段取り替え時間短縮で在庫削減 品質を考える(その4)

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◆ 段取り替え時間短縮で在庫削減

1.品質を考える:まだ段取り替え時間は遅すぎる

 モノが溢れる時代になってから、少品種大量生産からますます多品種小ロット生産になってきています。そのために段取り替え回数も相当増えてきていますが、その段替え時間短縮の対策をまだ十分に対応していない工場が数多く見られます。プレスや成型の段替えを1人作業で、しかもゆっくりと工具や材料などを探しながら1時間以上も時間をかけて作業をしている場面に遭遇することがあります。

 また一発で良品が出ないので、調整作業や手直し作業を何度も繰り返していることも見られます。簡単な段替えならばシングル段取り(10分未満)でできてしまうものが、それを見ても知らん顔をしている上司がおられることにがっくりすることが何度もありました。まだ段取り替え改善に着手されていないことは実にもったいないことです。

 よほど儲かっている会社かと思うと、売上が落ちて利益も出なくなっている会社ほどそのような状態であり、その先行きにこちらの方が心配になってくるほどです。段替えに時間が掛かるのがもう当たり前だと錯覚してしまい、そのために未だに大ロットで生産して仕掛や在庫を多く持ってしまわれています。この仕掛や在庫は結局お金を眠らせてしまうことも気づかなくなっているかのようです。

 当たり前のことですが、段替えをしている時には生産できないので売上が立たず儲けになりません。しかもお客様からは多くの品種を要求され少量になってきています。従ってこの段替えを短時間でできるようにして、多品種対応のため、多くの段替えをしていく必要があります。そして仕掛や在庫を極力少なくし、しかも欠品が発生しないように取り組んでいくような板ばさみの活動が必要になってきているのです。“あっちを立てればこっちが立たず”の関係ですが、それを改善していくにはまだ十分に活用していない全社員の潜在能力と才能を発揮させていくことです。本当は彼らは改善したがっており、宝の持ち腐れは損失です。

 

2.品質を考える:その短縮方法はセオリー通りにやれば簡単にできる

 何も改善をしていなければ1時間以上もかかっている段取り替えだと、簡単なセオリーに従って取り組めば、一気に1/2から1/20以下にすることができます。「ええっ!こんなに短縮するの?できるわけがない!」と最初から無理だといわないことです。一番悪いのは、最初からできないと言葉にしていってしまうことです。言葉は言霊(ことだま)ともいい、その通りになってしまうものです。逆に「やればできる、何とかなる」などと積極的な言葉に置き換えていくと、次第にその通りになっていくものです。できないことを言葉にして、夢のある心にブレーキまでかけることは止めたいものです。

 

 そのセオリーを紹介します。

① 現状把握をしっかり行ないます。一人ではなく数人での観察をお勧めします。多くの人が見ることにより多くの問題点に気づくからです。多くの人が最初から最後まで段取り替えを観察した経験がありません。これを良い機会にしてください。ムダな動きや付加価値を生まない作業、安全やエルゴノミーに関する気づきだけでも多くのヒントが出てきます。オペレータの動きから目を離さないために簡単なレイアウト図を描いてそれに導線を描いていきます。さらに別な観察者は作業手順と時間を記入していきます。

② 簡単な段取り替えの仮の手順書を作ります。それと合わせて段替えに必要な治工具、材料などを事前準備しておきます。これらを1台の台車や手軽なオカモチにまとめておきます。

③ 機械を止めないでできるすべての作業を外段取りとして区分します。漏れがないようにチェックリストの作成は有効な方法です。

④ 機械を止めないとできない作業の内段取りを標準化して、モノのベストポイント化を図り、歩行をできるだけ少なくしていきます。

⑤ 多くの工数が掛かっている作業であるネジ締めの改善をします。ネジの削減、緩めるだけでよい方法、さらにワンタッチネジ化(工具レス化)、電動工具やエアーツールも使って時間短縮を図っていきます。

⑥ ばらつきが大きい調整作業をなくしていきます。ゲージ化、基準面の設定、事前調整、良品条件の整備などでばらつきをなくして、一発で良品ができるようにしていきます。

⑦ 一人作業から複数の人で並行作業ができるようにします。また何度も訓練を繰り返していきます。この訓練は非常に有効な方法であり、体で覚えるようにします。作業の連携が上手くいくように、作業の組み合わせ票も作成して掲示します。簡単な段替えから時間の掛かるものや難しい段替えも安定してできるようにしていきます。そして、誰がやってもばらつきが少ない段取り替えを目指し実現していきます。設備の不安定だった要因が何度も段替えを繰り返しているうちに改善されて、段取り替え時間が短く安定してくるのです。

 

3.品質を考える:目的は在庫削減して経営数値を改善していくこと

 このように簡単なセオリーを身につけていくと、どの段取り替えでも簡単に改善して大幅な時間短縮が可能になります。難しいのはそれを維持し継続することです。段取り替え時間が短くなることはそう難しいことではありませんが、その効果として仕掛や在庫が削減できて、おまけに欠品の発生もなくし、経営数値に反映させることが狙いなわけです。段取り替え時間短縮はあくまでも手段であり、本当の目的は工程を安定させてリードタイムを短く...

品質

 

◆ 段取り替え時間短縮で在庫削減

1.品質を考える:まだ段取り替え時間は遅すぎる

 モノが溢れる時代になってから、少品種大量生産からますます多品種小ロット生産になってきています。そのために段取り替え回数も相当増えてきていますが、その段替え時間短縮の対策をまだ十分に対応していない工場が数多く見られます。プレスや成型の段替えを1人作業で、しかもゆっくりと工具や材料などを探しながら1時間以上も時間をかけて作業をしている場面に遭遇することがあります。

 また一発で良品が出ないので、調整作業や手直し作業を何度も繰り返していることも見られます。簡単な段替えならばシングル段取り(10分未満)でできてしまうものが、それを見ても知らん顔をしている上司がおられることにがっくりすることが何度もありました。まだ段取り替え改善に着手されていないことは実にもったいないことです。

 よほど儲かっている会社かと思うと、売上が落ちて利益も出なくなっている会社ほどそのような状態であり、その先行きにこちらの方が心配になってくるほどです。段替えに時間が掛かるのがもう当たり前だと錯覚してしまい、そのために未だに大ロットで生産して仕掛や在庫を多く持ってしまわれています。この仕掛や在庫は結局お金を眠らせてしまうことも気づかなくなっているかのようです。

 当たり前のことですが、段替えをしている時には生産できないので売上が立たず儲けになりません。しかもお客様からは多くの品種を要求され少量になってきています。従ってこの段替えを短時間でできるようにして、多品種対応のため、多くの段替えをしていく必要があります。そして仕掛や在庫を極力少なくし、しかも欠品が発生しないように取り組んでいくような板ばさみの活動が必要になってきているのです。“あっちを立てればこっちが立たず”の関係ですが、それを改善していくにはまだ十分に活用していない全社員の潜在能力と才能を発揮させていくことです。本当は彼らは改善したがっており、宝の持ち腐れは損失です。

 

2.品質を考える:その短縮方法はセオリー通りにやれば簡単にできる

 何も改善をしていなければ1時間以上もかかっている段取り替えだと、簡単なセオリーに従って取り組めば、一気に1/2から1/20以下にすることができます。「ええっ!こんなに短縮するの?できるわけがない!」と最初から無理だといわないことです。一番悪いのは、最初からできないと言葉にしていってしまうことです。言葉は言霊(ことだま)ともいい、その通りになってしまうものです。逆に「やればできる、何とかなる」などと積極的な言葉に置き換えていくと、次第にその通りになっていくものです。できないことを言葉にして、夢のある心にブレーキまでかけることは止めたいものです。

 

 そのセオリーを紹介します。

① 現状把握をしっかり行ないます。一人ではなく数人での観察をお勧めします。多くの人が見ることにより多くの問題点に気づくからです。多くの人が最初から最後まで段取り替えを観察した経験がありません。これを良い機会にしてください。ムダな動きや付加価値を生まない作業、安全やエルゴノミーに関する気づきだけでも多くのヒントが出てきます。オペレータの動きから目を離さないために簡単なレイアウト図を描いてそれに導線を描いていきます。さらに別な観察者は作業手順と時間を記入していきます。

② 簡単な段取り替えの仮の手順書を作ります。それと合わせて段替えに必要な治工具、材料などを事前準備しておきます。これらを1台の台車や手軽なオカモチにまとめておきます。

③ 機械を止めないでできるすべての作業を外段取りとして区分します。漏れがないようにチェックリストの作成は有効な方法です。

④ 機械を止めないとできない作業の内段取りを標準化して、モノのベストポイント化を図り、歩行をできるだけ少なくしていきます。

⑤ 多くの工数が掛かっている作業であるネジ締めの改善をします。ネジの削減、緩めるだけでよい方法、さらにワンタッチネジ化(工具レス化)、電動工具やエアーツールも使って時間短縮を図っていきます。

⑥ ばらつきが大きい調整作業をなくしていきます。ゲージ化、基準面の設定、事前調整、良品条件の整備などでばらつきをなくして、一発で良品ができるようにしていきます。

⑦ 一人作業から複数の人で並行作業ができるようにします。また何度も訓練を繰り返していきます。この訓練は非常に有効な方法であり、体で覚えるようにします。作業の連携が上手くいくように、作業の組み合わせ票も作成して掲示します。簡単な段替えから時間の掛かるものや難しい段替えも安定してできるようにしていきます。そして、誰がやってもばらつきが少ない段取り替えを目指し実現していきます。設備の不安定だった要因が何度も段替えを繰り返しているうちに改善されて、段取り替え時間が短く安定してくるのです。

 

3.品質を考える:目的は在庫削減して経営数値を改善していくこと

 このように簡単なセオリーを身につけていくと、どの段取り替えでも簡単に改善して大幅な時間短縮が可能になります。難しいのはそれを維持し継続することです。段取り替え時間が短くなることはそう難しいことではありませんが、その効果として仕掛や在庫が削減できて、おまけに欠品の発生もなくし、経営数値に反映させることが狙いなわけです。段取り替え時間短縮はあくまでも手段であり、本当の目的は工程を安定させてリードタイムを短くし、仕掛や在庫を削減することです。

 段替え時間が例えば、1/4になれば、まず生産ロットサイズを半分にしてみてください。段替え時間が1/4になったからといって、すぐに生産ロットサイズを1/4にしてもその他がまだ対応できていないので混乱してしまいます。様子を見ながら連携してロットサイズを調整していきましょう。安定してきたら徐々に横展開をして、その効果を見ていきます。次第に流れが良くなって、リードタイムが短縮できるようになります。

 そして余分な仕掛や在庫が目立つようになりますので、これらを少なくしていきます。工程が安定してばらつきが少なくなってくれば、安心してこれらを少なくすることに自信が持てるようになります。改善の結果が一目でわかるように、例えば段取り替え時間の推移グラフや仕掛、在庫の推移グラフも関連して貼り出しましょう。できるだけパソコンで描いたものではなく、手描きのグラフに手書きのコメントをつけるようにします。人が関心を持つのは綺麗なグラフではなく、人間味の溢れる少々汚れたグラフの方なのです。

 

 次回に続きます。

 

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載 

 

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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