方針展開の不連続性による損失と対策 中小メーカ向け経営改革の考察(その17)

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◆方針展開と小集団改善活動に関する問題と対策

 前回のその16に続いて解説します。経営方針・事業計画・目標管理の関連性を踏まえず、それぞれに改善の課題を決める事で本来狙わなければならない企業の将来像(代表者の夢、志)に沿った活動をすることから離れ、方向性を見失って実施しなければならない課題が増し、どの課題も中途半端な処理に終わり形式的な発表会になって、目標の達成感を味わう事がなく空しさが募ります。そのような事態になることを避けるために、次のような取り組みをすると良いでしょう。
 
 各部門に課された目標管理の課題を達成させるために、職場内の小集団に細分化した改善テーマを割り当てることになります。コストダウン、不良率の低減、リードタイムの短縮など、現場で実際に発生している損失の内容と関連付けることで改善のテーマは見つけ出せます。
 

◆コストダウン対策との関連付け

 リ-ドタイムを短縮することは直ちにコストダウンに強い影響を及ぼしますが、それ以外のコストダウンについて考えると、過大在庫の問題があります。
 
(1)原材料の在庫
(2)部品・調達品の在庫
(3)製品・仕掛品の在庫
(4)棚卸し作業省略の管理 
 
 この様に分類して在庫対策を講じる必要があります。それぞれに在庫高と目標値を決める事が大切で、一括して在庫高を計上しても有効な対策を講じることはできません。
 
(1)原材料の在庫
 
 材料によってはロット単位で発注しないと受け入れられないものがあります。そのような場合には、資材の担当者は品名、最低のロットサイズ、納期、価額、発注先を一覧表にして、営業と設計の担当者に配布します。営業は納期、受注単価の交渉時に利用します。設計は製品価額と製品仕様の面から利用します。
 
 経営層では、数個しか必要としないのにロット単位で多量発注することの可否判断に利用します。ロット単位で発注した原材料の管理は、日常出入庫しているものとは別途に管理します。
 
 原材料の在庫品は、現品票(月日、出入庫数、現在量及び扱者名を記載)を現物に添付し、倉庫で現物管理を行います。出入庫の間隔と月間の使用量から調達の最適方法を決めます。最低在庫高は月間の平均使用量から基本的な数量を決め、それに調達期間に消費される数量を加算して目標値とします。売上高の変動に応じて平均使用量は変化させます。ただし、即納品に関しては、2日間の平均消費量を最低在庫量とし、発注依頼票を最低在庫量の境目に差しておき、特別の処置を講じなくても発注できるようにします。
 
(2)部品・調達品の在庫
 
 調達品・部品の場合、倉庫に保管するものと製造現場に保管するものに区別して、最低在庫高の目標値を決めて管理します。製造現場には当日の生産に必要な数量以外は保管しないようにします。現場に保管する事を認めると、在庫高が確実に増加するだけでなく、現場の作業域に置かれるものが増えてきて、作業性を確実に悪くします。
 
 内製品を外注に振り向ける変更の過程にある間は、外注品の在庫管理は別途に行い、変更のない調達品と区別して在庫管理を行います。1ヶ月間の売上高に応じて使用される量を基準にし、在庫管理します。月間の売上高から在庫高目標を決めて、この目標に基づき別途に管理しないと、適正な在庫管理はできません。
 
(3)製品・仕掛品の在庫
 
 製品・仕掛品を始め調達品の在庫が増えるのは、概ね段取り替え時間が長い生産ラインに起因します。段取り替え作業の改善を行って損失時間の発生を防止しないと、現場が勝手に生産を余分に行い、少量の受注に備える考えが出てきます。
 
 また、生産ラインの同期化が図られていないと仕掛品が増加する事も避けられなくなります。このような理由から段取り替え作業の時間短縮を研究する事は、製品・仕掛品の在庫高削減のためにも重要な課題です。
 
(4)棚卸し作業省略の管理
 
 原材料、調達品、部品の在庫はコンピュ-タに登録されているから、それを見ればよい、との感覚で在庫管理を行っている企業が多いようです。しかし、実際に現場を調べてみると、実在庫高とコンピュ-タに登録されている在庫高が一致する事は少ないため、欠品の発生を恐れ、念...

◆方針展開と小集団改善活動に関する問題と対策

 前回のその16に続いて解説します。経営方針・事業計画・目標管理の関連性を踏まえず、それぞれに改善の課題を決める事で本来狙わなければならない企業の将来像(代表者の夢、志)に沿った活動をすることから離れ、方向性を見失って実施しなければならない課題が増し、どの課題も中途半端な処理に終わり形式的な発表会になって、目標の達成感を味わう事がなく空しさが募ります。そのような事態になることを避けるために、次のような取り組みをすると良いでしょう。
 
 各部門に課された目標管理の課題を達成させるために、職場内の小集団に細分化した改善テーマを割り当てることになります。コストダウン、不良率の低減、リードタイムの短縮など、現場で実際に発生している損失の内容と関連付けることで改善のテーマは見つけ出せます。
 

◆コストダウン対策との関連付け

 リ-ドタイムを短縮することは直ちにコストダウンに強い影響を及ぼしますが、それ以外のコストダウンについて考えると、過大在庫の問題があります。
 
(1)原材料の在庫
(2)部品・調達品の在庫
(3)製品・仕掛品の在庫
(4)棚卸し作業省略の管理 
 
 この様に分類して在庫対策を講じる必要があります。それぞれに在庫高と目標値を決める事が大切で、一括して在庫高を計上しても有効な対策を講じることはできません。
 
(1)原材料の在庫
 
 材料によってはロット単位で発注しないと受け入れられないものがあります。そのような場合には、資材の担当者は品名、最低のロットサイズ、納期、価額、発注先を一覧表にして、営業と設計の担当者に配布します。営業は納期、受注単価の交渉時に利用します。設計は製品価額と製品仕様の面から利用します。
 
 経営層では、数個しか必要としないのにロット単位で多量発注することの可否判断に利用します。ロット単位で発注した原材料の管理は、日常出入庫しているものとは別途に管理します。
 
 原材料の在庫品は、現品票(月日、出入庫数、現在量及び扱者名を記載)を現物に添付し、倉庫で現物管理を行います。出入庫の間隔と月間の使用量から調達の最適方法を決めます。最低在庫高は月間の平均使用量から基本的な数量を決め、それに調達期間に消費される数量を加算して目標値とします。売上高の変動に応じて平均使用量は変化させます。ただし、即納品に関しては、2日間の平均消費量を最低在庫量とし、発注依頼票を最低在庫量の境目に差しておき、特別の処置を講じなくても発注できるようにします。
 
(2)部品・調達品の在庫
 
 調達品・部品の場合、倉庫に保管するものと製造現場に保管するものに区別して、最低在庫高の目標値を決めて管理します。製造現場には当日の生産に必要な数量以外は保管しないようにします。現場に保管する事を認めると、在庫高が確実に増加するだけでなく、現場の作業域に置かれるものが増えてきて、作業性を確実に悪くします。
 
 内製品を外注に振り向ける変更の過程にある間は、外注品の在庫管理は別途に行い、変更のない調達品と区別して在庫管理を行います。1ヶ月間の売上高に応じて使用される量を基準にし、在庫管理します。月間の売上高から在庫高目標を決めて、この目標に基づき別途に管理しないと、適正な在庫管理はできません。
 
(3)製品・仕掛品の在庫
 
 製品・仕掛品を始め調達品の在庫が増えるのは、概ね段取り替え時間が長い生産ラインに起因します。段取り替え作業の改善を行って損失時間の発生を防止しないと、現場が勝手に生産を余分に行い、少量の受注に備える考えが出てきます。
 
 また、生産ラインの同期化が図られていないと仕掛品が増加する事も避けられなくなります。このような理由から段取り替え作業の時間短縮を研究する事は、製品・仕掛品の在庫高削減のためにも重要な課題です。
 
(4)棚卸し作業省略の管理
 
 原材料、調達品、部品の在庫はコンピュ-タに登録されているから、それを見ればよい、との感覚で在庫管理を行っている企業が多いようです。しかし、実際に現場を調べてみると、実在庫高とコンピュ-タに登録されている在庫高が一致する事は少ないため、欠品の発生を恐れ、念のため余分に調達し過大在庫になっている例があります。資材類の管理を徹底し、現品票の在庫高とコンピュ-タの登録在庫高が一致すれば棚卸し作業の必要性はなくなり、余分な作業による時間損失は減少します。
 
 実際に3,000品種を超える在庫部品を持つ企業でそのような取り組みをしている例があります。この企業では実在庫高とコンピュ-タの登録高が一致しない事が判った際に、その品種の保管されている棚に関しては棚卸し作業を行わせます。その後、一致する期間が続くようになったと認められた段階で、棚卸し不用となります。担当者は棚卸し不用に認定される事で業務が簡略化されるため、それを目標にして在庫管理業務の改善に取り組むことになります。
 
 在庫管理を確実にするには、出入庫の度に現品票の記載を確実に行い、記入漏れをなくすことです。記入漏れが発生しないように筆記具を要所ごとに吊り下げること、巡回者を決めて、記入漏れが出た時に注意すること、これらの簡単な事を繰り返すことで確実に記入する習慣を定着させます。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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