組織形態と運用について トヨタとサムスンの違い(その3)

更新日

投稿日

【トヨタとサムスンの違い 連載目次】

1. 社内コミュニケーションの国際性

2. 企業集団と業態

3. 組織形態と運用について

4. 博士号保有率

 トヨタとサムスンの違い(その2)企業集団と業態に続いて解説します。

◆ 業務指揮系統

 業務指揮系統ではトヨタはピラミッド型、サムスンは垂直統合型です。なお、もう一社経験した自動車メーカA社は文鎮型でした。3社を比較すると下図のようになります。

 トヨタ


 なお、トヨタとサムスンの差というだけでなく、日本と韓国との差、あるいは日本とその他の差という印象も持っています。図に示す形態はそのまま企業の運営、あるいは職場の雰囲気につながってます。

 トヨタは情報伝達に多少時間を要します。一方、隣の組織や関連部署との連携は比較的自由に生じています。

 

 一方、サムスンでの情報伝達は極めて迅速です。組織としては、横との連携はほぼ皆無、もっぱら上に向かっての報告であり、上からの指示です。ちなみに、サムスンの方から聞いた情報ですが、この状況はヒュンダイではもっと厳格であるとのことです。上の指示は絶対であるという雰囲気の醸成は、徴兵制の影響と聞いたこともありますが、どうでしょうか。欧米の会社に勤務したことはありませんが、出張の際や話を聞いた雰囲気として、比較的この垂直統合型に近いように感じています。

 A自動車では、トヨタ時代と比較しながら勤務していました。実におもしろい経験ができました。自由闊達(かったつ)で、ある意味バラバラです。ただ、横並びの中には、かなりシャープな発想をする方もいて、その発想の提案はいったん会社に受け入れられると自らが責任者として実行に移せる状況でした。

 表現は適切でないかもしれませんが、ぼーっとさぼって過ごすこともできれば、どんどんとチャレンジもできる組織形態です。ただ、上の人の立場から見ると組織運営は大変なようです。

 

 トヨタは、社内教育で比較的均一な人材に育ちますので、上司から見ると極めて運営が容易です。それ故、社外に出向や転籍した場合、メンバーが動かないという悩みを抱えることとなります。

 サムスンは上からの指示は絶対ですので、上司から見て指揮命令は...

【トヨタとサムスンの違い 連載目次】

1. 社内コミュニケーションの国際性

2. 企業集団と業態

3. 組織形態と運用について

4. 博士号保有率

 トヨタとサムスンの違い(その2)企業集団と業態に続いて解説します。

◆ 業務指揮系統

 業務指揮系統ではトヨタはピラミッド型、サムスンは垂直統合型です。なお、もう一社経験した自動車メーカA社は文鎮型でした。3社を比較すると下図のようになります。

 トヨタ


 なお、トヨタとサムスンの差というだけでなく、日本と韓国との差、あるいは日本とその他の差という印象も持っています。図に示す形態はそのまま企業の運営、あるいは職場の雰囲気につながってます。

 トヨタは情報伝達に多少時間を要します。一方、隣の組織や関連部署との連携は比較的自由に生じています。

 

 一方、サムスンでの情報伝達は極めて迅速です。組織としては、横との連携はほぼ皆無、もっぱら上に向かっての報告であり、上からの指示です。ちなみに、サムスンの方から聞いた情報ですが、この状況はヒュンダイではもっと厳格であるとのことです。上の指示は絶対であるという雰囲気の醸成は、徴兵制の影響と聞いたこともありますが、どうでしょうか。欧米の会社に勤務したことはありませんが、出張の際や話を聞いた雰囲気として、比較的この垂直統合型に近いように感じています。

 A自動車では、トヨタ時代と比較しながら勤務していました。実におもしろい経験ができました。自由闊達(かったつ)で、ある意味バラバラです。ただ、横並びの中には、かなりシャープな発想をする方もいて、その発想の提案はいったん会社に受け入れられると自らが責任者として実行に移せる状況でした。

 表現は適切でないかもしれませんが、ぼーっとさぼって過ごすこともできれば、どんどんとチャレンジもできる組織形態です。ただ、上の人の立場から見ると組織運営は大変なようです。

 

 トヨタは、社内教育で比較的均一な人材に育ちますので、上司から見ると極めて運営が容易です。それ故、社外に出向や転籍した場合、メンバーが動かないという悩みを抱えることとなります。

 サムスンは上からの指示は絶対ですので、上司から見て指揮命令は容易です。さらに極めて優秀な人材の集まりですので、命令への対応もレベルの高いものです。

 サムスンもA自動車も個人商店です。情報やノウハウは属人的となり、極端な場合、担当者が退社すると業務が停滞する事もあるようです。一方のトヨタはピラミッド構成の各組織に情報が残るという特徴がありました。

 次回は、トヨタとサムスンの違い(その4) 博士号保有率についてです。

 

 【出典】技術オフィスTech-T HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高原 忠良

トヨタ式の ” ち密さ ” をサムスン流の ” スピード ” で! 自動車業界 × 樹脂部品を中心に開発から製造までのコンサルティング

トヨタ式の ” ち密さ ” をサムスン流の ” スピード ” で! 自動車業界 × 樹脂部品を中心に開発から製造までのコンサルティング


「事業戦略」の他のキーワード解説記事

もっと見る
【快年童子の豆鉄砲】(その26)

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!   ◆自社の真のコア・コンピタンス把握...

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!   ◆自社の真のコア・コンピタンス把握...


目標管理と能力開発の問題 中小メーカ向け経営改革の考察(その24)

◆事業計画と目標管理に関する問題と対策  前回のその23に続いて解説します。 1.活動計画を詳細に決める効用  a.役割分担を決める事が可能にな...

◆事業計画と目標管理に関する問題と対策  前回のその23に続いて解説します。 1.活動計画を詳細に決める効用  a.役割分担を決める事が可能にな...


値上げするならハーフィンダール指数(HHI)観点で考えよう

日本中小製造業の労働生産性問題  日本中小企業の生産性が低いといわれます。図1で示すように一人あたりの付加価値額を比較すると、明らかに大企業より低い...

日本中小製造業の労働生産性問題  日本中小企業の生産性が低いといわれます。図1で示すように一人あたりの付加価値額を比較すると、明らかに大企業より低い...


「事業戦略」の活用事例

もっと見る
‐経営方針と年次経営計画の浸透‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その38)

 前回の事例その37に続いて解説します。厳しい時代になり、経営行動に関するベクトルが揃っていることが非常に大切です。同じような努力とエネルギ-を費やしてい...

 前回の事例その37に続いて解説します。厳しい時代になり、経営行動に関するベクトルが揃っていることが非常に大切です。同じような努力とエネルギ-を費やしてい...


感性工学を構成する要素 :新環境経営 (その38)

   今回は感性工学を構成する要素として「感性教育」と「感性社会学」について解説します。    1. 感性工学を構成する要素の「感性教育」  ...

   今回は感性工学を構成する要素として「感性教育」と「感性社会学」について解説します。    1. 感性工学を構成する要素の「感性教育」  ...


社風が変わる機会とは

 某企業のトップが社内の悪しき慣習を断ち切り、風通しの良い社風へ生まれ変わろうと奮闘している報道を読みました。巨額な赤字を生み出した原因は経営判断の誤りに...

 某企業のトップが社内の悪しき慣習を断ち切り、風通しの良い社風へ生まれ変わろうと奮闘している報道を読みました。巨額な赤字を生み出した原因は経営判断の誤りに...