SCMの適切な評価指標 SCM最前線 (その12)

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 前回のその11に続いて解説します。
 

3. よく使われているSCM指標の評価

 
  下記は、一般的にSCMで使われている代表的なSCM評価指標ですが、なかなか、適切なSCM評価指標がありません。
 
SCM
 

(1) SCM評価指標の要件

 
 SCM評価指標として本来備えるべき要件は、次の5項目です。
 
SCM
 
要件1:先行性 
 SCM評価指標の目的は現状のSCM効率を評価し将来のSCMの改善に役立てていくことです。したがって、SCM指標は過去の結果を表すだけでなく、結果に先行して手を打つための改善のヒントを示すものでなければなりません。
 
要件2:内部記述性 
 たとえ会社全体のSCM効率性の問題が明らかになったとしても、各部門内部の、ステークホルダーそれぞれの問題が示唆されなければ改善には繋がりません。企業、セグメント全体の効率だけでなく、各部門内部のSCMの状況が表現される必要があります。
 
要件3:総合性
  SCMは、単にモノを必要な場所に、必要な量、必要なタイミングで供給するだけでなく、これらのオペレーションの結果として、事業目標達成をコントロールできることが必要です。「数量」「金額」「時間」の各視点から総合的にSCMの効率、利益率を示す評価指標であることが求められます。
 
要件4:理解容易性
 SCM評価指標は単にSCMの担当マネジメントや経営戦略・財務部門だけのものではありません。それは、社長から現場の作業員に至るまで全社でSCMの改善活動に取り組んでいくためのツールでなければなりません。その意味で、指標は全社員にとって容易に理解できるものであることが重要です。
 
要件5:データ把握性 
 SCM改善の進捗度を定量的に把握できることは必須であり、そのために評価指標がデータとして把握できることは当然です。
 

(2) 代表的SCM評価指標の評価

 
 前節で述べた5要件で従来の評価指標を評価してみましょう。
 

(2-1) 伝統的SCM評価指標:リードタイム、在庫、原価 

 
 「リードタイム」、「在庫」、「原価」は、SCMプロジェクト目標としてセットでよく採用されます。
 
SCM
 
 下表は、これら伝統的SCM評価指標の評価をまとめたものです。
 
SCM
 
 各指標とも、先行性、内部記述性、理解容易性、データ把握性の基本的要件は満たしていると考えられます。しかし、総合性の観点で、評価指標要件を満たしているとは言えません。なぜなら、これら指標は、時間、数量、金額の各側面のみしか表現しておらず 「総合性」 の観点であるべきSCM指標としての要件を満たしていないからです。個別の側面だけでSCMが評価できないのは当然のことです。それであるが故にセットで取り扱われるのですが、やっかいなことに下図のようにこれら指標間にはトレードオフの関係が存在しています。
 
SCM
 
 「リードタイムを短縮するための在庫を保持」や「製造ロットを大きくしてのダンゴ生産で見かけの製造原価を低減」「購買部門でのまとめ買いで単価低減と在庫の増大」などが、これらトレードオフの例です。この様な意味で、伝統的SCM評価指標は「総合性」の観点で‘C’の評価としています。
 

(2-2) 資産効率:ROA、棚卸資産回転率

 
 ROAは、企業の投入資産で会計年度において生み出された利益の比率を表したものであり、企業活動の効率を示しています。近年では、多くの企業の決算発表にROAが示されるようになっています。また、中期経営計画で、営業利益率などの従来からの経営指標に加えて、ROAが目標として設定されるようになっています。このようにROAは、多くの企業で認知された優れた業績の評価指標であると言うことができます。しかし、このROAをSCMの評価指標として活用することは、以下の観点で問題があります。まず、ROAは前期の結果であり、今後手を打つため現在の姿を示しておらず、「先行性」 要件を満たしていません。
 
SCM
 
 さらに、ROAは 「内部記述性」 の観点で要件を満たしていません。ROAは、事業部やセグメント内部の効率に関しては何も表現できていないからです。棚卸資産回転率は、棚卸資産がどの程度効率的に企業活動で活用され売上に繋がっているかを示す指標です。多くの企業でこの指標もSCMの効率を示す指標として活用されていますが、利益の観点での評価でなく、「総合性」 の観点で不十分です。
 
SCM
 
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 前回のその11に続いて解説します。
 

3. よく使われているSCM指標の評価

 
  下記は、一般的にSCMで使われている代表的なSCM評価指標ですが、なかなか、適切なSCM評価指標がありません。
 
SCM
 

(1) SCM評価指標の要件

 
 SCM評価指標として本来備えるべき要件は、次の5項目です。
 
SCM
 
要件1:先行性 
 SCM評価指標の目的は現状のSCM効率を評価し将来のSCMの改善に役立てていくことです。したがって、SCM指標は過去の結果を表すだけでなく、結果に先行して手を打つための改善のヒントを示すものでなければなりません。
 
要件2:内部記述性 
 たとえ会社全体のSCM効率性の問題が明らかになったとしても、各部門内部の、ステークホルダーそれぞれの問題が示唆されなければ改善には繋がりません。企業、セグメント全体の効率だけでなく、各部門内部のSCMの状況が表現される必要があります。
 
要件3:総合性
  SCMは、単にモノを必要な場所に、必要な量、必要なタイミングで供給するだけでなく、これらのオペレーションの結果として、事業目標達成をコントロールできることが必要です。「数量」「金額」「時間」の各視点から総合的にSCMの効率、利益率を示す評価指標であることが求められます。
 
要件4:理解容易性
 SCM評価指標は単にSCMの担当マネジメントや経営戦略・財務部門だけのものではありません。それは、社長から現場の作業員に至るまで全社でSCMの改善活動に取り組んでいくためのツールでなければなりません。その意味で、指標は全社員にとって容易に理解できるものであることが重要です。
 
要件5:データ把握性 
 SCM改善の進捗度を定量的に把握できることは必須であり、そのために評価指標がデータとして把握できることは当然です。
 

(2) 代表的SCM評価指標の評価

 
 前節で述べた5要件で従来の評価指標を評価してみましょう。
 

(2-1) 伝統的SCM評価指標:リードタイム、在庫、原価 

 
 「リードタイム」、「在庫」、「原価」は、SCMプロジェクト目標としてセットでよく採用されます。
 
SCM
 
 下表は、これら伝統的SCM評価指標の評価をまとめたものです。
 
SCM
 
 各指標とも、先行性、内部記述性、理解容易性、データ把握性の基本的要件は満たしていると考えられます。しかし、総合性の観点で、評価指標要件を満たしているとは言えません。なぜなら、これら指標は、時間、数量、金額の各側面のみしか表現しておらず 「総合性」 の観点であるべきSCM指標としての要件を満たしていないからです。個別の側面だけでSCMが評価できないのは当然のことです。それであるが故にセットで取り扱われるのですが、やっかいなことに下図のようにこれら指標間にはトレードオフの関係が存在しています。
 
SCM
 
 「リードタイムを短縮するための在庫を保持」や「製造ロットを大きくしてのダンゴ生産で見かけの製造原価を低減」「購買部門でのまとめ買いで単価低減と在庫の増大」などが、これらトレードオフの例です。この様な意味で、伝統的SCM評価指標は「総合性」の観点で‘C’の評価としています。
 

(2-2) 資産効率:ROA、棚卸資産回転率

 
 ROAは、企業の投入資産で会計年度において生み出された利益の比率を表したものであり、企業活動の効率を示しています。近年では、多くの企業の決算発表にROAが示されるようになっています。また、中期経営計画で、営業利益率などの従来からの経営指標に加えて、ROAが目標として設定されるようになっています。このようにROAは、多くの企業で認知された優れた業績の評価指標であると言うことができます。しかし、このROAをSCMの評価指標として活用することは、以下の観点で問題があります。まず、ROAは前期の結果であり、今後手を打つため現在の姿を示しておらず、「先行性」 要件を満たしていません。
 
SCM
 
 さらに、ROAは 「内部記述性」 の観点で要件を満たしていません。ROAは、事業部やセグメント内部の効率に関しては何も表現できていないからです。棚卸資産回転率は、棚卸資産がどの程度効率的に企業活動で活用され売上に繋がっているかを示す指標です。多くの企業でこの指標もSCMの効率を示す指標として活用されていますが、利益の観点での評価でなく、「総合性」 の観点で不十分です。
 
SCM
 

(2-3) 経済的付加価値:EVA 

 ここではEVAの説明は省略しますが、全社のSCMステークホルダーで活用するためには、やはりその考え方が難しいと言わざるを得ません。2000年当時、一時多くの企業でEVAを導入しようとする取り組みがありましたが、最近は企業の経営指標として取り上げる企業もめっきり減っているようです。以上、現在SCMの効率を測る指標としての評価を行ってきましたが、SCMの改革・改善活動に活用できる適当な評価指標はないというのが実情です。次回は、適切なSCM評価指標がないことで発生する製造業の問題 から解説を進めます。
 

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この記事の著者

小山 太一

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