検査は付加価値を生まない作業 品質を考える(その7)

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検査

 

◆ 検査は付加価値を生まない作業

1.品質を考える:検査は付加価値がなくても品質保証のためには必要

 検査とは、加工(組立)、運搬、停滞の各々の過程で不良の発見、または防止をするという働きをすることです。検査自体に付加価値はありませんが、後工程の品質を保証するために自工程での検査は全数行うべきです。でも検査すること自体が付加価値を生みませんので、できるだけ工数の掛からない工夫や改善が求められます。品質保証が確実にできて、しかもコストの掛からない方法を見出すことで、他社との競争力の差別化ができるようになります。多くの企業では、この検査や物流の改善の取り組みは、加工や組立の取り組みに比べて余り力を入れておられないようです。

 加工や組立でのコスト改善はすぐに目で見てもわかるものであり、取り組みも多く実施されています。しかし検査方法や品質保証の改善の取り組みは、加工や組立より少ないと感じます。トップの想いと現場の管理者との間では、安全の最優先、そして品質の優先が、いつの間にか生産数確保が最優先に置き換わってしまっていませんでしょうか?まだまだ品質第一といいながらも、現場では即お金になっていく生産数の確保がどうも優先になっていませんか?

 工場では小さなミスや不具合でも、客先で使用されると致命的なミスとなったりします。また最近は一つの部品でも共有化されて、その波及効果で多くの関係製品に影響したりすることが増えてきています。いつかは「千丈の堤も蟻の一穴」という諺のように小さなことから大きな堤防も決壊してしまうものです。適切な検査をタイムリーに行うことで、検査したことによる貴重な情報が自工程や前工程への情報のフィードバックを確実にしかも素早く実施されることで、工程改善や製品の品質向上に結び付いていけば検査の意義が変わってきます。こうなると検査が次善の策となります。

 

2.品質を考える:検査を確実にしかもコストを掛けずに行う

 最初に検査についての定義を紹介しましたが、不良の発見だけでなく、その防止をするための方策まで前工程に提供することを忘れてはなりません。特に最終検査は工場の最後の砦になりますが、最終検査工程だけが頑張っていても品質は向上するものではありません。新幹線のようにすべての車両に駆動用のモーターで走らせているように、各工程で自ら完成後に検査をする仕組みを取り込んで、工場全体でつないでも正確にしかも素早く製品が流れるようにすべきです。

 このためにも自工程内の加工や組立が終われば、自工程で検査をして良品ならば次工程に流すという仕組みが必要です。このことを品質のつくり込みといい、品質は検査でつくるものではなく、工程内でしっかりと良品をつくれるようにして、品質が確実に保証できるようにします。検査も作業の一環だと考えて流れ化にします。検査項目の順番に検査機器、測定器、検査治具、検査にまつわる工具や治具も並べていきます。多くの測定器は、検査用の引き出しに格納してあり、都度引き出しを開閉し、さらに立派な木箱やケースから取り出して収納していますが、これらは一切がお金を燃やしている見えないムダです。

 そこで検査に必要なすべてのものを、5Sを行うだけでも多くのムダをなくすことができます。必要なものを必要なだけ取り揃えます。意外にも壊れたままの機器や測定器、必要のない部品やサンプルなどが出てきますので、良い機会なので一気に廃棄します。そして作業順番にそれらを並べていきます。中には動かせないものもありますが、それは生産現場と同じ考えで工夫をしていきます。引き出しに収納する機器などは、箱やケースに入れないで、引き出しにスポンジなどでその大きさにくり抜いて置くようにします。お勧めは、その引き出しごとに写真を撮って、どこに何が入っているか一目でわかるようにします。これで探すムダが削減できます。

 

3.品質を考える:検査の品質情報をもっと活用して不良を撲滅する

 最終工程での抜き取り検査では、全数の品質確認をしないので、場合によっては検査から外れて運悪くお客様に流れることがあります。お客様としては、不良は1個でも欲しくありませんので、やはり全数検査して良品のみを提供して欲しいのは当然です。抜き取り検査は、いくら統計学的に良いといっても、生産者側のコストを抑えるという都合の良い検査方法にしかすぎません。

 最終検査工程で不良が発見されても、以前の抜き取りの数量を増やすことの対応を繰り返している工場も少なくないようです。不良が発見されたら不良の工程に現物を持ってフィードバックし、すぐに設備や機械さらには作業を止めて、処置と対策を講じて再発防止を実施していかなければなりません。これがなかなか現実的にはすぐに実施できていなく、いつも不良の排除か手直しする処置だけになっていませんか?現地現物で、多少手間を掛けてでもすぐに現物を検討することで、的確な処置と対策を立てることができ、それをコツコツと徹底してやることで不良は撲滅できます。

 発見された不良は、手直しをすることもできますが、廃棄せざるを得な...

検査

 

◆ 検査は付加価値を生まない作業

1.品質を考える:検査は付加価値がなくても品質保証のためには必要

 検査とは、加工(組立)、運搬、停滞の各々の過程で不良の発見、または防止をするという働きをすることです。検査自体に付加価値はありませんが、後工程の品質を保証するために自工程での検査は全数行うべきです。でも検査すること自体が付加価値を生みませんので、できるだけ工数の掛からない工夫や改善が求められます。品質保証が確実にできて、しかもコストの掛からない方法を見出すことで、他社との競争力の差別化ができるようになります。多くの企業では、この検査や物流の改善の取り組みは、加工や組立の取り組みに比べて余り力を入れておられないようです。

 加工や組立でのコスト改善はすぐに目で見てもわかるものであり、取り組みも多く実施されています。しかし検査方法や品質保証の改善の取り組みは、加工や組立より少ないと感じます。トップの想いと現場の管理者との間では、安全の最優先、そして品質の優先が、いつの間にか生産数確保が最優先に置き換わってしまっていませんでしょうか?まだまだ品質第一といいながらも、現場では即お金になっていく生産数の確保がどうも優先になっていませんか?

 工場では小さなミスや不具合でも、客先で使用されると致命的なミスとなったりします。また最近は一つの部品でも共有化されて、その波及効果で多くの関係製品に影響したりすることが増えてきています。いつかは「千丈の堤も蟻の一穴」という諺のように小さなことから大きな堤防も決壊してしまうものです。適切な検査をタイムリーに行うことで、検査したことによる貴重な情報が自工程や前工程への情報のフィードバックを確実にしかも素早く実施されることで、工程改善や製品の品質向上に結び付いていけば検査の意義が変わってきます。こうなると検査が次善の策となります。

 

2.品質を考える:検査を確実にしかもコストを掛けずに行う

 最初に検査についての定義を紹介しましたが、不良の発見だけでなく、その防止をするための方策まで前工程に提供することを忘れてはなりません。特に最終検査は工場の最後の砦になりますが、最終検査工程だけが頑張っていても品質は向上するものではありません。新幹線のようにすべての車両に駆動用のモーターで走らせているように、各工程で自ら完成後に検査をする仕組みを取り込んで、工場全体でつないでも正確にしかも素早く製品が流れるようにすべきです。

 このためにも自工程内の加工や組立が終われば、自工程で検査をして良品ならば次工程に流すという仕組みが必要です。このことを品質のつくり込みといい、品質は検査でつくるものではなく、工程内でしっかりと良品をつくれるようにして、品質が確実に保証できるようにします。検査も作業の一環だと考えて流れ化にします。検査項目の順番に検査機器、測定器、検査治具、検査にまつわる工具や治具も並べていきます。多くの測定器は、検査用の引き出しに格納してあり、都度引き出しを開閉し、さらに立派な木箱やケースから取り出して収納していますが、これらは一切がお金を燃やしている見えないムダです。

 そこで検査に必要なすべてのものを、5Sを行うだけでも多くのムダをなくすことができます。必要なものを必要なだけ取り揃えます。意外にも壊れたままの機器や測定器、必要のない部品やサンプルなどが出てきますので、良い機会なので一気に廃棄します。そして作業順番にそれらを並べていきます。中には動かせないものもありますが、それは生産現場と同じ考えで工夫をしていきます。引き出しに収納する機器などは、箱やケースに入れないで、引き出しにスポンジなどでその大きさにくり抜いて置くようにします。お勧めは、その引き出しごとに写真を撮って、どこに何が入っているか一目でわかるようにします。これで探すムダが削減できます。

 

3.品質を考える:検査の品質情報をもっと活用して不良を撲滅する

 最終工程での抜き取り検査では、全数の品質確認をしないので、場合によっては検査から外れて運悪くお客様に流れることがあります。お客様としては、不良は1個でも欲しくありませんので、やはり全数検査して良品のみを提供して欲しいのは当然です。抜き取り検査は、いくら統計学的に良いといっても、生産者側のコストを抑えるという都合の良い検査方法にしかすぎません。

 最終検査工程で不良が発見されても、以前の抜き取りの数量を増やすことの対応を繰り返している工場も少なくないようです。不良が発見されたら不良の工程に現物を持ってフィードバックし、すぐに設備や機械さらには作業を止めて、処置と対策を講じて再発防止を実施していかなければなりません。これがなかなか現実的にはすぐに実施できていなく、いつも不良の排除か手直しする処置だけになっていませんか?現地現物で、多少手間を掛けてでもすぐに現物を検討することで、的確な処置と対策を立てることができ、それをコツコツと徹底してやることで不良は撲滅できます。

 発見された不良は、手直しをすることもできますが、廃棄せざるを得ない場合もあり、結局それまでにかかったコストがすべてムダになってしまいます。そのためにも貴重な情報が発見できたので、すぐに再発防止をしようという考え方に変えて、さらに素早く行動するという姿勢に変えたいものです。

 全数検査にすれば品質保証ができますが、厄介な問題が発生します。全数検査するとなれば、手間が掛かり検査工数も増えます。検査の自働化をすれば設備投資が必要となります。自働化をすると検査工数は減りますが、不良の削減にはなりません。目的は、工程内の不良ゼロの生産ができることです。工程内の不良がゼロになれば、最終工程の全数検査結果も不良ゼロとなります。

 品質向上は、かなり長いそして険しい道のりを要しますが、これを目指して全社一丸となって取り組みたいものです。品質向上の取り組みは、本当に地道な活動そのものです。従ってこれを確実に実施するには、トップの強い決意が求められます。まずは「うるさい!」と言われてでも、習慣化できるところまでやるべきだと考えます。

 

 次回に続きます。

 

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載 

 

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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