QFD-TRIZ-TMの連携適用による高速2ポートバルブの開発 (その1)

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【QFD-TRIZ-TMの連携適用による開発事例 連載目次】

本事例は、株式会社コガネイ様のご依頼により、空圧機器の新製品開発にQFD(品質機能展開)、TRIZ(発明的問題解決理論)、TM(タグチメソッド)を一貫して適用したもので、開発者の片桐朝彦様ら(以下開発者達)が日本TRIZシンポジウムほかで発表・講演された内容を、お手伝いしたコンサルタントの立場から引用概説したもので、株式会社コガネイ様、および片桐様のご好意により適用事例として紹介させていただきます。

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

 

1.QFD-TRIZ-TM連携適用の狙い

 図1.に3技法の連携適用による製品開発の概念を示します。 製品開発にあたっては、製品を購入・使用していただく顧客が最上位にあるわけですから、その声(顧客ニーズ)を真摯に受け止め分析することを起点とします。

QFDで顧客の声を品質特性・機能に展開して開発目標や課題を明確にします。 そこで明確になった技術課題や問題に対してTRIZを適用して画期的な解決コンセプトを生成します。 そして具体的な設計に入る段階でTMを適用して、バラツキを抑えた高品質を確保するというものです。

 

しかしこれは理想であって、実際の開発案件での実践はなかなかこの絵のようには運ばないものです。開発者達が素晴らしかったのは、自分たちの開発プロジェクトである『高速2ポートバルブ』のゴールは『絶対的強み』を確立することであるとして、各技法それぞれの目標を明確に、具体的に掲げたことにあります。

 

それは図2.に示すように、QFDでは顧客要求の本質を的確に把握して間違いなく売れる商品を企画するとともに、営業、企画も含めた部門間や顧客と情報を共有し、TRIZでは敢えて高い目標を設定して、他社の追従や既存技術の折衷案ではなく、ユニークな解決策を創出、さらにTMなどで新たな技術に対する事前検証を行ってユニークな解決策に伴うリスクを最小化しようというものです。

 

 開発者達にとって3技法は、いずれも初めて経験するものであり、それらを学び理解できたとしても実践に適用して結果を出すことは極めて困難と思われます。 そこで開発者達は3技法の導入による結果出しにこだわって、図3.に示すような技法導入にあたっての基本指針を設定しました。


 ここで特筆すべきことは、技法を修得することは当然のこととして、それらを開発プロセス全体に適用するために、セミナーによる修得・実践の日程と開発日程を同期化することを最重要項目に掲げていることです。

 そして、着手してから3年という期限を明確に設定して、適用した新商品が利益を出すことによって...

【QFD-TRIZ-TMの連携適用による開発事例 連載目次】

本事例は、株式会社コガネイ様のご依頼により、空圧機器の新製品開発にQFD(品質機能展開)、TRIZ(発明的問題解決理論)、TM(タグチメソッド)を一貫して適用したもので、開発者の片桐朝彦様ら(以下開発者達)が日本TRIZシンポジウムほかで発表・講演された内容を、お手伝いしたコンサルタントの立場から引用概説したもので、株式会社コガネイ様、および片桐様のご好意により適用事例として紹介させていただきます。

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

 

1.QFD-TRIZ-TM連携適用の狙い

 図1.に3技法の連携適用による製品開発の概念を示します。 製品開発にあたっては、製品を購入・使用していただく顧客が最上位にあるわけですから、その声(顧客ニーズ)を真摯に受け止め分析することを起点とします。

QFDで顧客の声を品質特性・機能に展開して開発目標や課題を明確にします。 そこで明確になった技術課題や問題に対してTRIZを適用して画期的な解決コンセプトを生成します。 そして具体的な設計に入る段階でTMを適用して、バラツキを抑えた高品質を確保するというものです。

 

しかしこれは理想であって、実際の開発案件での実践はなかなかこの絵のようには運ばないものです。開発者達が素晴らしかったのは、自分たちの開発プロジェクトである『高速2ポートバルブ』のゴールは『絶対的強み』を確立することであるとして、各技法それぞれの目標を明確に、具体的に掲げたことにあります。

 

それは図2.に示すように、QFDでは顧客要求の本質を的確に把握して間違いなく売れる商品を企画するとともに、営業、企画も含めた部門間や顧客と情報を共有し、TRIZでは敢えて高い目標を設定して、他社の追従や既存技術の折衷案ではなく、ユニークな解決策を創出、さらにTMなどで新たな技術に対する事前検証を行ってユニークな解決策に伴うリスクを最小化しようというものです。

 

 開発者達にとって3技法は、いずれも初めて経験するものであり、それらを学び理解できたとしても実践に適用して結果を出すことは極めて困難と思われます。 そこで開発者達は3技法の導入による結果出しにこだわって、図3.に示すような技法導入にあたっての基本指針を設定しました。


 ここで特筆すべきことは、技法を修得することは当然のこととして、それらを開発プロセス全体に適用するために、セミナーによる修得・実践の日程と開発日程を同期化することを最重要項目に掲げていることです。

 そして、着手してから3年という期限を明確に設定して、適用した新商品が利益を出すことによってこそ適用の妥当性が確認できるという、厳しい目標を定めています。

 またコンサルティングにあたる講師も “運命共同体”との位置づけで、QFDのスタートから結果出しまで一人で責任を負うように依頼されたのです。

 

 このような背景のもとで、技法修得のセミナーと、開発テーマでの実践適用が同時進行で始まりました。 プロジェクトの評価は3年間で結果(=利益)を出せたかどうかです。 図4.に適用した製品 『高速2ポートバルブ』(開発結果)を示します。

 

 次回から、QFD、TRIZ、TMの各フェーズにおける具体的な検討内容を紹介します。

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この記事の著者

笠井 肇

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