ユーザー視点を超えたベネフィットを提供するものづくり姿勢とは(CuboRex)

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ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消に向けた現場の取り組みについて取材し、ものづくり発展に役立つ情報をお届けしています。今回は不整地で活躍するハードウェアを提供する、株式会社CuboRexを紹介します。

 

◉この記事で分かる事
・顧客課題を解決するものづくりの姿勢
 

【企業紹介】

株式会社CuboRex(キューボレックス)は農地や建築現場等の凸凹な「不整地」と呼ばれる場所での作業負担軽減や効率化に取り組むため、不整地産業において「欲しい者が欲しい物を生み出せる社会」の実現を目指し、動力内蔵型タイヤやクローラなど不整地産業向けハードウェアの研究開発・販売を行うものづくり企業です。


1,顧客課題をものづくりで解決して社会貢献を目指す

(1)現場課題として着目した「不整地」というフィールド

不整地(ふせいち)とは田畑、建築現場、災害現場など、凹凸が激しかったり、舗装されていない未整備な土地の事を言います。

日本国内の不整地の例として、田畑が約437万ha、建築着工現場は年間約1.1万haあるとされ、これら不整地に関連する産業では多くの人が手作業で仕事をしています。そして不整地の多くは屋外であり季節や天候などにより、行う作業は変わる事から不整地に関係する産業(不整地産業)では解決したい課題は事業者ごとに様々です。

そのような多様な課題を解決する為に同社が取り組んでいるのはユーザー自身が課題解決の為に欲しいものを作る事ができるソリューションの提供です。

 

(2)不整地のパイオニアとして課題を解決する2つのプロダクト

今回の取材では電動クローラーユニットの「CuGo」、手押し一輪車(ねこ車)の電動化KIT「E-Cat Kit」の2プロダクトの動作をご案内いただきました。

 

●画像1,プロダクトの写真
左:電動クローラーユニット「CuGo」、右:ねこ車電動化KIT「E-Cat Kit」(装着例)

 

「CuGo」「E-Cat Kit」ともに不整地での移動を支援するプロダクトで、開発にあたり不整地産業のユーザーの声を取り入れるとともに、開発者、設計者自らが不整地産業の現場に行き、現状の作業を体験しユーザーの声の真因を探り、プロトタイピングを用いて対話と実証、検証を繰り返して製品化しています。

特にCuGoは不整地産業での多様な課題を解決する為にテストロボットをスピーディーに制作できる世界初のテスト用電動クローラーユニットで、アルミフレーム外装による高い耐久性とカスタマイズ性を持ち、内蔵する大動力機構により人が乗って走れる走破性を有しています。自律・自動走行の研究・事業開発用のユニットとして既に市販を開始しており、従来オーダー発注や自社製作で行う必要のあった不整地移動機の開発現場で発生していた多大なコスト、時間、不整地走行の要であるクローラー開発の困難さなどの課題が、CuGoというユニットの登場により大きく改善されることが期待されています。

 

2,顧客が表明できなかった課題を明らかにする事で生まれる信頼

「お客様からお聞きした課題点は非常に大きなヒントです。しかし、課題の中には現状作業の流れに起因するものや、前提としている条件があったうえでの課題というものもあります。」そう話していただいたのは同社機械設計担当の小川貴之氏。「CuGo」などのメカニカル機構やエレキ設計を担当されている小川氏も実際の不整地産業の現場で作業を行い、作業の困難さや身体への負担度合いを実際に体験されています。

 

 

●画像3,機械設計担当 小川貴之氏
(現場でお客様の仕事を体験する事は課題解決につながる設計にとって非常に重要との事)

 

例えばE-Cat Kitに搭載する電源を見てみても現場での体験が役立っているとの事。搭載電源の容量をどのようにするか?電源の設置場所、方法についても現場での体験を通じて知る事ができたプロダクトの利用環境想定を活かして設計を行っており、こうして開発された製品はフィールドで不整地産業のユーザー課題解決に具体的に貢献し、作り手と使い手の信頼が構築されています。

 


CuGo活用例(農業:キャベツ収穫) CuboRex Youtubeより
(収穫かごの下部に4台のCuGoが設置されている)

 

E-Cat Kit活用例 CuboRex Youtubeより
(写真左より、農家:みかん運搬・林業:木材運搬・建設:コンクリート運搬)

 

3,顧客の声を聞き、真因を探る

「不整地産業での課題をロボットで解決する」という未踏の領域でのものづくりに取り組む同社は、作り手と使い手による対話、ラピッドプロトタイピングによる具体化を活用している様子を取材を通じて垣間見る事ができました。

顧客の課題感をお聞きした上で、自らも現場で体験し課題感を精査する、対話に加え具体的なモノを通じてフィットアンドギャップを繰り返し行う、移転可能な他産業での技術を取り入れるなど愚直に設計者自らが課題に向き合う姿勢は、顧客第一主義や顧客志向の一歩先、人間中心設計ともいえる姿勢であり、製品や産業を問わず幅広いものづくり現場にとって参考になるのではないでしょうか。

 

●画像4,軽トラックを意識した作業台
(作業エリアの隅には不整地産業で利用されることの多い軽トラックの荷台を模した作業台がある。)

 

同社が生み出すプロダクトは、CuGoを使用した自律走行のロボットが生まれたり(2022年5月に岩手大学の学生が独自にCuGoをカスタマイズして自律ロボットを開発した)、和歌山県から県下13,000戸の果樹農家を救う事業としてE-Cat Kitを認定されたりなど、同社が目指す「欲しい者が欲しい物を生み出せる社会」の実現に向けた事業は各界から注目を集めています。

未踏の領域での課題解決をものづくりで実現する事を目指す同社のこれからに注目です。

■記事内容に関連するリンク

https://www.monodukuri.com/gihou/article/3747  (「モノのデザイン」と「コトのデザイン」とは)
https://www.monodukuri.com/gihou/article/3227  (技術を価値に変える戦略)

 

■まとめ

・顧客課題を解決するものづくりの姿勢

  1. 顧客の声を聞く事に加え、設計者自身が顧客作業を体験する
  2. 対話とプロトタイプを活用したコミュニケーションを活用する
  3. ラピッドプロトタイピングとフィットアンドギャップの取り組み
     

【インタビューにご協力いただいた方】

株式会社CuboRex 小川貴之 様


【会社概要】

・社名 株式会社CuboRex ・拠点 東京ラボ:東京都葛飾区 和歌山営業所:和歌山県有田郡 ・設立 2016年3月 

  HP https://CuboRex.com/

 


この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。


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