MTシステム超入門(その16)

 前回の3つの計算手法、すなわちMT法・標準化誤圧法・RT法は、見分けたり分類したりするために利用されます。文字の認識や、健康か病気か、あるいは工場が正常に動いているかどうか、などの判定です。

 一方今回説明するのは、予測に利用されるMTシステムの手法です。 予測とは、明日の気温や降水量、明日の商品売上などの“予測値”を計算で求める手法です。予測値は、予測時点までに得られている複数の情報を基に計算されます。自然現象や経済現象のほか、製造工程では「この条件なら、これくらいの強度の材料が出来る」などを予測することに利用できます。

 

61.TS法

 この計算手法はTaguchi Schmidt法の略で、シュミットさんという方の数理を用いた計算方法です。M距離の親戚のような計算方法なのですが、T先生は「技術者の意図が反映しやすい」との考えから、この計算方法を提案しました。ただきわめて難しいので、現在ではほとんど使われていません。

 せっかく読んでいただいて「使われていません」とは申し訳ないのですが、7種類の計算手法を一通りご紹介します。

 

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62.MTA法

 Mahalanobis-Taguchi-Adjoint(またはAdjugate)法の略で、MT法の計算上の制約を少しでも助けようとして提案されました。高校時代の数学で、tan90°=∞ と習いましたが、同様のことがMT法でも発生し、数理では行き詰ってしまいます。そうした制約を除こうとしたわけです。この方法が提案されたとき、多くの関係者はT先生のすごさを感じました。知識と知能の限りを尽くして課題に対峙しようという姿勢、風圧を感じたのです。

 物理学者が数理を扱うときに突き当たる壁の一つに、「ゼロや無限の扱い」があり、実はMT法でも同じ壁があります。 MT法では割り算計算が出てきますが、データがある性質を持つとき、ゼロで割るという状況が起こります。楕円で言うなら、短軸の幅がゼロになるということです。そこがゼロになると、楕円ではなく「直線」です。さあ、どうして扱ったらよいものか、と困ってしまうのです。図をご参照ください。MTA法は、その一角を解決しようと提案された方法です。

 ある数を無限で割るとゼロとなり、逆にある数をゼロで割ると無限になります。 こうした値(あるいは概念)は物理学でも悩みのタネのようです。物理学は自然界や宇宙という「実際に存在すること」を数理で語るのですが、無限はやっかいらしいのです。“繰り込み理論”は、やっかいさから解放されるための理論です。たとえば、100万円というお金を有利子で無限年預けたときの元利合計は無限円です。その中の利子分も無限円です。しかし、(無限年の元利合計)-(無限年の利子)=100万円は成立します。これは“うまいやり方”として、朝永振一郎博士が提案したようです。

 MT法に存在する“無限”の問題にT先生が挑戦し、見出した解決法の一つがMTA法です。MTA法はMT法の制約を助けたのですが、全部ではありませんでした。そのため、この方法も現在では活用する人は少ない状況です。

 

63.T法(1)とT法(2)

 MTシステムの7種類の計算方法の6番目はT法(1)、7番目はT法(2)と呼ばれる方法です。 これらは、“予測の方法”ですので、先ほど説明したように、明日の売上予測など利用されます。つまり、似ているかどうかの判別ではありません。T法(1)と(2)の違いは、計算の軸足をどこに置くかの違いです。詳しくは専門的になりますので割愛します。

 ただ少しだけ余談があり、(2)のほうは厳密な定義式が私たちには公開されていません。公開の前に、T先生が病気になられたためです。原案のような式は見たことがあるのですが、「二乗をどこに持ってきたらよいか?」でT先生は迷っており、考えている途中だったようです。

 

64.MTや統計やニューロのどれを使うか

 MTシステムには分類に使われる手法と、予測に使われる手法があり、それぞれに“競合する従来技術”があります。「どれを使ったらいいの?」との疑問を、多くの方は持つでしょう。ただ、どれかから始めなければ前に進まないのも事実です。また、どれを使ったとしても「今まで分からなかったデータの性格が分かった」ということになるでしょう。

 MTシステムからいかがでしょうか?一番使い易いと思いますし、本を見ながら、Microsoft Excelで計算してみることもできます。


この記事の著者

手島 昌一

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