経営システムの活性化を阻む事例  中小メーカ向け経営改革の考察(その4)

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 前回のその3続いて解説します。経営システムの活性化を図るには、既に記述したように活性化を阻害している主要な要因を明らかにし、それらが繰り返し発生しないような対策を講じる必要があります。ISO9001の認証取得やTQM活動の導入を行い、経営(品質)システム向上に努めているが、形式的な運用に終わっていて、経営システムが機能化、活性化されていない事例を実に多く見かけます。特に指摘したいことは、事業展開に際し最も重要である経営方針が最も軽く扱われている現実があり、そのために派生している問題が非常に多いことです。
 
◆経営システムの活性化、阻害要因と、損失が発生している状況
 
1.代表者の立場と経営リスクを曖昧にする損失
2.経営方針と事業計画の関連性が欠けているための損失
3.現場を巡回しないために問題点が潜在している損失
4.誤った自主性の尊重により発生する損失
5.経営方針に沿った能力開発とそれに関連付けた評価を行わないために蒙る損失
 
 上記の、2項、1項は、第1回で解説しましたので、今回は、3項から5項の解説です。
 

3.現場巡回点検を行わないことによる損失

 品質問題等の再発防止対策を記入する対策書が形式的なものでしかないために、類似の問題が繰り返し発生し、損失が日常化している例が見られます。対策書に対策をただ記入する程度で済まされていて、その対策が適正であったのかを確認する事が不足しており、かつ、対策を確認した後で作業手順書などに落とし込み、普及の指導を行い、定着するように処置が講じられている企業は少ないため、類似問題の再発防止が徹底しないのです。
 
 これらの状況は報告会では見つけ出し難いが、現場点検を実施すると直ちに判ります。代表者は品質管理の責任者を伴い、定期的に現場診断を行い、隠れた問題の発掘に努めるべきです。この事は問題点を潜在させない組織を育成する上で、重要です。代表者が現場巡回を行わないと、会議で問題点を質した時に、形式的な回答でその場を繕われ、問題点を掘り下げるに至りません。「現場で確認しているのだから、いい加減な事を言うな」と指摘する代表者の存在は重要です。
 

4.個の尊重と資質向上策の解釈を誤ることで蒙る損失

 従業員に対する思いやりの深い、人間性の豊かな中小企業の代表者を私は多く見ています。それが具体的な形で現れてくるのが個の尊重、つまり、自主性の尊重です。先ほど示した経営方針に企業の将来展望を描き出し、事業計画に展開していく運用の過程でそれが現れます。個の尊重は大切なことですが、基礎を体得し問題解決の実績を挙げている熟練した従業員と、基礎を習得中の従業員では、扱い方を変えなければなりません。両者に対して同じように個の尊重を図ると、人材育成が進展しなくなるだけでなく、時には、職場内に好ましくない影響を及ぼすことになるからです。たとえば、基礎をきちんと体得していない中習者の従業員に対して個の尊重が過ぎると、わがままなになり、当人のためにならないだけでなく、問題再発防止策を講じるための応用力がまだ発揮できないので、会社に対して損失を発生させます。
 
 熟練者に対する扱い方について中習者が「彼らに対しては優しく、私達には厳しい」と不満の声を漏らす事があります。このような場合には「目標管理の趣旨に沿って、問題解決の実績を上げ、一人前と見なされる人物になること、及び基礎的な事項を体得していると見なされること、それらを満たす事で扱い方を同じにする」と説明し、問題に取組む場合の基本を体得する目的意識を持つよう導くべきです。
 
◆問題解決に必要な基本的な手順
 
a.現状の中から本質的な問題点を指摘できること。
b.問題解決のために必要な現状調査方法を独自に立案できること。
c.調査結果と現実を見極めて原因把握ができること。
d.問題解決のための活動計画を立案できること。
e.活動内容に関する記録の方法が立案できること。
f.活動の経...
 前回のその3続いて解説します。経営システムの活性化を図るには、既に記述したように活性化を阻害している主要な要因を明らかにし、それらが繰り返し発生しないような対策を講じる必要があります。ISO9001の認証取得やTQM活動の導入を行い、経営(品質)システム向上に努めているが、形式的な運用に終わっていて、経営システムが機能化、活性化されていない事例を実に多く見かけます。特に指摘したいことは、事業展開に際し最も重要である経営方針が最も軽く扱われている現実があり、そのために派生している問題が非常に多いことです。
 
◆経営システムの活性化、阻害要因と、損失が発生している状況
 
1.代表者の立場と経営リスクを曖昧にする損失
2.経営方針と事業計画の関連性が欠けているための損失
3.現場を巡回しないために問題点が潜在している損失
4.誤った自主性の尊重により発生する損失
5.経営方針に沿った能力開発とそれに関連付けた評価を行わないために蒙る損失
 
 上記の、2項、1項は、第1回で解説しましたので、今回は、3項から5項の解説です。
 

3.現場巡回点検を行わないことによる損失

 品質問題等の再発防止対策を記入する対策書が形式的なものでしかないために、類似の問題が繰り返し発生し、損失が日常化している例が見られます。対策書に対策をただ記入する程度で済まされていて、その対策が適正であったのかを確認する事が不足しており、かつ、対策を確認した後で作業手順書などに落とし込み、普及の指導を行い、定着するように処置が講じられている企業は少ないため、類似問題の再発防止が徹底しないのです。
 
 これらの状況は報告会では見つけ出し難いが、現場点検を実施すると直ちに判ります。代表者は品質管理の責任者を伴い、定期的に現場診断を行い、隠れた問題の発掘に努めるべきです。この事は問題点を潜在させない組織を育成する上で、重要です。代表者が現場巡回を行わないと、会議で問題点を質した時に、形式的な回答でその場を繕われ、問題点を掘り下げるに至りません。「現場で確認しているのだから、いい加減な事を言うな」と指摘する代表者の存在は重要です。
 

4.個の尊重と資質向上策の解釈を誤ることで蒙る損失

 従業員に対する思いやりの深い、人間性の豊かな中小企業の代表者を私は多く見ています。それが具体的な形で現れてくるのが個の尊重、つまり、自主性の尊重です。先ほど示した経営方針に企業の将来展望を描き出し、事業計画に展開していく運用の過程でそれが現れます。個の尊重は大切なことですが、基礎を体得し問題解決の実績を挙げている熟練した従業員と、基礎を習得中の従業員では、扱い方を変えなければなりません。両者に対して同じように個の尊重を図ると、人材育成が進展しなくなるだけでなく、時には、職場内に好ましくない影響を及ぼすことになるからです。たとえば、基礎をきちんと体得していない中習者の従業員に対して個の尊重が過ぎると、わがままなになり、当人のためにならないだけでなく、問題再発防止策を講じるための応用力がまだ発揮できないので、会社に対して損失を発生させます。
 
 熟練者に対する扱い方について中習者が「彼らに対しては優しく、私達には厳しい」と不満の声を漏らす事があります。このような場合には「目標管理の趣旨に沿って、問題解決の実績を上げ、一人前と見なされる人物になること、及び基礎的な事項を体得していると見なされること、それらを満たす事で扱い方を同じにする」と説明し、問題に取組む場合の基本を体得する目的意識を持つよう導くべきです。
 
◆問題解決に必要な基本的な手順
 
a.現状の中から本質的な問題点を指摘できること。
b.問題解決のために必要な現状調査方法を独自に立案できること。
c.調査結果と現実を見極めて原因把握ができること。
d.問題解決のための活動計画を立案できること。
e.活動内容に関する記録の方法が立案できること。
f.活動の経過についての評価ができること。
g.評価に基づいて反省点を導き出し技術ノウハウとして蓄積すること
 
 以上のような問題解決に必須の事項を体得することが不可欠です。思いやりのある優しい代表者の場合、厳しく人を扱うのが苦手で、結果として放任になっているのに、それが自主性を尊重しているのだと間違った解釈をしている場合が見られます。
 

5.業績評価を主目的にした人事考課による損失

 人事考課で成果を問う事が主目的になり、人材育成の視点が欠如すると、向上心を刺激する作用が働かず、要領の良い体裁を繕う従業員が増加することになります。
 
 経営方針に沿った能力開発に努めるようにさせることが重要です。そして、事業計画に挙げられている課題の一部を目標に取り入れ、それを達成するために問題解決を図ることが能力開発になります。能力開発の定義をそのように決め、能力に応じて仕事を任せるようにし、成果報酬の割合は高くしません。 

 

 

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この記事の著者

新庄 秀光

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