製造現場の活用で固定費削減:改善のヒント(その8)

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改善のヒント

【改善のヒント連載目次】

 

◆ 固定費削減は現場で働く人たちの活用から

1.固定費削減は製造現場のリストラではない

 不況を乗り切るためには、固定費を削減していかなければなりません。固定費削減の安易な方法として、製造現場の従業員をリストラする方法があります。しかしそれは非常にもったいない話です。彼らは、多くの現場のノウハウを持ったいわゆる「知恵を持つ集団」です。それをあまり意識していなかったのは、忙しさにかまけて彼らの持っている才能や能力を、十分に発揮させる機会を持たなかった経営者やトップの責任ではなかったかと考えます。

 それは多くの経営者やトップ、上司が彼らに対し指示命令の形態で仕事を指図していたため、彼らは自ら考え行動する本来の行動形態から路線がずれてしまい、次第に「いわれたことだけをやっておれば良い」という志向になってしまったと考えます。

 しかし製造現場は物の加工から組立や検査を行い、良品として出荷するまでの過程で、工場の付加価値を生んでいる唯一の職場です。そこで彼らを鍛えることで、今まで眠っていた潜在能力を呼び覚まし、広い範囲の仕事を経験してもらうことによって、色々な工程の多能工化が可能になってきます。つまり、生産計画調整の一部を現場で行い、状況判断を素早く行い対応していくことが可能になります。

 また調達において、繰り返し作業のある部品や材料は、置き場を整備してストア化し、かんばんの運用を行い自ら発注することができます。設備のメンテや清掃もTPM活動を保全マンから教育をしてもらい、初期清掃や発生源対策、設備点検基準の作成と実施などの設備改善の活動を行うこともできます。

 さらに今まで問題のあった設計に対して、実際に加工組立している中で、改善点や工夫個所の多くを、自ら対応してきたノウハウを生かし、設計に反映することもできます。特に設計者には、現場を知らないで設計している人が多く、そのような人ほど罰が悪いため現場に出ようとしないものです。現場の実態を知らなくては、本当に良い設計はできないはずです。

 

2.間接部門における7つのムダとは

 間接部門の人たちは、色々な情報を加工・組立・検査を行い、情報加工の結果として、生産計画書や発注伝票、生産指示書などのアウトプットを製造に提供してくれます。しかしその精度や速度は、後工程の製造からすれば決して良いものではなく、逆に製造現場から聞き直しや誤解、さらには間違いといった混乱を提供していることも多く、現場にとっては喜ばしいことではない場合があります。

 逆に間接部門の人たちに、今から製造現場のノウハウを伝授していくことは、製造現場の人たちよりも相当難しく、長期間にわたり時間がかかるものです。間接部門の人たちの中には、製造現場より自分達の方が付加価値を稼いでいると信じている方もいらっしゃいます。しかし、間接部門にもムダはあるのです。

 間接部門のムダも実は見方を変えると、製造現場と同じだと理解できます。次のような7つのムダがあります。

  • つくり過ぎのムダ
    情報収集過多の万が一の保険仕事、ムダな情報の産出、業務のダブり、何でもかんでもEメール。 
  • 在庫のムダ
    長期間の保留の書類、あふれる机・引き出し・キャビネットそしてファイル。 
  • 手待ちのムダ
    前工程からの情報待ち、課題への取り組みの遅さ、画面に向かって考えごと。 
  • 運搬のムダ
    部門、上司、部下間における情報の引渡し効率の悪さ、コミュニケーション不足。 
  • 動きのムダ
    意味のない活動、作業手順・組み合わせの悪さ、長時間の物・情報探し、不十分な標準化、属人的作業。 
  • 不良手直しのムダ
    修正・訂正、誤解を解くための調整作業、確認作業、不良の引渡し、キーインミス。 
  • 加工そのもののムダ
    目標、日程がはっきりしない作業、能力不足や不安、人の能力を上手く生かさない、課題が不明確、不適格な人員の使い方。

 これらは、製造現場の物が情報に変わっただけです。すなわち情報を現場の物と同じように考えれば、改善は比較的簡単にできます。ダブついたムダを、自ら取り去る行動を起こさないと自滅します。

 

3. 工場の作業を見直すことでムダを無くす 

 間接部門のムダ削減への対応としては、製造現場の人たちをもっと鍛えて、前工程の仕事を取り込んでもっと自分たちがやりやすい仕事に替えていくことです。そのために、まず全員で工場内の不要品を廃棄して整理します。さらに清掃を行って、不具合個所の発見と発生源の処置をします。

 そしてベストポイントに物を置き換えて、表示・標識して整頓し、自らの作業環境を働きやすいように整備していきます。この時点で電力やエアー、油水などのエネルギー関係のムダが明確になりますので、対処して固定費削減ができます。不要な設備や遊休設備などの廃棄も出てきます。工場内に有効活用できるスペースが生まれ、外部に借りていた倉庫などを不要にすることができます。

 次いで、すっきりした現場を今一度現状把握を徹底し、今度は製造のムダの廃除を行っていきます。作業の改...

改善のヒント

【改善のヒント連載目次】

 

◆ 固定費削減は現場で働く人たちの活用から

1.固定費削減は製造現場のリストラではない

 不況を乗り切るためには、固定費を削減していかなければなりません。固定費削減の安易な方法として、製造現場の従業員をリストラする方法があります。しかしそれは非常にもったいない話です。彼らは、多くの現場のノウハウを持ったいわゆる「知恵を持つ集団」です。それをあまり意識していなかったのは、忙しさにかまけて彼らの持っている才能や能力を、十分に発揮させる機会を持たなかった経営者やトップの責任ではなかったかと考えます。

 それは多くの経営者やトップ、上司が彼らに対し指示命令の形態で仕事を指図していたため、彼らは自ら考え行動する本来の行動形態から路線がずれてしまい、次第に「いわれたことだけをやっておれば良い」という志向になってしまったと考えます。

 しかし製造現場は物の加工から組立や検査を行い、良品として出荷するまでの過程で、工場の付加価値を生んでいる唯一の職場です。そこで彼らを鍛えることで、今まで眠っていた潜在能力を呼び覚まし、広い範囲の仕事を経験してもらうことによって、色々な工程の多能工化が可能になってきます。つまり、生産計画調整の一部を現場で行い、状況判断を素早く行い対応していくことが可能になります。

 また調達において、繰り返し作業のある部品や材料は、置き場を整備してストア化し、かんばんの運用を行い自ら発注することができます。設備のメンテや清掃もTPM活動を保全マンから教育をしてもらい、初期清掃や発生源対策、設備点検基準の作成と実施などの設備改善の活動を行うこともできます。

 さらに今まで問題のあった設計に対して、実際に加工組立している中で、改善点や工夫個所の多くを、自ら対応してきたノウハウを生かし、設計に反映することもできます。特に設計者には、現場を知らないで設計している人が多く、そのような人ほど罰が悪いため現場に出ようとしないものです。現場の実態を知らなくては、本当に良い設計はできないはずです。

 

2.間接部門における7つのムダとは

 間接部門の人たちは、色々な情報を加工・組立・検査を行い、情報加工の結果として、生産計画書や発注伝票、生産指示書などのアウトプットを製造に提供してくれます。しかしその精度や速度は、後工程の製造からすれば決して良いものではなく、逆に製造現場から聞き直しや誤解、さらには間違いといった混乱を提供していることも多く、現場にとっては喜ばしいことではない場合があります。

 逆に間接部門の人たちに、今から製造現場のノウハウを伝授していくことは、製造現場の人たちよりも相当難しく、長期間にわたり時間がかかるものです。間接部門の人たちの中には、製造現場より自分達の方が付加価値を稼いでいると信じている方もいらっしゃいます。しかし、間接部門にもムダはあるのです。

 間接部門のムダも実は見方を変えると、製造現場と同じだと理解できます。次のような7つのムダがあります。

  • つくり過ぎのムダ
    情報収集過多の万が一の保険仕事、ムダな情報の産出、業務のダブり、何でもかんでもEメール。 
  • 在庫のムダ
    長期間の保留の書類、あふれる机・引き出し・キャビネットそしてファイル。 
  • 手待ちのムダ
    前工程からの情報待ち、課題への取り組みの遅さ、画面に向かって考えごと。 
  • 運搬のムダ
    部門、上司、部下間における情報の引渡し効率の悪さ、コミュニケーション不足。 
  • 動きのムダ
    意味のない活動、作業手順・組み合わせの悪さ、長時間の物・情報探し、不十分な標準化、属人的作業。 
  • 不良手直しのムダ
    修正・訂正、誤解を解くための調整作業、確認作業、不良の引渡し、キーインミス。 
  • 加工そのもののムダ
    目標、日程がはっきりしない作業、能力不足や不安、人の能力を上手く生かさない、課題が不明確、不適格な人員の使い方。

 これらは、製造現場の物が情報に変わっただけです。すなわち情報を現場の物と同じように考えれば、改善は比較的簡単にできます。ダブついたムダを、自ら取り去る行動を起こさないと自滅します。

 

3. 工場の作業を見直すことでムダを無くす 

 間接部門のムダ削減への対応としては、製造現場の人たちをもっと鍛えて、前工程の仕事を取り込んでもっと自分たちがやりやすい仕事に替えていくことです。そのために、まず全員で工場内の不要品を廃棄して整理します。さらに清掃を行って、不具合個所の発見と発生源の処置をします。

 そしてベストポイントに物を置き換えて、表示・標識して整頓し、自らの作業環境を働きやすいように整備していきます。この時点で電力やエアー、油水などのエネルギー関係のムダが明確になりますので、対処して固定費削減ができます。不要な設備や遊休設備などの廃棄も出てきます。工場内に有効活用できるスペースが生まれ、外部に借りていた倉庫などを不要にすることができます。

 次いで、すっきりした現場を今一度現状把握を徹底し、今度は製造のムダの廃除を行っていきます。作業の改善や見直しで、2シフトから1シフトの作業変更することで、エネルギーの削減ができます。

 また設備の清掃や点検をすることで次の具現化できるようになります。

  • 稼働率向上
  • 故障なし
  • 使いやすさ向上
  • 段取り替え時間短縮
  • 知恵を使った簡単で便利な設備の改造
  • 使用条件の整備で長寿命化

 部品や材料の置き場の整備を行い、表示・標識の徹底したストア化を行い、在庫管理が容易に行えるようにした結果、かんばんが運用できるようになると、欠品がなくなり発注や在庫管理が簡単になります。

 そして在庫削減ができ、ピッキング作業も簡単となりますので、自らできるようになります。また、生産計画も生産管理板などを用いて、目で見る管理を徹底して行うことで、最も効率の良い順番を素早く決めることができるようになり、計画系の人の負担を少なくしていくことができます。つまり、間接の仕事に喰(く)らい込んで行くのです。

 自分の城は自分で守るといいますが、自らの守備範囲を広げていくことが、自らを鍛え上げていきます。そして、工場になくてはならない人材に育成するのです。

 

 次回に続きます。

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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