QFD-TRIZ-TMの連携適用による高速2ポートバルブの開発 (その2)

 前回の①に続いて解説します。[顧客要求の本質を的確に発見し、顧客満足度に繋げる]

QFDの解説ページに記述したように、QFDは本来、品質表の作成からスタートして品質特性の重点目標を設計→生産技術→購入品→製造→検査(品質保証)にいたるまで、さまざまな工程に展開していくことでモノづくりのいたるところで顧客本位の品質を保証するために展開されます。(図5.)

しかし、『高速2ポートバルブ』開発のゴールは『絶対的強み』を確立することで、QFDフェーズでは顧客要求の本質を的確に把握して間違いなく売れる商品を企画するのが主目的ですから、本プロジェクトでは品質表の部分だけをしっかり検討しました。

 そして、直接顧客から、あるいは営業担当者を通じて集められた膨大な数の顧客情報(原始情報)を分析整理して要求品質展開表をまとめ、そこから狙うべき品質を様々な観点から絞り込んでいったのです。

 この結果、具体的な、そして挑戦的な開発(到達)目標が以下のように掲げられました。

  ■業界トップの高速応答性 :応答時間1/2以下(自社従来製品比)

  ■業界トップの低消費電力 :消費電力1/2以下(    〃     )

  ■業界トップの小型大流量 :流量3倍以上    (    〃     )

  このような重点開発目標が掲げられたのは、品質企画部分を検討する際、想定される顧客やその用途を幅広く検討したことによりますが、実はこの部分でとても特徴的な検討がなされたのです。 図6.にQFDによる検討のための構想図を示します。

 ここで、中央下の「要求品質」と「品質特性」を二元表で表わしてあるのが品質表で、顧客情報の原始データとして「クレームDB、特殊引合DB、品質情報DB、アンケート、ヒヤリング」などを利用していることを示しています。

 また、これらを分析・整理するメンバーは開発部門だけではなく、品質部門、営業部門、生産部門から参集し、協同で検討していることも分かります。

 そして大きな特徴が、右側にある「顧客・用途」と「要求品質」を二元表で表した、「用途-品質展開」と称した「要求品質ウェイト(重み付け)」の検討表です。 図7.に用途-品質展開(表)を示します。

 実際に作成された表は非常に大きいものですが、ここでは分かりやすく示すために顧客・用途としてチップ部品の不良品を排出するプロセスにおいて圧縮空気で吹き飛ばす、という用途に絞って表示しています。 ここでそれ以外の部分が黒くマスキングされているのは、将来の開発にも利用できるために抽象的な表現であっても非表示にすべきとの判断に基づいています。

 この二元表を利用して、さまざまな顧客・用途を「使用量、重要度、展開性、発展性」などの市場評価項目から魅力度を評価し、魅力度の高い顧客・用途について、関係の深い顧客要求品質を特定していこうというものです。

通常のQFD(品質表)ではここまで綿密な検討は行われず、想定顧客の視点での評価は品質表の「品質企画」部分で「顧客重要度」として、ざっくりとした重み付けにとどまります。 しかし、開発対象の小型2ポートバルブは、さまざまな顧客がさまざまな用途で、工場の製造工程に組み込む製品です。 つまり、顧客も用途もさまざまであるために、どの要求品質が重要で、どの要求品質はあまり重要ではないということを特定することが極めて困難である、ということなのです。

 一方で、どんな顧客・用途にもある程度満足していただけるような製品に仕上げたとしても、固有の特長は発揮できず、感動をもたらすような新製品にはとうていなりません。 そこで開発者達は「用途-品質展開」の分析で、顧客や用途に思い切ってウェイト付けをしてそれを要求品質に置き換えるという作業を行ったのです。 その結果、戦略的に決断されたのが先に示した3項目の挑戦的な開発(到達)目標なのです。

 図8.に顧客要求品質を品質特性に変換した品質表を示しています。 明確に設定された商品企画上の目標を具体的な設計目標に落とし込み、それらを実現するために適用する技法が示されています。 具体的な品質特性はマスキングされていますが、工学的な矛盾問題が存在する特性や、コストダウンを図るべき課題(構造)などについてはTRIZで、安定品質を作りこむための最適パラメータの設定にはTMで検討することを表しています。


 図9.は、TRIZを適用する前段階でQFD(品質表)を適用した効果を示したものです。 新製品開発の明確な目標と、開発関係者間の意識合わせがQFDを適用することによって強固なものになったことは疑う余地がありません。

 


この記事の著者

笠井 肇

QFD、TRIZ、QEを駆使した絶対的強みの確立

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