コスト改善のあるべき姿は削減より高効率化を優先

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 コスト削減コスト削減と言うと経費の削減を思い浮かべる方も少なく無いと思います。現に不景気になるとまず経費の削減を一番に行う企業も少なくないので一般的な印象としては間違いでは無いのかもしれません。再構築を意味するリストラクチャリングが従業員解雇の代名詞で定着してしまっているのを鑑みると納得出来ます。
 
 しかし経費や人件費削減は『結果としてそこに到達する』のが望ましい形となります。つまり本当に不要なムダを取り除き、ムラを抑制した結果として経費や人件費を減らすことに繋がることが重要で、3ム対策の副産物としてもたらされた方が企業体力も消耗せず、必要な品質を削ることも無く実施できるあるべきコストダウンの姿となります。
 
 コスト削減のアイデアを問われ、経費削減を一番に推奨する事はまずありません。大規模企業で明らかに余剰人員を抱えている場合はスピードも考慮し早めに提案する場合もあるでしょうがメインストリームとは言えません。
 
 コスト改善は収益の最大化を目的として課題を見出し取り組む必要があります。収益の最大化とは既存のリソースを用いて最も利益が得られる事業活動を行う事だと言えます。つまり簡単に言えば効率を重視して生産性を高めて行くことです。
 

◆効率に着目するとは具体的にはどういう事か

 例えばAとBの製品があり、売価から直接原価を差し引いた利幅がBよりもAが大きければAを大量に作るほうが儲かると言っても差し支えないでしょうか、商品を仕入れて転売するケースも同様に考えてみます。Aの方が仕入れ値が安く単品での儲けが大きいなら商品Aを精力的に仕入れて販売するべきでしょうか、この問の答えを出すには少々情報が足りません。
 
 答えの前にそもそも各従業員はこの様に『儲け』を生み出す事を意識して製品を作り、販売し、改善活動を行っているものでしょうか、注文が来たものを作っていれば儲けに繋がる、コスト改善を行っていれば利益は増えると漠然と考えている人が大半だと思います。エンジニアとしてコスト改善業務に取り組んでいる方もコスト改善の本質が収益最大化にあることを理解しているでしょうか、コスト改善をミクロで見てマクロ的視点では観ていない場合が多いのではないでしょうか。
 
 では改めて上の質問の回答ですが、利幅が大きいというだけではAに決めることは出来ません。理由はスループットが分からないからです。 スループットとは単位時間当たりの処理量です。Aの生産時間がBに比べて数倍長ければ余程利幅に差がなければAに注力するわけにはいきません。
 
 この場合、時間あたりの利益幅を基準にプロダクトミックスを考える事で経費削減を意識せずとも収益を改善することが可能となります。即ち効率化の改善です。よってAとBのスループットが同じであればAに注力するという回答となります。
 
 商品仕入れでもAを仕入れ出荷するまでBの数倍かかれば利益効率は悪いと言えます。つまり製品や商品を顧客に送り出すまでのプロセスの効率に着目し、利益が最大化するバランス調整を行うことでコストが改善されるわけです。
 
 この...
 コスト削減コスト削減と言うと経費の削減を思い浮かべる方も少なく無いと思います。現に不景気になるとまず経費の削減を一番に行う企業も少なくないので一般的な印象としては間違いでは無いのかもしれません。再構築を意味するリストラクチャリングが従業員解雇の代名詞で定着してしまっているのを鑑みると納得出来ます。
 
 しかし経費や人件費削減は『結果としてそこに到達する』のが望ましい形となります。つまり本当に不要なムダを取り除き、ムラを抑制した結果として経費や人件費を減らすことに繋がることが重要で、3ム対策の副産物としてもたらされた方が企業体力も消耗せず、必要な品質を削ることも無く実施できるあるべきコストダウンの姿となります。
 
 コスト削減のアイデアを問われ、経費削減を一番に推奨する事はまずありません。大規模企業で明らかに余剰人員を抱えている場合はスピードも考慮し早めに提案する場合もあるでしょうがメインストリームとは言えません。
 
 コスト改善は収益の最大化を目的として課題を見出し取り組む必要があります。収益の最大化とは既存のリソースを用いて最も利益が得られる事業活動を行う事だと言えます。つまり簡単に言えば効率を重視して生産性を高めて行くことです。
 

◆効率に着目するとは具体的にはどういう事か

 例えばAとBの製品があり、売価から直接原価を差し引いた利幅がBよりもAが大きければAを大量に作るほうが儲かると言っても差し支えないでしょうか、商品を仕入れて転売するケースも同様に考えてみます。Aの方が仕入れ値が安く単品での儲けが大きいなら商品Aを精力的に仕入れて販売するべきでしょうか、この問の答えを出すには少々情報が足りません。
 
 答えの前にそもそも各従業員はこの様に『儲け』を生み出す事を意識して製品を作り、販売し、改善活動を行っているものでしょうか、注文が来たものを作っていれば儲けに繋がる、コスト改善を行っていれば利益は増えると漠然と考えている人が大半だと思います。エンジニアとしてコスト改善業務に取り組んでいる方もコスト改善の本質が収益最大化にあることを理解しているでしょうか、コスト改善をミクロで見てマクロ的視点では観ていない場合が多いのではないでしょうか。
 
 では改めて上の質問の回答ですが、利幅が大きいというだけではAに決めることは出来ません。理由はスループットが分からないからです。 スループットとは単位時間当たりの処理量です。Aの生産時間がBに比べて数倍長ければ余程利幅に差がなければAに注力するわけにはいきません。
 
 この場合、時間あたりの利益幅を基準にプロダクトミックスを考える事で経費削減を意識せずとも収益を改善することが可能となります。即ち効率化の改善です。よってAとBのスループットが同じであればAに注力するという回答となります。
 
 商品仕入れでもAを仕入れ出荷するまでBの数倍かかれば利益効率は悪いと言えます。つまり製品や商品を顧客に送り出すまでのプロセスの効率に着目し、利益が最大化するバランス調整を行うことでコストが改善されるわけです。
 
 この様に効率に着目して現状のリソースを用いて収益をさらに高めるにはどうすれば良いのか、と考えます。取り組みの結果、従来よりも生産効率が上がりムダやムラが無くなれば必要な人員や資材も明確になり最適化される事になります。
 
 別の例で言えば、4人必要な作業をムリして2人でやらせるよりも2人で済む作業方法を開発する事に注力すればムリ無く人員を削減することが出来るわけです。効率化の結果としてコストダウンが図れることが望ましい改善活動の形です。
 
 つまり収益を上げるという目的では、コスト削減 < コスト改善 なのです。削減は効率化の結果として生じるのが好ましい、即ちコスト改善活動は削減よりも効率化を意識して取り組む事で真に3ムが解消出来ると言えます。
 

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この記事の著者

眞名子 和義

ムダ・ムラ・ムリの「3ムの撤廃が企業収益向上に繋がる」を信条とし、お客様の"視座"に立ったご提案を致します

ムダ・ムラ・ムリの「3ムの撤廃が企業収益向上に繋がる」を信条とし、お客様の"視座"に立ったご提案を致します


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