技術を伝えるためには 技術伝承とは(その2)

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  技術伝承
 

【技術伝承とは 連載目次】

 前回の技術伝承とは(その1)に続いて解説します。 
 

(3) 技術を伝えるために必要なこと

 
 技術を伝える場合、まず暗黙知の状態から技術を識別しますが、暗黙知状態から顕在化・表出されている部分と潜在化している状態を可視化することから進める必要があります.顕在化・表出している技術とは、言語・数式・フローなどで表現可能な情報です。
 
 潜在化した暗黙知状態の技術とは、技術者が頭の中で考えている思考プロセスなどであり、INPUT と OUTPUT 以外は全てブラックボックスとなっている情報です。これを可視化するには、制約や前提条件の元で技術者が悩み、どのように意思決定したかという技術者の思考プロセスとその判断材料を可視化する必要があります。そのうえでその思考プロセスを標準化しないと共有 (ナレッジマネジメント化) することはできません。
 

 

 顕在化している技術を伝える方法には、整理体系化した知識や情報を集合教育で伝えたり、またマニュアル化し言語として伝えたりする方法、さらに再現性を高めた作業を自動化や機械化して伝える方法があります。潜在化している技術を伝えるための方法としては、OJT で伝える方法が一般的ですが、それらを物語として考えるという方法もあります。
 
 技術者が考えた全ての思考プロセスを物語として描くことで、継承者は類似経験と同じような知識を積むことができるようになります.この方法は潜在化した技術を伝える際に有効な方法ではありますが、全ての技術を物語化するには限界があり、また読み手に文化や習慣などの共通の土台がないと、思った通りに伝えることは難しいのです。
 
 このように技術を伝えるためには、技術者の思考プロセスをいかに可視化し形式知化していくか、また技術者の中に潜在化している技能を如何に効率的に伝えていくかが求められます。
 

(4) 正しく伝わったということ

 
 次世代へ正しく技術を伝えることができたか否かの判断は、継承された者が伝える側と同じ条件で同じ考えのもとで行動し、同じ結果を得られるのであれば、正しく伝わっていることになります。しかし、どんな作業でも環境や条件が違えば進め方やアウトプットも違ってきますい。また伝承者によっては、自分独自のやり方を生み出しているケースが多く、そのような場合、伝承者により教わることが異なるため継承者が混乱する場合が多く見られます。
 
 そのようなことにならないためには、熟練者による違いを認識・共有したうえで作業を標準化し、熟練者の勘や経験などのあいまいな部分を定量化します.そうすることで初めて、継承者に評価可能な内容を伝達することができ、ま...
 
  技術伝承
 

【技術伝承とは 連載目次】

 前回の技術伝承とは(その1)に続いて解説します。 
 

(3) 技術を伝えるために必要なこと

 
 技術を伝える場合、まず暗黙知の状態から技術を識別しますが、暗黙知状態から顕在化・表出されている部分と潜在化している状態を可視化することから進める必要があります.顕在化・表出している技術とは、言語・数式・フローなどで表現可能な情報です。
 
 潜在化した暗黙知状態の技術とは、技術者が頭の中で考えている思考プロセスなどであり、INPUT と OUTPUT 以外は全てブラックボックスとなっている情報です。これを可視化するには、制約や前提条件の元で技術者が悩み、どのように意思決定したかという技術者の思考プロセスとその判断材料を可視化する必要があります。そのうえでその思考プロセスを標準化しないと共有 (ナレッジマネジメント化) することはできません。
 

 

 顕在化している技術を伝える方法には、整理体系化した知識や情報を集合教育で伝えたり、またマニュアル化し言語として伝えたりする方法、さらに再現性を高めた作業を自動化や機械化して伝える方法があります。潜在化している技術を伝えるための方法としては、OJT で伝える方法が一般的ですが、それらを物語として考えるという方法もあります。
 
 技術者が考えた全ての思考プロセスを物語として描くことで、継承者は類似経験と同じような知識を積むことができるようになります.この方法は潜在化した技術を伝える際に有効な方法ではありますが、全ての技術を物語化するには限界があり、また読み手に文化や習慣などの共通の土台がないと、思った通りに伝えることは難しいのです。
 
 このように技術を伝えるためには、技術者の思考プロセスをいかに可視化し形式知化していくか、また技術者の中に潜在化している技能を如何に効率的に伝えていくかが求められます。
 

(4) 正しく伝わったということ

 
 次世代へ正しく技術を伝えることができたか否かの判断は、継承された者が伝える側と同じ条件で同じ考えのもとで行動し、同じ結果を得られるのであれば、正しく伝わっていることになります。しかし、どんな作業でも環境や条件が違えば進め方やアウトプットも違ってきますい。また伝承者によっては、自分独自のやり方を生み出しているケースが多く、そのような場合、伝承者により教わることが異なるため継承者が混乱する場合が多く見られます。
 
 そのようなことにならないためには、熟練者による違いを認識・共有したうえで作業を標準化し、熟練者の勘や経験などのあいまいな部分を定量化します.そうすることで初めて、継承者に評価可能な内容を伝達することができ、また正しく伝わったか否かを判断することができます。
 
 そのような基準がない状態で、正しく伝わったか否かを判断する場合、恣意的・感覚的にならざるを得ないのです.正しく伝わったか否かも判断が難しくなるため、基準となる状態を可能な限り定量的に整備しておくことが正しく伝えるためには特に重要となります。
 
 
 次回に続きます。
 

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この記事の著者

野中 帝二

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