最先端のSCMテーマ、S&OP SCM最前線 (その5)

更新日

投稿日

1. S&OPとは

 
 今日の最先端SCMテーマといえば、一番に上げられるのは、S&OP(Sales & Operations Planning)でしょう。すでにS&OPの仕組みを構築され、実績を上げられている企業が出始めています。しかし、現在の日本でこのS&OPが完成していると言える企業は、まだ極めて少数です。当連載の最大の目的一つは、S&OPを多くの企業で実現して頂くヒントを提供する事です。S&OPは、日本語に訳すと「販売・業務計画」となりますが、「Operation」と日本語の「業務」のニュアンスにギャップがあるため、S&OPと直接、呼称されることが多いようです。S&OPについては、様々な定義がなされていますが、まとめると、下図のような定義が一般的です。
 
scm
 
 日本でこれまで普通に行われていた「生販計画」に近いようですが、最近の用語の使われ方としては、本来の「需給バランス」の意味は希薄になっており、数量主体の世界である「SCM」と金額主体の「事業計画」の間の整合性を確保するという意味で専ら使われることが多くなっています。
 

2.今なぜ、S&OPが求められているのか

 
 S&OP自体は、1988年にディック・リング氏とウオルト・ゴダード氏が提唱した概念で、決して新しいものではありません。しかし、これまでS&OPはSCMのトレンドとはなっていませんでした。それがここ数年急に注目されるようになってきたのは、SCMの道具建てが整ってきたという背景に加えて、実際にSCMが経営の役に立っていないのではないか、という反省が急激に高まってきたからです。
 
scm
 
 納期遵守、在庫削減など企業のサプライチェーン・オペレーションには、SCMは無くてはならない仕組みとして定着しています。それにもかかわらず、事業計画達成の直接の役に立っていないという認識が高まってきたのは、サプライチェーン上の「数量」の管理がうまくいっても、それが「カネ」、つまり事業計画の達成には必ずしも繋がっていないという問題が直視され、顕在化したからです。
 
 日々のオペレーションに携わっている販売・需給調整・生産・購買・物流などSCMの現場では、日々発生する計画と実績のギャップを埋めるために長時間を要しており、迅速なアクションがとれていないという問題意識があります。日常レベルのSCMオペレーションにもトップマネジメントを巻き込み意思決定のスピードアップを図りたいという強い思いがあります。しかし、トップマネジメントの必要とする「カネ」の視点で日々のSCMのオペレーションが評価されていないために、トップマネジメントを日常業務オペレーションに直接巻き込むことができずに、意思決定の時間を短縮することができません。
 
 一方、トップマネジメントも自分自身が直接SCMをコントロールしている感覚が薄く、部下への指示を通じての靴の上から痒いところを掻いているようなもどかしさを感じることも多いようです。この様にS&OPの取り組みにおいてはトップと現場の利害は一致しており、その前提さえ満足されれば、遂行に際して全社意識改革は然必要になるとし...

1. S&OPとは

 
 今日の最先端SCMテーマといえば、一番に上げられるのは、S&OP(Sales & Operations Planning)でしょう。すでにS&OPの仕組みを構築され、実績を上げられている企業が出始めています。しかし、現在の日本でこのS&OPが完成していると言える企業は、まだ極めて少数です。当連載の最大の目的一つは、S&OPを多くの企業で実現して頂くヒントを提供する事です。S&OPは、日本語に訳すと「販売・業務計画」となりますが、「Operation」と日本語の「業務」のニュアンスにギャップがあるため、S&OPと直接、呼称されることが多いようです。S&OPについては、様々な定義がなされていますが、まとめると、下図のような定義が一般的です。
 
scm
 
 日本でこれまで普通に行われていた「生販計画」に近いようですが、最近の用語の使われ方としては、本来の「需給バランス」の意味は希薄になっており、数量主体の世界である「SCM」と金額主体の「事業計画」の間の整合性を確保するという意味で専ら使われることが多くなっています。
 

2.今なぜ、S&OPが求められているのか

 
 S&OP自体は、1988年にディック・リング氏とウオルト・ゴダード氏が提唱した概念で、決して新しいものではありません。しかし、これまでS&OPはSCMのトレンドとはなっていませんでした。それがここ数年急に注目されるようになってきたのは、SCMの道具建てが整ってきたという背景に加えて、実際にSCMが経営の役に立っていないのではないか、という反省が急激に高まってきたからです。
 
scm
 
 納期遵守、在庫削減など企業のサプライチェーン・オペレーションには、SCMは無くてはならない仕組みとして定着しています。それにもかかわらず、事業計画達成の直接の役に立っていないという認識が高まってきたのは、サプライチェーン上の「数量」の管理がうまくいっても、それが「カネ」、つまり事業計画の達成には必ずしも繋がっていないという問題が直視され、顕在化したからです。
 
 日々のオペレーションに携わっている販売・需給調整・生産・購買・物流などSCMの現場では、日々発生する計画と実績のギャップを埋めるために長時間を要しており、迅速なアクションがとれていないという問題意識があります。日常レベルのSCMオペレーションにもトップマネジメントを巻き込み意思決定のスピードアップを図りたいという強い思いがあります。しかし、トップマネジメントの必要とする「カネ」の視点で日々のSCMのオペレーションが評価されていないために、トップマネジメントを日常業務オペレーションに直接巻き込むことができずに、意思決定の時間を短縮することができません。
 
 一方、トップマネジメントも自分自身が直接SCMをコントロールしている感覚が薄く、部下への指示を通じての靴の上から痒いところを掻いているようなもどかしさを感じることも多いようです。この様にS&OPの取り組みにおいてはトップと現場の利害は一致しており、その前提さえ満足されれば、遂行に際して全社意識改革は然必要になるとしても、比較的取り組みやすいテーマであると言えます。
 
 S&OPは、SCMの評価・実行における単なる「数量」中心のオペレーションに「金額」の視点を加えようとする試みであり、企業の本来の目的である事業計画達成の確度を上げようとする必然的な流れといえます。以上、なぜ今、S&OPが求められているのかが理解頂けたと思います。次回は、S&OPで実現される業務から解説を進めます。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

小山 太一

SCMの効率を新しいKPIで見える化し、問題点を明らかにします。 新しいKPI 『面積原価』は、評価に時間軸を含めることで、リードタイム・在庫・原価のトレードオフを解決します。

SCMの効率を新しいKPIで見える化し、問題点を明らかにします。 新しいKPI 『面積原価』は、評価に時間軸を含めることで、リードタイム・在庫・原価のトレ...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
サプライチェーンマネジメントにおける自律分散と情報共有のインサイト

 組織のマネジメントを「意思決定は自律分散的か中央集権的か」と、「情報の共有化がなされているか否か」との2つの視点によって分類してみましょう。  近代経...

 組織のマネジメントを「意思決定は自律分散的か中央集権的か」と、「情報の共有化がなされているか否か」との2つの視点によって分類してみましょう。  近代経...


SCMの一環としての輸送とは 儲ける輸送改善 (その3)

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...


サプライチェーンの戦略的経営モデル -人間系と情報技術(ICT)の融合-

 生産財メーカーの今後の経営モデルをサプライチェーンの原理原則からみると、熟練をベースとした人間系と情報技術(ICT)の融合といえます。「BTB(ビジネス...

 生産財メーカーの今後の経営モデルをサプライチェーンの原理原則からみると、熟練をベースとした人間系と情報技術(ICT)の融合といえます。「BTB(ビジネス...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
物流倉庫と5S すっきりした物流現場のつくり方(その1)

◆ 物流倉庫でのしつけ  物流現場を訪問すると非常にすっきりとした現場に出会うことがあります。こういった現場から生み出される物流はさぞかし高品質であ...

◆ 物流倉庫でのしつけ  物流現場を訪問すると非常にすっきりとした現場に出会うことがあります。こういった現場から生み出される物流はさぞかし高品質であ...


現場での立ち会議 物流問題の解決は3現主義で(その2)

       1. 3現主義の典型例  物流過程で起きた問題点は3現主義で解決していきましょう。物流上の問題点の例として物流品質不良が挙げられ...

       1. 3現主義の典型例  物流過程で起きた問題点は3現主義で解決していきましょう。物流上の問題点の例として物流品質不良が挙げられ...


物流の発生源に着目せよ 究極の物流改善に取り組め(その1)

        皆さんは常日頃物流改善に取り組まれているとは思いますが、その効果がしだいに小さくなっていくことに悩まれている方もいらっしゃるかもしれ...

        皆さんは常日頃物流改善に取り組まれているとは思いますが、その効果がしだいに小さくなっていくことに悩まれている方もいらっしゃるかもしれ...