QFDの歴史(その2)品質表の提案

 前回述べた「品質展開のシステム」は設計品質の設定法としては、未だ不十分なものでした。これを解決したのが、その報告に引き続き5月に、三菱重工(株)神戸造船所により提案された品質表です。これは「船の品質とは何か」という議論から始まったと言われています。

 西村弘一氏[7] は「船の設計と品質表」について、従来の伝統的重要諸特性のみが船の品質を代表するのでなく、その諸特性の相関も含めて船の品質を現すべきこととし、設計という工程の機能とは何かを報告しました。設計の機能は情報の変換であり、インプット・データが要求品質で、アウトプット・データが設計品質としています。これは正に今日の品質表の基本的考えと同じです。しかしここでいう要求品質は契約仕様書に記された諸特性としていますが、今日では前者は顧客側の言語情報、後者は企業側の品質特性としており、当時は明確化されていませんでした。

 「品質表」での1次レベルは品質特性表現、2次、3次レベルで言語による機能表現になっています。また最後の表では1次に船の機能をとり、その働きを船の特性とサブシステムに結びつけています。品質表の3っの軸として、「働き」、「機能」および「物性」をあげています。「働き」はいわゆる基本機能を指しており、「機能」は“はたらき”を満足するために発揮する必要のある従属機能因子の集合です。以上船の品質を明らかにしようとする最初の試みとしては重要ですが、未だ「品質表」としての考え方として固まっていないことが分かります。

 同じ号に鈴木康之氏[8] も「舶用大形ディーゼル機関における設計改善活動の試み」の中で、品質表を報告しています。この中で紹介されている「舶用大形ディーゼル機関の品質表」は正に今日の要求品質展開表そのもので、またこの部品構成表は部品展開表と同様です。ただしマトリックスは示されていません。さらに品質レベルの向上に対するユーザー要求の数値化も試みています。ただし改善案を代用品質特性と呼ぶなど、若干の用語の混乱がみられます。

 以上の2つの報告は、品質表の最初の提案として重要です。その内容は、翌年に報告された高柳昭氏によって明確化されました。そこで示された品質表の定義は、次の通りです[9]。
「真の品質を機能中心に体系化し、この機能と代用特性としての品質特性の関連を表示したものを品質表という。この品質表は、品質管理活動を進めるための基準となるものである。」

 以上の3つの報告が、品質表の重要文献といえます。しかしこれらの提案では、品質展開ないし品質機能展開QFDという言葉はまだどこにも現れていません。

 三菱重工・神戸造船所が品質表を提案して以来、多くの事例が報告されましたが、田尻喜明氏は「品質表から工程設計、QC工程表への展開」について紹介しています[10] 。この中で示されたQA表は設計情報を製造に伝達する重要な役割をもつもので、重要部品の重要特性の公差を示し、この公差を越えた場合の上位システムに対する影響を明らかにし、この情報をQC工程表に織り込むもので、今日も品質展開の要とされています。QA表のアイデアは布留川靖氏によるといわれています。

つづく

参考文献:

[7]西村弘一(1972):「船の設計と品質表」, 品質管理, Vol23, 5月臨時増刊号, pp71-74

[8]鈴木康之(1972):「船舶用大形ディ-ゼル機関における設計改善活動の試み」同上, pp.16-20

[9]高柳昭(1973) :「当社における受注生産の品質管理(その1)受注生産の品質管理活動ー品質表の構想について」, 品質管理, Vol.24, 5月臨時増刊号, pp.63-67

[10] 田尻喜明(1974): 「品質表から工程設計、QC工程表への展開」, 品質管理, Vol.25, 5月特別号, pp.69-73

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この記事の著者

赤尾 洋二

品質機能展開(QFD)の開祖

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