改善の目を養おう:改善のヒント(その5)

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【改善のヒント連載目次】

 

◆ 改善の目を養う:「CAPD」のススメ

1. 現場を歩いてもムダがすぐに発見できないのは

 毎日働いている職場では製品を如何(いか)に早く、しかも多く作るかということに一生懸命になっていて、どこを見ても危険個所やムダが見えにくくなっています。これは非常に残念なことですが、毎日同じことの繰り返しでは、脳が麻痺(まひ)していて仕方のないことかもしれません。しかし、これらをすぐに気付く人もいるのです。決められた仕事は勿論(もちろん)確実に仕上げ、しかもそれらの問題に対してすぐに行動を起こし、改善までも行ってしまいますが、この違いは一体どこにあるのでしょうか。改善をよくやる人の頭が2つありますか。そして手は4本もありますか。そのような違いはなく、外見は私たちと同じ人間です。

 本当に製品を早く多く作ることが、あなたが会社に来てやる仕事でしょうか。本来会社に来てやるべきことは何でしょうか?一見見当違いな質問のようですが、このことが分かっていないため、目先のことに追われてしまったようになり、もう少し先のことが見えなくなっているから、何をすべきかが分からないままで仕事をしてしまっていることが実に多いのです。

 「本来会社に来てやるべきことは何でしょうか?」この質問は、私が訪問した会社に行った際、必ず質問することの一つになっていますが、なかなか正確に答えて頂けることはありません。仕事ができて、しかも改善も確実にやっている人はどこが違うのでしょうか?今回はそこを考えてみましょう。

 

2. まずは現状把握とあるべき姿が描けること

 管理のマネジメントサイクルに『PDCA』があります。これは、皆様もよくご存知のPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価・点検)、Action(処置・改善)という頭文字をつなげたもので、これを1サイクルとして螺旋(らせん)のように何度も回し、計画通りに仕事を進めていくものです。これは最初にPlanの計画がありますが、現場の問題解決のマネジメントサイクルはスタートを変えた方がよいと考えます。まずCから始まり、次にAそして、PからDになり『CAPD』のサイクルで回していきます。

 それでは、具体的な説明をしていきましょう。まずしっかり現状把握(C)をすることです。事実を知っていなければ適正な原因や真因(A)が追求できません。そして、あるべき姿のイメージをしっかり頭の中で描けること(P)が必要になります。現状把握で得た事実から、その原因や真因を発見して、あるべき姿を比較しながらその隔たり(ギャップ)がどれだけあるかをみます。そのギャップが離れているほど問題は大きく、解決すべき課題があるということになります。

 逆に現状把握をした時に、十分に調べなければ問題は発見できません。発見できたとしても、小さな問題になってしまいます。さらに、あるべき姿を知っていないと、どこまで改善をすればよいかが分かりませんので、小改善に留(とど)まってしまい、満足感も少ないものになってしまいます。これらから改善案を出して、あるべき姿になるように改善(D)を繰り返しながら進めていきます。

 さてこれらを、一人でやろうとするとどうでしょうか?一人でやるということになれば、かなり素質があり、相当訓練しないことにはできないのが現状です。そこで、すぐにできる方法を紹介します。これは一人ではなく、数人のチームを組むことです。一人では「気が散ってなかなか集中できない」、「一方向からしか観察できない」、「自分のレベルでしか観察できない」、「一度に定性的なことと定量的なことを観察できない」、「狭い範囲しか観察できない」などの欠点がありますが、チームで取り組むと、一度に多くの事実を顕在化することができます。さらに、多くの見方ができ、お互いのレベルアップもしやすくなります。また定量的なことも、他の人に任せれば確実なデータが取れます。

 さらに用意したいものは、標準作業票や標準作業組合せ票などの標準類です。これは観察する時の“モノサシ”になり、標準との違いやバラツキが発見しやすくなります。観察時間は1時間を目安にします。そして観察するのは「人」です。設備や治工具、部品、仕掛り、伝票類など、これら自体は動きませんので、それらを動かしている「人」を観察します。「人」はこれらを自由に動かしていますので、その動かし方に注目するのです。それは「人」によってそれらの動かし方が違うので、バラツキや問題が発見しやすくなります。別の「人」にもやってもらうと、違いがより顕著に見られます。

 あるべき姿は、多くの改善事例を参考にします。今では多くの改善事例が写真で掲載されていますし、他の職場に行くことも非常に参考になります。最初は「真似る」ことから始めましょう。「付加価値のある仕事とは何か」を、いつも考えることが大切です。9割以上の作業は、付加価値のない仕事ばかりですので、改善のネタを心配することはありません。この付加価値があるかないかをいつも見極めるようにして観察していけば、見えなかったムダは、常に意識することによって自然に見えるようになってきます。

 

3. 改善目的は、良い人生を送ることにある

 本当に改善をやっている人は、イキイキといいますか、ワクワクして仕事をしておられると思いますが、周りから見ていても何故(なぜ)か輝いているように見えてきます。その領域になった人は、...

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【改善のヒント連載目次】

 

◆ 改善の目を養う:「CAPD」のススメ

1. 現場を歩いてもムダがすぐに発見できないのは

 毎日働いている職場では製品を如何(いか)に早く、しかも多く作るかということに一生懸命になっていて、どこを見ても危険個所やムダが見えにくくなっています。これは非常に残念なことですが、毎日同じことの繰り返しでは、脳が麻痺(まひ)していて仕方のないことかもしれません。しかし、これらをすぐに気付く人もいるのです。決められた仕事は勿論(もちろん)確実に仕上げ、しかもそれらの問題に対してすぐに行動を起こし、改善までも行ってしまいますが、この違いは一体どこにあるのでしょうか。改善をよくやる人の頭が2つありますか。そして手は4本もありますか。そのような違いはなく、外見は私たちと同じ人間です。

 本当に製品を早く多く作ることが、あなたが会社に来てやる仕事でしょうか。本来会社に来てやるべきことは何でしょうか?一見見当違いな質問のようですが、このことが分かっていないため、目先のことに追われてしまったようになり、もう少し先のことが見えなくなっているから、何をすべきかが分からないままで仕事をしてしまっていることが実に多いのです。

 「本来会社に来てやるべきことは何でしょうか?」この質問は、私が訪問した会社に行った際、必ず質問することの一つになっていますが、なかなか正確に答えて頂けることはありません。仕事ができて、しかも改善も確実にやっている人はどこが違うのでしょうか?今回はそこを考えてみましょう。

 

2. まずは現状把握とあるべき姿が描けること

 管理のマネジメントサイクルに『PDCA』があります。これは、皆様もよくご存知のPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価・点検)、Action(処置・改善)という頭文字をつなげたもので、これを1サイクルとして螺旋(らせん)のように何度も回し、計画通りに仕事を進めていくものです。これは最初にPlanの計画がありますが、現場の問題解決のマネジメントサイクルはスタートを変えた方がよいと考えます。まずCから始まり、次にAそして、PからDになり『CAPD』のサイクルで回していきます。

 それでは、具体的な説明をしていきましょう。まずしっかり現状把握(C)をすることです。事実を知っていなければ適正な原因や真因(A)が追求できません。そして、あるべき姿のイメージをしっかり頭の中で描けること(P)が必要になります。現状把握で得た事実から、その原因や真因を発見して、あるべき姿を比較しながらその隔たり(ギャップ)がどれだけあるかをみます。そのギャップが離れているほど問題は大きく、解決すべき課題があるということになります。

 逆に現状把握をした時に、十分に調べなければ問題は発見できません。発見できたとしても、小さな問題になってしまいます。さらに、あるべき姿を知っていないと、どこまで改善をすればよいかが分かりませんので、小改善に留(とど)まってしまい、満足感も少ないものになってしまいます。これらから改善案を出して、あるべき姿になるように改善(D)を繰り返しながら進めていきます。

 さてこれらを、一人でやろうとするとどうでしょうか?一人でやるということになれば、かなり素質があり、相当訓練しないことにはできないのが現状です。そこで、すぐにできる方法を紹介します。これは一人ではなく、数人のチームを組むことです。一人では「気が散ってなかなか集中できない」、「一方向からしか観察できない」、「自分のレベルでしか観察できない」、「一度に定性的なことと定量的なことを観察できない」、「狭い範囲しか観察できない」などの欠点がありますが、チームで取り組むと、一度に多くの事実を顕在化することができます。さらに、多くの見方ができ、お互いのレベルアップもしやすくなります。また定量的なことも、他の人に任せれば確実なデータが取れます。

 さらに用意したいものは、標準作業票や標準作業組合せ票などの標準類です。これは観察する時の“モノサシ”になり、標準との違いやバラツキが発見しやすくなります。観察時間は1時間を目安にします。そして観察するのは「人」です。設備や治工具、部品、仕掛り、伝票類など、これら自体は動きませんので、それらを動かしている「人」を観察します。「人」はこれらを自由に動かしていますので、その動かし方に注目するのです。それは「人」によってそれらの動かし方が違うので、バラツキや問題が発見しやすくなります。別の「人」にもやってもらうと、違いがより顕著に見られます。

 あるべき姿は、多くの改善事例を参考にします。今では多くの改善事例が写真で掲載されていますし、他の職場に行くことも非常に参考になります。最初は「真似る」ことから始めましょう。「付加価値のある仕事とは何か」を、いつも考えることが大切です。9割以上の作業は、付加価値のない仕事ばかりですので、改善のネタを心配することはありません。この付加価値があるかないかをいつも見極めるようにして観察していけば、見えなかったムダは、常に意識することによって自然に見えるようになってきます。

 

3. 改善目的は、良い人生を送ることにある

 本当に改善をやっている人は、イキイキといいますか、ワクワクして仕事をしておられると思いますが、周りから見ていても何故(なぜ)か輝いているように見えてきます。その領域になった人は、改善することによって自分のことだけではなく、その工程や前後工程も良くなり、さらに会社が良くなり、お客様まで喜んでもらえるということが身体(からだ)全体で分かっておられる人です。そのことが、自分の自己成長につながっていることも気付いておられる人です。そのために、その人は輝いて見えます。「改善提案の報奨金だけのためにやる」とか「自分の利益のためだけ」と言うのは悲しい行為です。一時的に儲(もう)けたように思いますが、それは長続きするものではありません。

 改善を行って結果を出して、きちんと周囲の人から評価され、褒め称(たた)えられ、ますますやる気になって、さらに良い結果を出して行くという「天使のサイクル」を回していけば、結局良い人生を送られると考えます。それは仕事だけではなく、家に帰ってからでも家庭内での行為や住んでいる地域にも、その姿勢は善の行動となっていくものでしょう。

 人は他人から認めてほしいものであり、認めてもらうとまたやる気が出てやりたくなるものです。それがやる気を継続させる原動力になり、周囲に広がっていきます。現場を歩いて改善したところをすぐに発見し、すかさず褒めてあげることは上司の仕事です。

 

 次回に続きます。

 【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

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この記事の著者

松田 龍太郎

見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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