MTシステム超入門(その17)

1.T先生との出会い

 T先生と初めてお会いした(というより、T先生を見た)のは、NEC勤務時代の1990年のことです。会社ではT先生から若手技術者に指導をいただいており、筆者はその発表会を聞きに行ったのです。最前列に腕組みをして座ったT先生が、発表にいろいろとコメントしていました。

 ある発表について私が質問をしました。「どれが制御因子で、どれが誤差因子でしょうか?」 即座にT先生が、「今の方の質問の通りで、因子の分類ができていません。」

 

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2.T先生の智のオーラ

 あるとき、一緒にMTシステムの研究をしていた北大教授から「T先生と会ってみたい」との要望があり、東京の首相官邸近くにあるT先生のオフィスにお連れしました。1時間ほどの面談でしたが、直後の教授の感想は「智のオーラを感じた」というものでした。「智はね、知識の知の下に日の付く智です」と教授の補足説明です。確かに、戦後の日本産業復興を率いたT先生の「知」には凄みがありました。

 

3.T先生と統計

 T先生は、統計のための統計を強く否定していました。それは理論主義を否定し、現場主義を貫いたとでも言いかえることができます。 ある研究会で怒っておられたことが、記憶に残っています。発表者が「正規分布を前提とすると...」と言ったことに対してです。統計学では正規分布は重要な事項ですが、それは認めつつも、理論だけを正面に据えた議論には、T先生は容赦なく「否決」でした。

 筆者が1990年にお会いして以降、T先生がいわゆる統計学を肯定的に語られた印象がありません。ただ、T先生は統計学の専門家中の専門家でした。米国の学者と論争したこともあるそうです。  日本の統計学者(特に実験計画法と呼ばれる統計理論)の間では、「田口先生に反論してもよいが、足を向けて寝てはいけない」と言われていたそうです。

 

4.MITでのシンポジウム

 T先生はMIT (Massachusetts Institute of Technology)とも深い交流がありました。1999年にMITで開催されたRobust Engineering(品質工学の英語表現の一つ)シンポジウムでは、T先生が米国企業や大学から非常な尊敬を受けていることを、肌で感じました。多くの方々がT先生の講演に聞き入り、懇親会では言葉を交わそうと列をなしていました。 ちなみに、T先生は1997年に全米自動車殿堂入りを果たしました。

 

5.9・11テロ直後

 2001年9月の同時多発テロの直後、T先生は渡米しました。毎年この時期に行われる米国での品質工学関係のシンポジウムに出席するためです。 テロ後しばらくの間、日本企業は海外渡航を自粛あるいは禁止しました。覚えておられる方も多いと思います。田口先生は帰国されてからこうおっしゃいました。「今が一番安全ですよ。世の中の原理です。空港はおまわりさんだらけです」

 この渡米の際、T先生はMITで「民間航空機を使ったテロをどう防ぐか」の議論をし、極めて単純明快な解答を提案してきたそうです。 飛行機をコクピットでは操縦できないようにする、ということです。どうやって・・・?詳しい議論があったようですが、秘密のようです。すでに各国はこのアイディアを適用しているかもしれません。


この記事の著者

手島 昌一

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