から呼び出されると、その往復の時間だけでなく、文句を言われるおまけまで付きます。そうなるとお互いの気分が悪くなってしまい、人間関係まで影響していきます。倉庫に戻り間違いの修正のために入出庫作業を繰り返すと、思った以上の時間を浪費してしまいます。

 

また作業のリズムが狂ってしまい、さらにミスを誘発することにもなります。またその間違った部品で製造が加工さらに組立をして、最終検査で発見されるとそれまでの工数や光熱費などがすべてムダになっています。些細なことですが、最初の間違いで発見があとになって分かるほど被害は大きくなっていくものです。ピッキングは単純作業であっても正確に確実にしかもタイミングよく繰り返し行う必要がありますが、倉庫業務には余り改善のメスが入っていないことが多くあります。しかしやるべきことは非常に多いことが、現場に行けば見えてきます。

 

2.品番から棚番や背番号に替えて視認性を上げる

長い数字は記憶できるものではないので、それに代わるものとして背番号や棚番があります。背番号は野球やサッカーのユニホームにつける背番号と同じ考えで、遠くから文字を読んで認識するのではなく、簡単な数字で認識するものです。実際に部品に反映させると4桁までの表示になり、「A123」というように1つだけ文字を付けて、後は3桁の数字にすれば、単純に2万7千の区分ができます。

 

棚番はもっと簡単であり、棚の番号と棚段差をつければよいのです。さらに細かくすると、段差のあとに例えば左から何番目という表示を加えていきます。これは郵便番号のように、数値で所番地が分かるものです。例えば、「A-1-3」であれば、Aという棚の1番下の左から3番目にあることが分かります。普通棚の段差は、ビルでも下から1階、2階と数えていきます。でも工場により上から見た方が早いということで、段差を上から1をつける時もありますが強制はしないので工場にお任せしています。そして品番も少し手を加えて、下3桁もしくは4桁目を拡大して表示するようにすれば、視認性も一気によくなります。視認性の一つの目安としては、表示標識が3m離れていても確実に判別できることを各企業に紹介しています。

 

現場での実例として、大型の倉庫で約1万点の部品をピッキングするのに、フォークリフトでの作業は広くて大きいこともあり、部品がどこにあるのかを覚えるのに約1年もかかっていました。そこで棚番をすべてにつけて、「A-1-3」でピッキングしたら何と新人でも1週間で約9割の作業レベルに到達できるようになりました。

 

別な事例として、M2の小さなネジやワッシャ、ナットなど数十点のピッキング作業は似た物同士を隣に並べていました。M2×4mm、その隣が6mm、8mmとなっていました。小さい箱に入れていたので手を入れにくく、品番も小さく見づらく、しかも隣同士のネジが混在しても分からない状態でした(実際に混在していた)。そこで、M2ネジの隣にナット、ワッシャなどまったく別なものに置き換えました。そして棚番も新たに登録し箱も変更して作業すると、すぐに工数は半減してミスも20分の1以下になりました。

 

またちょっとのヒントで機種別でよく使うものをグルーピングして歩行のムダをなくしたり、セット化やキット化のアイデアも思いつくようになりました。また一筆書きのように、一方向に進んでピッキングをするために、順番のソートができる工夫をする。よく使う部品はライン内ストアやダブルビン方式での補充も可能です。

 

視認性が最もよいのは、色の区分によるものですが、10種類以上になるとどの色がどんな意味かも分からなくなるので注意が必要です。次は形状による区分で、色と組み合わせることもできます。例えば赤の四角、青の丸、黄色の台形、緑のひし形などは、見た目ですぐに判別ができます。交通標識がよい事例なので、それを倉庫や工場内に使わない手はありません。その次が数字であり、これも長いと逆に混乱するので3桁か4桁がよいでしょう。

 

最後は文字で、できるだけ簡潔にまとめます。これらはいわゆるユニバーサルデザインであり、タバコ禁止のマークが○に左からの斜めの線があるのは、禁止=NOの文字をデザイン化したものです。でも8割の人は右斜めからと答えるのは、意味を知らないからであり、意味を理解するともう忘れることのない良い事例です。

 

さらには現物を接着剤で固定して、比較が現物でできることは作業の上でも安心ができます。これはシャドーボードの応用編であり、部品の写真を撮っても実際の大きさと違うような小物は、このような現物を貼り付けて現物合わせをします。実際にそれを見て、倉庫だけではなく工作室や製造ラインも横展開をしているが、間違いが少なくなったと好評です。

 

3.ミスがなくなると期待以上に生産性が向上する

このように視認性が向上することで探しやすくなり、余裕を持って作業ができるので、間違ったものをピッキングしたり、検数ミスがなくなっていきます。それは後工程の製造からのクレームがなくなることであり、その対応もしなくなるので、ますますピッキングの作業品質が向上して、生産性も向上していきます。

 

小さなミスを工場としてみると、膨大なムダを抱えていたのです。1回のピッキングミスで、すべての工数を計算してみるとビックリするような金額になっているはずなので、一度ご自分で計算してみてください。部品のコストよりも如何に人の工数が掛かっているかが見えてくるはずです。関係者にそのことを周知徹底して、簡単な改善でもミスとともにムダがなくなり、大きな成果となります。

 

次回に続きます。

 

【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載 

 

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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