中小メーカ向け経営改革の考察(その19) 経営方針と市場開拓

1.量産と少量・単品生産の差異による発想の切り替え

 前回のその18に続いて解説します。量産性の製品は軌道に乗り出すとアジア諸国の低コストで生産できる拠点に移転していくようです。このような事は中小企業の経営者は知り尽くしているでしょうが、実際面では量産性の製品を生産する形態から離脱して、少量・単品生産に適合した経営のシステムを創り上げることについて、依然として迷いのある企業もあります。
 
 しかし、量産品に期待できなければ、少量・単品生産で事業を維持できる生産技術を開拓しなければなりません。その生産方式の開発に取り組む事が不可欠です。
 
 この具体策は段取り替え時間の短縮であり、それを可能にするために、金型、ジグの開発、更に、設備の周辺機器の開発及び作業法の改善です。
 
 最近の傾向として、顧客は脱落する企業の代わりに、改善に取り組み意欲的に事業を行っている企業に生産を依頼したいと探している状況が見られてきているので、この機会を利用して思い切った発想の転換を考えましょう。
 
 少量・単品生産で短納期に力を入れて営業活動を行うことで、受注引き合いが来る傾向も見られています。そのように僅かな変化に着目して、その変化に乗っていく発想を持つようにすれば、それが契機になって道が開けてくる可能性があります。課題は、対象にする事業や技術の分野を決めることと、その生産コストを下げて利益を生み出す経営形態を開発することです。
 
 技術の蓄積がない事を理由にする必要はありません。少しでも保有する技術に関連性がある事が確認できれば自信がなくても取り組み、活路を切り拓いた企業は少なくありません。開発を独自に行うには時間がかかって間に合わないような時は、交流のある仲間に相談したり、公共機関などに紹介者を求めたりすることで道が開ける場合もあるようです。
 

2.開発テ-マと市場開拓の問題

 独自に開発した製品の販売に関して、中小企業で販売網を持つことは困難として、代理店に販売活動を委ねている場合も多いようです。扱い品の内容として、その都度仕様が一部異なる開発品に近い商品を販売している企業と、一定の規格品を販売する企業では問題の発生の仕方が異なってきます。その状況を記述します。
 

(1)受注の都度品質仕様が一部異なる製品

 製品の基本的な構造は同じでも、客先の使用条件が異なるために、構造の一部を特別の仕様にする要求が出されるような製品を代理店販売にしている場合の問題点を考えてみましょう。
 
 代理店から連絡を受けて仕様の打合せに出かけるような関係を代理店との間で維持している場合と、仕様の交渉を代理店任せにしている場合があります。
 
 後者の場合は正確な仕様の把握ができないので何回も変更が発生し、必要以上に費用がかさむようです。このような問題が発生するため、生産業者によっては自己独自に販路開拓を行った上で、その地域に所在していて代理店に相応しいと考えられる複数の商社を納入先に紹介してもらい、生産業者自身が個別に接触して代理店契約を結んでいる例があります。この地域での受注情報の提供と販売だけを代理店の役目にし、仕様の決定は生産業者が独自に顧客と行うことにしているのです。独自に販売先を開拓した上での代理店契約であるから、生産業者に有利な契約を結ぶことができているようです。
 

(2)規格化された製品の場合

 規格化された製品を代理店に販売委託する場合、販売を全面的に依存することには問題はないようです。ただ、納入品の使用後の意見を求めることについては、直接納入先と接触できるように、納入先のリスト提出をするよう決めておくことが重要です。
 
 それにより、製品の問題点や製品に対する現場の意見が収集でき、納入品の改善点も判るし、次の製品シリ-ズを開発するヒントも得られるようです。このような情報収集が目的であるから、代理店にはリストアップした納入先以外に直接販売することは絶対に行わないよう契約書で確認をとります。納入先から情報が収集できなければその後の開発テ-マを得ることはできず、花火のようにその時限りの製品開発で終わる場合が珍しくありません。後発の企業が模倣品を出してくるような場合でも、それに打ち勝つ対策を講じることができず、後発企業に市場を奪われる例が見られます。
 

(3)取引先の観察から開発テ-マを決める場合

 開発テ-マは取引先の観察から得られる場合が多く見られます。顧客を訪問した際に、顧客の動向を絶えず観察し、「今後何をしなければ受注維持ができなくなるのか」という発想を常に鍛えるよう自己啓発する中から得られる場合が多いようです。
 
 観察するように心掛けていると、顧客との会話でもその一端が何かの形で現れてくるために、顧客もそれに反応して「このようなことはできないか」などと打診があり、話が発展していったりします。中小企業によっては、取引先と接触する機会はすべて情報収集に有効利用することと考えて、納品する時にも必ず倉庫の中などを見て、どのような部材の動きがあるのか情報収集を行わせ、受注開拓の種を漏らさないようにしている例があるようです。
 

この記事の著者

新庄 秀光

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