工場の入りと出の物流を見直す レイアウトと物流(その3)

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生産マネジメント

 

1.工場の入り口と出口の改善は遅れている

工場改善の主な焦点は、目につく加工部門や組立部門に集中しています。また構内物流も工程間のつなぎが上手く行かないと、とたんにラインストップしたり仕掛が増えて身動きができなくなったりするので、それなりに改善が着手されています。

 

それでも多くの工場で、工場の入りと出の物流の改善が進んでいないことが見受けられます。その証拠に、入荷場と出荷場の5Sレベルが他の部門に比べて低いことが挙げられます。これらの場所の多くは人の目が行き届かない工場の裏手にあり、不要品だけでなくゴミ集めの場所かと思うような状態になっています。同様に工場の出荷部門もなかなか目につかないので、改善の手がつかないのでしょう。しかしこの出が良くないと工場の入りの機能まで損なわれることになります。そして工場内の構内物流にも影響していきます。

 

この入りと出の作業環境をもう一度確認してみましょう。多くの工場は、入りと出の場所は同じであることがほとんどであり、場所も狭いうえに作業も一時期に集中して混乱していることが多いものです。それらのパターンはほぼ決まっており、朝一番、夕方終業近く、さらに週末、そして月末には混乱の度合いは顕著になってきます。

 

そのような状態ですと、モノや伝票があちこち分散してしまい、その照合作業に時間が掛かってしまって、次々と受入確認、入庫作業、格納作業、出荷作業までが混乱を生んでしまいます。でも諺通りに喉元過ぎれば熱さを忘れてしまい、明日もまた同じムダな作業の繰り返しになってしまうのです。

 

残念なことに、改善のメスがなかなか入らない部門がこの入りと出の物流です。そこに集まってくる要因が多くありすぎて頭が錯乱してしまい、改善のしようがないと半分諦めてはいませんか。さあ気を取り直してみましょう。実は多くのムダがあり、そのムダを廃除していけば、多くの原価を低減できる宝の山でもある価値ある部門です。

 

入り口と出口がしっかりすれば、逆にスムースな工場内の流れを形成できるようになります。物流の問題は、多くの人がなかなか気づかないので、効果は相当あるものです。入りと出の流れが上手くいくと生産にリズムが出てくるので、工場内の仕掛は一定となり混乱もなくなっていくものなのです。その点工場も生物も一緒です。

 

2.物流の混乱は情報の出し方にあった

工場から発信される情報の結果が物流の混乱を招いていることが多いのようです。朝一番に集約した納入便、週初めにまとめた仕入れ先からの納入便、週末にまとめてしかも慌てて出した出荷便、納期遅れ対応の臨時便、月末尻上がり生産の結果の集中出荷などがあります。

 

毎日コンスタントに入荷・出荷があれば便利ですが、工場の入りと出の平均化・平準化の考え方は残念ながらほとんど見られません。入荷や出荷部門は、生産計画のようなものはないと嘆いておられる担当者や上司がたくさんおられますが、本当でしょうか。発注伝票があって入荷日が決まります。納入便の手配は誰がしているでしょうか。「昔から決まっていて、自分が決めたわけではないので知りません」という回答も返ってきますが、まるで他人事のような回答です。ご自分で納入や出荷の計画を設定したことをすっかり忘れられたようです。というよりも実際の現場の状況を把握していなかったのかもしれません。

 

発注行為がなければ納入はありません。原因があるから結果があるのです。もう一度発注計画から納入時間、納入便業者、納入回数、納入量、さらに出荷計画から出荷時間、出荷便業者、出荷回数、出荷量の現状調査をしましょう。合わせて作業人員、人員配置、作業方法、5Sを含めた作業環境などもヒアリングを行って実態調査します。

 

そして、まず一枚の紙に手描きで描き込んでいきます。最初はどこから描いて良いのかわかりませんが、収集した情報を整理してグラフ化したり、相関図やマップを描き込んだりするうちに、段々と整理できるようになります。描くことで脳が整理できるようになるのです。最初は手間を掛けますが、この手間が大事なのです。試行錯誤することで問題点の本質が明らかになってきます。ポイントは集中している時間や量などのバラツキがどこにあるかです。これが見えるとしめたものです。これができたら後は、ワイガア方式でやるとかなり素早く合意が取れて整理ができます。

 

3.平均化・平準化してバラツキを抑えていく

対策のポイントは、バラツキを抑えることです。集中している個所を山崩しして、谷を埋めるといった感じです。これを平均化といいます。入荷と出荷が集中している時間や場所を平均化して、ムラを少なくして、ムリを抑えて、ムダを取っていくのです。

 

具体的に例を挙げましょう。入荷便の平均化は、入荷場に管理板を設置して、入荷便がどの業者で、いつ来るかを表示します。裏表(青色と白色)が表示できて、鉄板にくっつく磁石板が便利です。今日は青色で入荷があると裏返しにして白色に換えます。そうするとまだ入荷をしていない便はまだ青色の表示ですぐにわかります。

 

これを始めてから荷降ろしの時間が掛かりすぎたり、場所が狭くなったり、不具合が色々と出てきます。そこからは納入業者や関係者がすぐに摺り合わせを行い、調整作業をしていきます。これを平準化といいます。平均化したもの...

生産マネジメント

 

1.工場の入り口と出口の改善は遅れている

工場改善の主な焦点は、目につく加工部門や組立部門に集中しています。また構内物流も工程間のつなぎが上手く行かないと、とたんにラインストップしたり仕掛が増えて身動きができなくなったりするので、それなりに改善が着手されています。

 

それでも多くの工場で、工場の入りと出の物流の改善が進んでいないことが見受けられます。その証拠に、入荷場と出荷場の5Sレベルが他の部門に比べて低いことが挙げられます。これらの場所の多くは人の目が行き届かない工場の裏手にあり、不要品だけでなくゴミ集めの場所かと思うような状態になっています。同様に工場の出荷部門もなかなか目につかないので、改善の手がつかないのでしょう。しかしこの出が良くないと工場の入りの機能まで損なわれることになります。そして工場内の構内物流にも影響していきます。

 

この入りと出の作業環境をもう一度確認してみましょう。多くの工場は、入りと出の場所は同じであることがほとんどであり、場所も狭いうえに作業も一時期に集中して混乱していることが多いものです。それらのパターンはほぼ決まっており、朝一番、夕方終業近く、さらに週末、そして月末には混乱の度合いは顕著になってきます。

 

そのような状態ですと、モノや伝票があちこち分散してしまい、その照合作業に時間が掛かってしまって、次々と受入確認、入庫作業、格納作業、出荷作業までが混乱を生んでしまいます。でも諺通りに喉元過ぎれば熱さを忘れてしまい、明日もまた同じムダな作業の繰り返しになってしまうのです。

 

残念なことに、改善のメスがなかなか入らない部門がこの入りと出の物流です。そこに集まってくる要因が多くありすぎて頭が錯乱してしまい、改善のしようがないと半分諦めてはいませんか。さあ気を取り直してみましょう。実は多くのムダがあり、そのムダを廃除していけば、多くの原価を低減できる宝の山でもある価値ある部門です。

 

入り口と出口がしっかりすれば、逆にスムースな工場内の流れを形成できるようになります。物流の問題は、多くの人がなかなか気づかないので、効果は相当あるものです。入りと出の流れが上手くいくと生産にリズムが出てくるので、工場内の仕掛は一定となり混乱もなくなっていくものなのです。その点工場も生物も一緒です。

 

2.物流の混乱は情報の出し方にあった

工場から発信される情報の結果が物流の混乱を招いていることが多いのようです。朝一番に集約した納入便、週初めにまとめた仕入れ先からの納入便、週末にまとめてしかも慌てて出した出荷便、納期遅れ対応の臨時便、月末尻上がり生産の結果の集中出荷などがあります。

 

毎日コンスタントに入荷・出荷があれば便利ですが、工場の入りと出の平均化・平準化の考え方は残念ながらほとんど見られません。入荷や出荷部門は、生産計画のようなものはないと嘆いておられる担当者や上司がたくさんおられますが、本当でしょうか。発注伝票があって入荷日が決まります。納入便の手配は誰がしているでしょうか。「昔から決まっていて、自分が決めたわけではないので知りません」という回答も返ってきますが、まるで他人事のような回答です。ご自分で納入や出荷の計画を設定したことをすっかり忘れられたようです。というよりも実際の現場の状況を把握していなかったのかもしれません。

 

発注行為がなければ納入はありません。原因があるから結果があるのです。もう一度発注計画から納入時間、納入便業者、納入回数、納入量、さらに出荷計画から出荷時間、出荷便業者、出荷回数、出荷量の現状調査をしましょう。合わせて作業人員、人員配置、作業方法、5Sを含めた作業環境などもヒアリングを行って実態調査します。

 

そして、まず一枚の紙に手描きで描き込んでいきます。最初はどこから描いて良いのかわかりませんが、収集した情報を整理してグラフ化したり、相関図やマップを描き込んだりするうちに、段々と整理できるようになります。描くことで脳が整理できるようになるのです。最初は手間を掛けますが、この手間が大事なのです。試行錯誤することで問題点の本質が明らかになってきます。ポイントは集中している時間や量などのバラツキがどこにあるかです。これが見えるとしめたものです。これができたら後は、ワイガア方式でやるとかなり素早く合意が取れて整理ができます。

 

3.平均化・平準化してバラツキを抑えていく

対策のポイントは、バラツキを抑えることです。集中している個所を山崩しして、谷を埋めるといった感じです。これを平均化といいます。入荷と出荷が集中している時間や場所を平均化して、ムラを少なくして、ムリを抑えて、ムダを取っていくのです。

 

具体的に例を挙げましょう。入荷便の平均化は、入荷場に管理板を設置して、入荷便がどの業者で、いつ来るかを表示します。裏表(青色と白色)が表示できて、鉄板にくっつく磁石板が便利です。今日は青色で入荷があると裏返しにして白色に換えます。そうするとまだ入荷をしていない便はまだ青色の表示ですぐにわかります。

 

これを始めてから荷降ろしの時間が掛かりすぎたり、場所が狭くなったり、不具合が色々と出てきます。そこからは納入業者や関係者がすぐに摺り合わせを行い、調整作業をしていきます。これを平準化といいます。平均化したものをさらにバラツキを抑えることです。納入便の調整は電話でもすぐに了解を得られることもありますが、やはり相手に会ってきちんと背景を説明して協力を願った方が後にしこりを残しません。納入業者も手待ちになると次の配達のこともあり、迷惑が掛かりますので協力を惜しまないでしょう。

 

荷降ろしをしたら、すぐに次工程に荷物が流れるようにしましょう。非常に重いものは別として、ハンドリフターやフォークリフトはなるべく使用しないで、荷物を台車に載せて運びます。そして次の便が入ってくるまでに、荷降ろし場をいつも空けて置くようにします。出荷場も同様に、出荷が集中しないように目で見る管理で異常を発見して、平均化そして平準化を繰り返していきます。でもこれでよくなったと思わないでください。いつも市場は動いていますので、3ヶ月ごとにオージットを上司とともに行って、常に見直しをしてください。入りと出がしっかりしないことには儲かる生産活動はできないのです。

 

次回に続きます。

【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載 

 

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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