MTシステム超入門(その14)

54.統計学者の人工知能ぎらい

 マハラノビス距離のように、パターン認識に利用される統計数理は多いのですが、1970年代以降のある期間は統計学者にとって暗黒時代だったという方がいます。ニューラルネットワーク(ANN)という人工知能技術が「夢を実現させる理論」として、まばゆいほどのスポットライトを浴びたのです。生物の神経細胞の働きを模して認識をする理論で、統計を使わない文字通りの「人工」知能です。大学などのパターン認識研究では、助成金のほとんどがANNに回され、統計を理論の中心におく研究にはまわってこなかったのです。

 人工知能(Artificial Intelligence : AI)とは、人間の判断や予測作業をコンピュータに代行させる情報処理技術のことです。その意味では、技術の中身がANNであっても統計であっても構わないはずです。しかし、多くの人は「神経細胞にヒントを得た技術」の方が、その名前にふさわしいと感じるでしょう。また、「ANNには統計は使っていないのか?」との疑問もあるでしょう。使っていないことはありませんが、考え方の骨組みが相当に違っています。

 

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55.ニューラルネットワーク(ANN)とは

 英語ではArtificial Neural Network と呼ばれる技術は、コンピュータの中に疑似神経細胞を作る技術です。あることを記憶すると細胞間の結合状態が変化することは知られていますので、その「変化のルール」を持たせます。  生物を模擬するわけですから、生物と同様に「個性」を持ちます。覚えるスピードが遅いが、覚えた後はなかなか頼りになるANNがある一方で、さっさと覚えたのはいいが、そそっかしくてよくミスをするANNができたりします。

  ANNの学習は、学習(教師)データを何度も何度も見せて「神経回路の構造」を変化させます。変化に関する巧みなルールが発明され、それ以降「夢を実現させる理論」として世界中の研究者が参加してきました。ただ、学習を終えたANNが「なぜその結合構造、結合回路となっているか」は分かりません。覚えた結果としての構造がそこにあるだけです。人間の脳も同じですから、仕方がないのかもしれません。

 ANNはデータが1セットであっても学習します。たとえば、数字の5というパターンを1個だけ用意して「これを覚えなさい」と命じることができます。そして、5に似たパターンや他のパターンを見せると、結果を答えてくれます。ANNは「教師データ近傍のパターンも覚える」と言えます。

 

56.MTとニューラルネットワークの比較

 以上ANNに対してMTでは、複数のパターンを用意する必要があります。MTでは「学習するパターンのばらつきやバランス(相関)」の情報を必要とするため、複数組のデータが必要だからです。 いずれの技術にも、それぞれ良いところがありますし、恐らくは「問題によって使い分ける」ということになります。上述のように、ANNは1組の学習データだけでも計算してくれますが、学習後の構造がわからないのに対してMTは「相関の集まり」という明快な構造を持っています。

  一番大切な「認識能力」はどうか?この疑問への答は「両方でやってみて、良い方を使う」という回答しかないでしょう。筆者は経験上MTをお勧めしますが、それがどこまで客観的かは分かりません。


この記事の著者

手島 昌一

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