チームとして改善を進める:現場改善のヒント(その2)

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改善

【改善のヒント連載目次】

 

◆ すべての部門で“目で見る管理”が重要

1. オペレーターの正味作業時間は

 直接作業を行っているオペレーターの皆さんの仕事時間は、一体どれくらいなものでしょうか。通常勤務時間は8時間ですから、“トイレや朝礼など、15%のロスを考えると、7時間くらいでしょう”と思われるかもしれませんが、そうは問屋が卸してくれません。仕事の定義によってこの仕事の時間はもちろん変わってきます。例として、付加価値の生む作業(正味作業)と付加価値の生まない作業(付帯作業、ムダなど)というモノサシで分けてみますと、実態は約半分になってしまいます。

 ざっくりとオペレーターの業務分析をしてみますと、正味時間が50%、部品集めと選択・運搬で25%、手待ちロスや管理ロスなどを含めたトラブルシューティングで25%という数値が計算できます。なんだ半分しか仕事をしていないのか、と思われるかもしれませんが、これはオペレーターのせいではなく、上司のマネジメントの問題なのです。機械加工の現場は、組立作業の現場に比較して、標準作業の考えが行き届いていないことが多くあります。組立現場では、比較的人の移動する導線が少なく、繰り返し作業も多いこともあり、管理しやすい点があります。機械加工の現場では、人の移動する導線が長く、一人作業も多く、繰り返し作業も少ないなどが挙げられます。だからといって、管理できないという理由にはなりません。

 オペレーターの多くは、通常の作業に加えて、部品のピッキングや中間品の運搬、さらにはトラブルシューティングや段取り替え、ミーティング、電話連絡なども自ら行っています。このため作業が中断したり、ミスを犯したりするため、ますます時間がなくなり、焦ってしまうという悪魔のサイクルが回っています。しかもトラブルが発生しても、上司は見て見ぬ振りがほとんどでないでしょうか。それは、現場に標準類がほとんど掲示されていないので類推できます。加工図面や生産指示書、オーダー用紙の類(たぐい)はありますが、標準作業票、標準作業組合せ票、段取り替え手順書の類は余りみることはありません。これからいえることは、オペレーターの作業標準ができていないと考えられます。業務の半分が正味作業であり、それ以外に付加価値を生まない作業があることが問題です。この状態ではいつまで経っても、現場の改善は進みません。

 

2.チームで役割分担を変更

 ではどうすればよいのでしょうか。考え方として、オペレーターに標準作業をやってもらうように、仕事の役割分担を変更することです。トラブルシューティングは「チームリーダー」に任せます。さらに、部品集めや選択に関しては「水すまし」という業務に任せます。それでは、この二人はどこから呼んでくるのかということですが、これはその職場から選出します。

 ここで、チーム制の考えを紹介します。このチームは、オペレーターの中から選出した10人から15人で構成されるものです。一番よくその職場を知っていて、さらにチームをまとめ、トラブルシューティングのできる人をチームリーダーとします。この存在が重要であり、これでチームの存在が定義されます。つまり、現場の組織化であり、現場は組織されていなければ力を発揮できません。その人はベテランというのではなく、やる気のある人で、他人のことが考えられる人が相応しく、自分だけという人は向いていません。

 そしてチームリーダーは、標準作業を作成し、維持改善のできる人であり、それができる人を任命します。すぐにそんなスーパーマンはいないからできないという言い訳は、やめましょう。まず、そういう人をこれから育てていくのです。気付かなかった良い人材が、埋もれていたかも知れません。

 このオペレーターとチームリーダーとの関係が、従来は曖昧(あいまい)であり、管理が上手く行かなかったので、全体の生産性が向上しなかったと考えます。従来は、これらのトラブルが放置されていたことが多くあり、同じトラブルを再発させて慢性化していたのです。この関係を明確にしていけば、チームとしての生産性は3割以上の向上が可能になります。チームリーダーが動きやすくするため、異常がすぐに分かるように現場を整備しなければなりません。

 次に、水すまし作業は、二番目にその職場を知っている人を選出します。水すまし作業は、単なる物流マンではありません。あくまでもオペレーターの標準作業ができるようにサポートをする人であり、オペレーターの作業から溢(あふ)れた作業を取り出したり、配分し直したりも行います。また、オペレーターがベストポイントで部品が取れるようにセッティングしたり、完成品や空箱の回収なども行います。水すましと物流マンの役割は違っており、物流マンとは、中央倉庫からラインサイドの部品置き場に運搬する人であり、生産ラインには直接関係していません。

 このチームリーダーと水すましの二人に、従来オペレーター全員が行っていた作業から、トラブルシューティングや部品集めや選択の作業を移行して、この二人の時間の原資を創出していきます。そうすることによって、オペレーターは正味作業に専念できるようになります。

 

3.仕事は集中して一気に

 なぜ、...

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【改善のヒント連載目次】

 

◆ すべての部門で“目で見る管理”が重要

1. オペレーターの正味作業時間は

 直接作業を行っているオペレーターの皆さんの仕事時間は、一体どれくらいなものでしょうか。通常勤務時間は8時間ですから、“トイレや朝礼など、15%のロスを考えると、7時間くらいでしょう”と思われるかもしれませんが、そうは問屋が卸してくれません。仕事の定義によってこの仕事の時間はもちろん変わってきます。例として、付加価値の生む作業(正味作業)と付加価値の生まない作業(付帯作業、ムダなど)というモノサシで分けてみますと、実態は約半分になってしまいます。

 ざっくりとオペレーターの業務分析をしてみますと、正味時間が50%、部品集めと選択・運搬で25%、手待ちロスや管理ロスなどを含めたトラブルシューティングで25%という数値が計算できます。なんだ半分しか仕事をしていないのか、と思われるかもしれませんが、これはオペレーターのせいではなく、上司のマネジメントの問題なのです。機械加工の現場は、組立作業の現場に比較して、標準作業の考えが行き届いていないことが多くあります。組立現場では、比較的人の移動する導線が少なく、繰り返し作業も多いこともあり、管理しやすい点があります。機械加工の現場では、人の移動する導線が長く、一人作業も多く、繰り返し作業も少ないなどが挙げられます。だからといって、管理できないという理由にはなりません。

 オペレーターの多くは、通常の作業に加えて、部品のピッキングや中間品の運搬、さらにはトラブルシューティングや段取り替え、ミーティング、電話連絡なども自ら行っています。このため作業が中断したり、ミスを犯したりするため、ますます時間がなくなり、焦ってしまうという悪魔のサイクルが回っています。しかもトラブルが発生しても、上司は見て見ぬ振りがほとんどでないでしょうか。それは、現場に標準類がほとんど掲示されていないので類推できます。加工図面や生産指示書、オーダー用紙の類(たぐい)はありますが、標準作業票、標準作業組合せ票、段取り替え手順書の類は余りみることはありません。これからいえることは、オペレーターの作業標準ができていないと考えられます。業務の半分が正味作業であり、それ以外に付加価値を生まない作業があることが問題です。この状態ではいつまで経っても、現場の改善は進みません。

 

2.チームで役割分担を変更

 ではどうすればよいのでしょうか。考え方として、オペレーターに標準作業をやってもらうように、仕事の役割分担を変更することです。トラブルシューティングは「チームリーダー」に任せます。さらに、部品集めや選択に関しては「水すまし」という業務に任せます。それでは、この二人はどこから呼んでくるのかということですが、これはその職場から選出します。

 ここで、チーム制の考えを紹介します。このチームは、オペレーターの中から選出した10人から15人で構成されるものです。一番よくその職場を知っていて、さらにチームをまとめ、トラブルシューティングのできる人をチームリーダーとします。この存在が重要であり、これでチームの存在が定義されます。つまり、現場の組織化であり、現場は組織されていなければ力を発揮できません。その人はベテランというのではなく、やる気のある人で、他人のことが考えられる人が相応しく、自分だけという人は向いていません。

 そしてチームリーダーは、標準作業を作成し、維持改善のできる人であり、それができる人を任命します。すぐにそんなスーパーマンはいないからできないという言い訳は、やめましょう。まず、そういう人をこれから育てていくのです。気付かなかった良い人材が、埋もれていたかも知れません。

 このオペレーターとチームリーダーとの関係が、従来は曖昧(あいまい)であり、管理が上手く行かなかったので、全体の生産性が向上しなかったと考えます。従来は、これらのトラブルが放置されていたことが多くあり、同じトラブルを再発させて慢性化していたのです。この関係を明確にしていけば、チームとしての生産性は3割以上の向上が可能になります。チームリーダーが動きやすくするため、異常がすぐに分かるように現場を整備しなければなりません。

 次に、水すまし作業は、二番目にその職場を知っている人を選出します。水すまし作業は、単なる物流マンではありません。あくまでもオペレーターの標準作業ができるようにサポートをする人であり、オペレーターの作業から溢(あふ)れた作業を取り出したり、配分し直したりも行います。また、オペレーターがベストポイントで部品が取れるようにセッティングしたり、完成品や空箱の回収なども行います。水すましと物流マンの役割は違っており、物流マンとは、中央倉庫からラインサイドの部品置き場に運搬する人であり、生産ラインには直接関係していません。

 このチームリーダーと水すましの二人に、従来オペレーター全員が行っていた作業から、トラブルシューティングや部品集めや選択の作業を移行して、この二人の時間の原資を創出していきます。そうすることによって、オペレーターは正味作業に専念できるようになります。

 

3.仕事は集中して一気に

 なぜ、このような役割分担の変更が良いのでしょうか。逆に今までのやり方の問題は何処(どこ)にあったのでしょうか。それは、人に色々な業務を押し付けると、必要な業務に集中できないからです。これを打開するために、一つの業務に人を集中させて、一気にやり上げてしまおうという考え方です。

 この考え方は、現場における問題ではなくて、会社全体に共通したものです。開発プロジェクトから、現場の改善一つにしてもしかりなのです。今までやろうとしていても、なかなか実践できなかった要因は、それぞれの人に集中して仕事をさせる環境を作ってあげなかったことにあると考えます。どの部門でもすぐに異常が分かり、問題点が明確になれば、アクションも素早く対応ができるようになります。

 そのためにも、どこの部門でも目で見る管理が重要になってきます。特に、間接部門は属人的な仕事になりやすいので、余計にその配慮が必要です。製造現場よりも改善が遅れているので、結局は製造現場に後始末が回ってきて、慌(あわ)てる仕事になっています。下流だけでなく、上流も一緒にチームとして、改善を進めていきましょう。

 

 次回に続きます。

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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