【SDGs取り組み事例】女性活躍の推進図り、働きやすい職場環境構築 旭工業有限会社

ダイバーシティ進め、組織の一体感を高める

旭工業有限会社(神奈川県綾瀬市)

目次

1.カーボン事業一筋、独自開発で活路を開く
2. 女性目線で働きやすい職場環境を実現
3.インクルージョンを推進、一人ひとりが活躍できる環境に
4.ものづくり技術を全国へ発信「Sumi Toaster」
5.子どもたちの“夢”を応援、そして世界へ

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1.カーボン事業一筋、独自開発で活路を開く

旭工業有限会社(嶋知之・代表取締役)の創業は1956(昭和31)年。今年66期目を迎えた同社は創業以来、軸受やシールリング、パッキンなど機械用カーボングラファイト(黒鉛ソリッド材・以下カーボン)製品の加工を中心に、オリジナル商品の開発から製造、販売も行っています。元々、日本カーボン精工株式会社(横浜市)から独立する形で事業を始めた同社。創業当初、工場周辺は田畑に囲まれた環境でしたが、時代と共に住宅も増え生活圏が形成されると、集塵(じん)機を使った粉塵対策を講じても洗濯物が黒くなるといった周辺環境との社会調和が難しくなり、現在の神奈川県綾瀬市に落ち着くまで2回の移転が行われたそうです。

同社建設時(綾瀬市内)のようす

写真説明】同社建設時(綾瀬市内)のようす(同社提供)

同社では、従来から「リサイクル可能な物は使用する」(目標15)ことを念頭に、カーボンの処分材や切削屑(くず)の分別・再利用といったリサイクル率の向上に加え、産業廃棄物の削減に取り組んでいたことから「これら環境対策は将来的(2030年目標)にSDGs(持続可能な開発目標)につながってゆく」とし2021(令和3)年5月「かながわSDGsパートナー」(同県主催)に登録。「働きやすい職場の環境づくり(目標8)」、「女性のエンパワーメント(同5)」[1]、「独自の商品開発(同9)」などの目標を掲げ、取り組みを進めています。

2. 女性目線で働きやすい職場環境を実現

女性活躍の促進を目的に女性従業員の雇用を進める同社ですが、毎年一定数の採用を行っており、2018(平成30)年当初の5人から、現在は全従業員男女34人の内、約3割に当たる11人の女性(正社員4人、パートタイマー7人)を採用しています。また、同社製造工程における「切削」や「磨き」、「機械操作」といった製造現場にも女性を配置。計5人の女性がそれぞれの現場で活躍しています。将来的には障がい者雇用も視野にダイバーシティ経営を推し進めるそうです。

女性従業員の雇用を進めるなか、嶋社長は「これまで思いも寄らなかった女性目線での気づきから、職場環境の設備・整備や生産性向上につながる改善がみられた」といいます。たとえば①強い力を入れないと機械に加工前の製品を取り付けることができない作業(工程)では、軽い力でも取り付け可能な治具を社内で作った結果、稼動率が向上した②重い製品を運ぶための台車を用意した…などです。また、機械操作が分かりやすく表示された操作パネルを設けるなど、安全面の配慮も行われています。

写真説明】製造現場で作業に当たる女性従業員(同提供)

これら以外に、職場環境整備の一環として女性更衣室と専用トイレの整備が進められてきましたが、新型コロナウィルス感染症対策(3密:密閉・密集・密接)として更衣室の拡大が行われています。

3.インクルージョンを推進、一人ひとりが活躍できる環境に

従業員のスキルアップ(目標4)に向けた研修会や講習会などを定期的に行っている同社では、2019年度は約70万円(計7回)、翌年度は約150万円(同24回)を社員教育に充てています。外部講師を招いたオンライン研修を中心に、コミュニケーション術や工場内の5Sに対する考え方を学んでいるそうです。また、時には社員が講師となり自らテーマを決め、ディスカッションが行われているほか、現場からのボトムアップで社内課題の解決に取り組んでいます。たとえば「稼動率向上」をテーマに行われたグループディスカッションでは、納期変更など「部署間の伝達事項の漏れ」について話し合いが持たれ、従業員それぞれに携帯端末を支給し、ビジネス用チャットツールを使い、情報を共有することで解決したほか、不良品などが出た際も即座に会議が開かれ、対応策が講じられるなど、インクルージョン[2]への取り組みが推し進められています。

定期的に開かれるグループディスカッション

写真説明】定期的に開かれるグループディスカッションのようす(同提供)

4.ものづくり技術を全国へ発信「Sumi Toaster」

カーボン加工の強みを生かし、独自商品の開発・販売(目標9)にも力を入れる同社では、加熱すると炭火と同等の遠赤外線を発するカーボンの特性に着目。2018(平成30)年から「Sumi(スミ)」シリーズとして鍋やプレート、トースターなどの製造・販売を行っています。元々、趣味としてバーベキューを楽しんでいた嶋社長ですが「火起こしができず、妻にからかわれたことが、誕生のきっかけだった」といいます。それ以降、日本バーベキュー連盟の会員となり、検定試験や炭火について研究を重ね続けるなかで、カーボンの特性を生かすことで、多くの食材をおいしく調理できることが分かり試行錯誤の結果、自社製品としてプレートが完成、販売を始めたということです。

2016(同28)年には綾瀬市ふるさと納税の返礼品としても採用され、現在は「Sumi Toaster(スミ・トースター)」や「Sumi Fuka Nabe(スミ・フカ・ナベ)」など4品が並びます。なかでも「Sumi Toaster」(11,000円・税込)は、外出自粛要請による巣ごもり需要や「おうちでパン作り」などのムーブメントでテレビや雑誌でも紹介されたことから大きな反響を呼び、販売数は「月200~300枚」(同社)、同市総合ランキングでも返礼品140品中、2位(2月現在)と好調です。

カーボン加工の強みを生かした「Sumi(スミ)」シリーズ㊧と「Sumi Toaster」

写真説明】カーボン加工の強みを生かした「Sumi(スミ)」シリーズ㊧と「Sumi Toaster」。写真左上から「Sumi Fuka Nabe」、「Sumi Nabe」、「Sumi Toaster」、「Sumi Ita grill(スミ・イタ・グリル)」(同提供)

また、地元ベーカリーでの販売や通販サイトの取り扱いも始め...

ダイバーシティ進め、組織の一体感を高める

旭工業有限会社(神奈川県綾瀬市)

目次

1.カーボン事業一筋、独自開発で活路を開く
2. 女性目線で働きやすい職場環境を実現
3.インクルージョンを推進、一人ひとりが活躍できる環境に
4.ものづくり技術を全国へ発信「Sumi Toaster」
5.子どもたちの“夢”を応援、そして世界へ

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1.カーボン事業一筋、独自開発で活路を開く

旭工業有限会社(嶋知之・代表取締役)の創業は1956(昭和31)年。今年66期目を迎えた同社は創業以来、軸受やシールリング、パッキンなど機械用カーボングラファイト(黒鉛ソリッド材・以下カーボン)製品の加工を中心に、オリジナル商品の開発から製造、販売も行っています。元々、日本カーボン精工株式会社(横浜市)から独立する形で事業を始めた同社。創業当初、工場周辺は田畑に囲まれた環境でしたが、時代と共に住宅も増え生活圏が形成されると、集塵(じん)機を使った粉塵対策を講じても洗濯物が黒くなるといった周辺環境との社会調和が難しくなり、現在の神奈川県綾瀬市に落ち着くまで2回の移転が行われたそうです。

同社建設時(綾瀬市内)のようす

写真説明】同社建設時(綾瀬市内)のようす(同社提供)

同社では、従来から「リサイクル可能な物は使用する」(目標15)ことを念頭に、カーボンの処分材や切削屑(くず)の分別・再利用といったリサイクル率の向上に加え、産業廃棄物の削減に取り組んでいたことから「これら環境対策は将来的(2030年目標)にSDGs(持続可能な開発目標)につながってゆく」とし2021(令和3)年5月「かながわSDGsパートナー」(同県主催)に登録。「働きやすい職場の環境づくり(目標8)」、「女性のエンパワーメント(同5)」[1]、「独自の商品開発(同9)」などの目標を掲げ、取り組みを進めています。

2. 女性目線で働きやすい職場環境を実現

女性活躍の促進を目的に女性従業員の雇用を進める同社ですが、毎年一定数の採用を行っており、2018(平成30)年当初の5人から、現在は全従業員男女34人の内、約3割に当たる11人の女性(正社員4人、パートタイマー7人)を採用しています。また、同社製造工程における「切削」や「磨き」、「機械操作」といった製造現場にも女性を配置。計5人の女性がそれぞれの現場で活躍しています。将来的には障がい者雇用も視野にダイバーシティ経営を推し進めるそうです。

女性従業員の雇用を進めるなか、嶋社長は「これまで思いも寄らなかった女性目線での気づきから、職場環境の設備・整備や生産性向上につながる改善がみられた」といいます。たとえば①強い力を入れないと機械に加工前の製品を取り付けることができない作業(工程)では、軽い力でも取り付け可能な治具を社内で作った結果、稼動率が向上した②重い製品を運ぶための台車を用意した…などです。また、機械操作が分かりやすく表示された操作パネルを設けるなど、安全面の配慮も行われています。

写真説明】製造現場で作業に当たる女性従業員(同提供)

これら以外に、職場環境整備の一環として女性更衣室と専用トイレの整備が進められてきましたが、新型コロナウィルス感染症対策(3密:密閉・密集・密接)として更衣室の拡大が行われています。

3.インクルージョンを推進、一人ひとりが活躍できる環境に

従業員のスキルアップ(目標4)に向けた研修会や講習会などを定期的に行っている同社では、2019年度は約70万円(計7回)、翌年度は約150万円(同24回)を社員教育に充てています。外部講師を招いたオンライン研修を中心に、コミュニケーション術や工場内の5Sに対する考え方を学んでいるそうです。また、時には社員が講師となり自らテーマを決め、ディスカッションが行われているほか、現場からのボトムアップで社内課題の解決に取り組んでいます。たとえば「稼動率向上」をテーマに行われたグループディスカッションでは、納期変更など「部署間の伝達事項の漏れ」について話し合いが持たれ、従業員それぞれに携帯端末を支給し、ビジネス用チャットツールを使い、情報を共有することで解決したほか、不良品などが出た際も即座に会議が開かれ、対応策が講じられるなど、インクルージョン[2]への取り組みが推し進められています。

定期的に開かれるグループディスカッション

写真説明】定期的に開かれるグループディスカッションのようす(同提供)

4.ものづくり技術を全国へ発信「Sumi Toaster」

カーボン加工の強みを生かし、独自商品の開発・販売(目標9)にも力を入れる同社では、加熱すると炭火と同等の遠赤外線を発するカーボンの特性に着目。2018(平成30)年から「Sumi(スミ)」シリーズとして鍋やプレート、トースターなどの製造・販売を行っています。元々、趣味としてバーベキューを楽しんでいた嶋社長ですが「火起こしができず、妻にからかわれたことが、誕生のきっかけだった」といいます。それ以降、日本バーベキュー連盟の会員となり、検定試験や炭火について研究を重ね続けるなかで、カーボンの特性を生かすことで、多くの食材をおいしく調理できることが分かり試行錯誤の結果、自社製品としてプレートが完成、販売を始めたということです。

2016(同28)年には綾瀬市ふるさと納税の返礼品としても採用され、現在は「Sumi Toaster(スミ・トースター)」や「Sumi Fuka Nabe(スミ・フカ・ナベ)」など4品が並びます。なかでも「Sumi Toaster」(11,000円・税込)は、外出自粛要請による巣ごもり需要や「おうちでパン作り」などのムーブメントでテレビや雑誌でも紹介されたことから大きな反響を呼び、販売数は「月200~300枚」(同社)、同市総合ランキングでも返礼品140品中、2位(2月現在)と好調です。

カーボン加工の強みを生かした「Sumi(スミ)」シリーズ㊧と「Sumi Toaster」

写真説明】カーボン加工の強みを生かした「Sumi(スミ)」シリーズ㊧と「Sumi Toaster」。写真左上から「Sumi Fuka Nabe」、「Sumi Nabe」、「Sumi Toaster」、「Sumi Ita grill(スミ・イタ・グリル)」(同提供)

また、地元ベーカリーでの販売や通販サイトの取り扱いも始めるなど、拡販を進めています。今後、Sumiシリーズは年1回のペースで新型が発売される予定で、これからも同市から全国に向け、同社のものづくり技術が発信されていきます。

5.子どもたちの“夢”を応援、そして世界へ

地域創生(目標8、11、12)では、嶋社長が「夢の実現」をテーマに同市内小学校へ出向き講演を行っているほか、今後は親子を対象とした工場見学も検討されています。なかでも、2021(令和3)年から小学6年生を対象に始めた講演では「Sumiシリーズ」を題材に「下請けからの脱却」を掲げる同社の歩みを紹介。嶋社長も「児童たちの聞く姿勢や反響も大きく、子どもたちの持つ夢実現のため、何かできないか改めて考えさせられた」といいます。また「将来的には海外で教育が浸透していない地域の子どもたちにも、事業を通じて何か援助ができないか考えている。世界に羽ばたきたい」と語ってくれました。

地元小学6年生を対象に「夢の実現」をテーマに開かれた講演会のようす(㊧)と、児童らに製品説明を行う嶋社長

写真説明】地元小学6年生を対象に「夢の実現」をテーマに開かれた講演会のようす㊧と、児童らに製品説明を行う嶋社長(同提供)

記事:産業革新研究所 編集部 深澤茂


記事中解説

[1] エンパワーメント…上司から部下へ権限移譲を行う概念・取り組み。チームや個人の能力を最大限に引き出す考え方。
[2] インクルージョン…企業など組織の誰でも成功に参画・貢献する機会があり、各々特有の経験や技術、考え方が認められ、活用されている状態。

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