QFD-TRIZ-TMの連携適用による高速2ポートバルブの開発 (その5)

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【QFD-TRIZ-TMの連携適用による開発事例 連載目次】

 前回の③続いて解説します。以上①から④で見てきたように、QFD、TRIZ、TMの3技法を製品開発の初期段階で連携適用した結果、開発者達の期待を上回る結果が得られました。 右に、図4.ですでに紹介した 『高速2ポートバルブ』(開発結果)を再掲します。 この高速2ポートバルブは、工場の製造工程において圧縮空気配管に接続して使われ、空気流を高速(瞬間的)に出したり切ったりするスイッチの役割を果たします。 そしてその性能は、開発当初に掲げた以下の目標をクリアすることができました。

  ■業界トップの高速応答性 :応答時間1/2以下(自社従来製品比)

  ■業界トップの低消費電力 :消費電力1/2以下(    〃     )

  ■業界トップの小型大流量 :流量3倍以上    (    〃     )

 右の図16.は製品の断面図と、各技法で検討採用された要素を示したものです。 QFDでは、上記3項目の開発目標値を設定したほかに、設置や操作にかかわるインタフェース仕様や製品内部の仕様、駆動回路などについて目標設定されています。 次のTRIZにおいて、開発目標を具現化するための各種コンセプトやコスト低減するための多くのアイデアを創出し、それらをQCD(Quality/Cost/Delivery)の観点から評価して有効なアイデアを結合することで斬新なコンセプトをまとめ上げました。 そしてTMでは、電磁解析ソフトを使ったシミュレーションにより全く新しい構造のソレノイドの安定品質を確保できる確証を得ることができたのです。

 

                                    

  図17.および図18.に高速2ポートバルブの製造工程での使用例を示します。 

 図17.は良品・不良品の選別工程で使われる様子を表しています。バルブが制御する空気流の圧力波形が従来のもの(赤色の破線)に比べて鋭く変化している(青色の実線)ため、高速で流れてくる小形の食品や半導体、電気部品などの不良品を画像判定したのち、その電圧(パルス)波形に対応して素早く不良品を高圧空気で吹き飛ばします。 これにより、タクトタイムの短縮や選別精度の向上が図られます。

 

 図18.はブロー工程での使用例ですが、そのパルス駆動できる特長を生かして圧縮空気を高速で制御できることに加え、間欠ブローすることによって圧縮空気の使用量や使用電力を削減できる効果も得られます。

 本製品は、2009年に発売されてから新規顧客の引き合いにもつながり、予想を大幅に超える販売量になっているということです。

         

    最後に、図19.に開発者達のまとめた3技法を適用する際のポイントを紹介します。 これ...

【QFD-TRIZ-TMの連携適用による開発事例 連載目次】

 前回の③続いて解説します。以上①から④で見てきたように、QFD、TRIZ、TMの3技法を製品開発の初期段階で連携適用した結果、開発者達の期待を上回る結果が得られました。 右に、図4.ですでに紹介した 『高速2ポートバルブ』(開発結果)を再掲します。 この高速2ポートバルブは、工場の製造工程において圧縮空気配管に接続して使われ、空気流を高速(瞬間的)に出したり切ったりするスイッチの役割を果たします。 そしてその性能は、開発当初に掲げた以下の目標をクリアすることができました。

  ■業界トップの高速応答性 :応答時間1/2以下(自社従来製品比)

  ■業界トップの低消費電力 :消費電力1/2以下(    〃     )

  ■業界トップの小型大流量 :流量3倍以上    (    〃     )

 右の図16.は製品の断面図と、各技法で検討採用された要素を示したものです。 QFDでは、上記3項目の開発目標値を設定したほかに、設置や操作にかかわるインタフェース仕様や製品内部の仕様、駆動回路などについて目標設定されています。 次のTRIZにおいて、開発目標を具現化するための各種コンセプトやコスト低減するための多くのアイデアを創出し、それらをQCD(Quality/Cost/Delivery)の観点から評価して有効なアイデアを結合することで斬新なコンセプトをまとめ上げました。 そしてTMでは、電磁解析ソフトを使ったシミュレーションにより全く新しい構造のソレノイドの安定品質を確保できる確証を得ることができたのです。

 

                                    

  図17.および図18.に高速2ポートバルブの製造工程での使用例を示します。 

 図17.は良品・不良品の選別工程で使われる様子を表しています。バルブが制御する空気流の圧力波形が従来のもの(赤色の破線)に比べて鋭く変化している(青色の実線)ため、高速で流れてくる小形の食品や半導体、電気部品などの不良品を画像判定したのち、その電圧(パルス)波形に対応して素早く不良品を高圧空気で吹き飛ばします。 これにより、タクトタイムの短縮や選別精度の向上が図られます。

 

 図18.はブロー工程での使用例ですが、そのパルス駆動できる特長を生かして圧縮空気を高速で制御できることに加え、間欠ブローすることによって圧縮空気の使用量や使用電力を削減できる効果も得られます。

 本製品は、2009年に発売されてから新規顧客の引き合いにもつながり、予想を大幅に超える販売量になっているということです。

         

    最後に、図19.に開発者達のまとめた3技法を適用する際のポイントを紹介します。 これらは、開発の現場で実践した結果に基づいて記述されていますので、これから導入しようと計画されている方たちにも大いに参考になるものと思われます。

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

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この記事の著者

笠井 肇

QFD、TRIZ、QEを駆使した絶対的強みの確立

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