経営方針と市場開拓 中小メーカ向け経営改革の考察(その20)

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1.新製品開発を連続させる場合の問題点

 前回のその19に続いて解説します。年間の製品開発件数の目標を決めて、連続的に製品開発を行っている企業の場合、新規開発品を増やしても、古くなった製品が原因になって全体の利益率が低下していく事があります。この対策としては、製品別に限界利益率の推移が判るようにして、一定限度を下回った製品は廃番にするル-ルを設けておくと良いでしょう。
 
 このル-ルがないままに製品の品目を増やしていくのは危険です。古くなった製品の利益率低下による影響以外に、品目数が増えることで管理コストも増えることになるから、経営規模に応じた品目数の限界を決めておき、廃番の検討を行うようなシステムを設けることも必要です。
 

2.クレ-ム対策と顧客の信頼性

 納入品にクレ-ムが発生すること自体が問題なのではなく、その処理の仕方が問題になります。処理の仕方によっては却って信用が増加して、その後の取引きに有利に作用する場合があります。
 

(1)クレ-ム処理の適正な方法

 クレ-ム発生後の処理の仕方が適切であれば、信用が増加して以降の取引きが好転する場合もあります。次にクレ-ム処理の手順を示します。
 
・丁重に謝り、言い訳はしない。
・代品納入または修復を行うまでの期間を明示し、了解を求める。
・原因調査のため、発見した担当者に状況の聞き取りについて協力を求める。
・再発防止策を講じて文書で報告する。
 
 クレ-ムの内容によっては、納入先側の扱い方などに問題があると考えられる場合があります。そのような場合でも、謝ることなく言い訳を先に述べたりすると顧客を怒らせてしまうので、注意が必要です。謝った上で調査を行い、顧客側に問題があることがはっきりすれば、その事実状況だけを報告します。その場合でも、自企業の反省点も明らかにします。例えば、扱い方の説明に問題はなかったのかという点を振り返ってみます。また、クレ-ム発生時には、あるチャンスが得られる場合があります。クレーム処理のために顧客を訪問するような場合、普段は入ることができないような場所に入っていけます。そこで納入品の周辺を見回して関連製品に関する観察を行い、競合する企業の製品を確認することや、新規開発品の情報収集などができるのです。ただし、顧客に迷惑が及ばないような配慮は不可欠です。
 

(2)良くないクレ-ム処理

 クレ-ム発生時、納入先に言い訳を述べることに終始して顧客を怒らせることは、考えられる状況です。また、クレ-ムに対する再発防止対策書を提出するように顧客から要請される事があります。その内容について、私が某企業から相談を受けた例を解説します。文書を見たところ、記載されている内容が社内の現状から考えて無理があるように感じたので「実施できないような事は記載しないほうが良い」と助言しました。すると「いつもこのような書き方をしているから、これで良いのではないか」と反発されました。このような感覚で報告書を提出すると、その通りに実施していないことが後で判り、顧客の心証を悪くするだけでなく、問題解決の貴重な機会を失い、技術力...

1.新製品開発を連続させる場合の問題点

 前回のその19に続いて解説します。年間の製品開発件数の目標を決めて、連続的に製品開発を行っている企業の場合、新規開発品を増やしても、古くなった製品が原因になって全体の利益率が低下していく事があります。この対策としては、製品別に限界利益率の推移が判るようにして、一定限度を下回った製品は廃番にするル-ルを設けておくと良いでしょう。
 
 このル-ルがないままに製品の品目を増やしていくのは危険です。古くなった製品の利益率低下による影響以外に、品目数が増えることで管理コストも増えることになるから、経営規模に応じた品目数の限界を決めておき、廃番の検討を行うようなシステムを設けることも必要です。
 

2.クレ-ム対策と顧客の信頼性

 納入品にクレ-ムが発生すること自体が問題なのではなく、その処理の仕方が問題になります。処理の仕方によっては却って信用が増加して、その後の取引きに有利に作用する場合があります。
 

(1)クレ-ム処理の適正な方法

 クレ-ム発生後の処理の仕方が適切であれば、信用が増加して以降の取引きが好転する場合もあります。次にクレ-ム処理の手順を示します。
 
・丁重に謝り、言い訳はしない。
・代品納入または修復を行うまでの期間を明示し、了解を求める。
・原因調査のため、発見した担当者に状況の聞き取りについて協力を求める。
・再発防止策を講じて文書で報告する。
 
 クレ-ムの内容によっては、納入先側の扱い方などに問題があると考えられる場合があります。そのような場合でも、謝ることなく言い訳を先に述べたりすると顧客を怒らせてしまうので、注意が必要です。謝った上で調査を行い、顧客側に問題があることがはっきりすれば、その事実状況だけを報告します。その場合でも、自企業の反省点も明らかにします。例えば、扱い方の説明に問題はなかったのかという点を振り返ってみます。また、クレ-ム発生時には、あるチャンスが得られる場合があります。クレーム処理のために顧客を訪問するような場合、普段は入ることができないような場所に入っていけます。そこで納入品の周辺を見回して関連製品に関する観察を行い、競合する企業の製品を確認することや、新規開発品の情報収集などができるのです。ただし、顧客に迷惑が及ばないような配慮は不可欠です。
 

(2)良くないクレ-ム処理

 クレ-ム発生時、納入先に言い訳を述べることに終始して顧客を怒らせることは、考えられる状況です。また、クレ-ムに対する再発防止対策書を提出するように顧客から要請される事があります。その内容について、私が某企業から相談を受けた例を解説します。文書を見たところ、記載されている内容が社内の現状から考えて無理があるように感じたので「実施できないような事は記載しないほうが良い」と助言しました。すると「いつもこのような書き方をしているから、これで良いのではないか」と反発されました。このような感覚で報告書を提出すると、その通りに実施していないことが後で判り、顧客の心証を悪くするだけでなく、問題解決の貴重な機会を失い、技術力向上を阻害することになり、結局は大きな損失を発生させるのです。
 
 この企業の現場を回ってみると、幾つかの対策書や報告書など、ただ体裁を繕って作文されたものが他にも見られました。上っ面を整えるばかりで、モラルの感覚が鈍ってしまったようです。これ以降、他の企業でも注意して見ていると、これに似た現象が見られました。顧客から要請された文書の提出に際して、体裁だけを繕う事が慣習になってしまうと、モラルが低下する事があるから、絶対に避けるように厳しく社内を指導する事が大切です。
 
 クレ-ム処理を適切に行うか、いい加減に行うか、その処置の仕方は企業の体質に変化を与えることになるので、代表者はクレ-ム処理の仕方について経営方針をきちんと決める事が大切です。
 

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この記事の著者

新庄 秀光

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