QFDの歴史(その3)要求品質展開表と品質特性展開表の形成

 筆者は、品質表が設計品質を設定する重要な役割をもつことに注目して、これを品質展開の中に組み込む試みを各社で試しました。まずユーザーからの要求をカードに書き、KJ法的に1次、2次、…に分類する方法を、ダイニック[11]と小糸製作所等で試行しました。

 ここで重要なことは、ユーザーの要求品質を顧客の言語表現としたことと、その品質表の左の部分を特に、「要求品質展開表」と呼んだことです。この命名は有川嘉邦氏によるもので、当時社内的には「要品展」というニックネームで呼ばれました。現在要求品質展開表と品質特性展開表(もしくは品質要素展開表)とに区別され、これらのマトリックスが品質表とされています。現在品質表は、「顧客の世界を技術の世界に変換する」重要な役割をもつものとされています。

 その後1972年に示した品質展開の方法をベースに品質表を加え、さらに筆者は1974年頃より山梨大学の新藤久和、吉澤正氏の協力を得て、日本品質管理学会のQFD研究会の前身であるコンピュータ研究会等で研究し、「品質機能展開のトータルシステム」を構築し、新たな品質展開の方法を示したのです[12] [13]。

 この時期には、品質表の発表以来多くの会社で導入・研究されていましたが、筆者は日科技連出版社の新井紀弘氏から単行本出版の依頼を受けました。われわれと水野グループは、それまで全く独立して行なわれて来たもので、水野滋先生とご一緒にまとめることを提案しました。

 先生と相談した結果、水野滋・赤尾洋二編の著書の出版が決まりました。そこで筆者が全章の章立てを検討し、それぞれのグループに執筆者を依頼しました。布留川靖氏に一部の分担執筆を依頼しましたが返事がなかったため、別に品質システムの構築を目指しておられると解釈し、共同執筆者のお願いをしなかったことを反省しています。彼が品質表の形成に大きな役割をもっておられたことを後で知ったからです。

 このようにして、1978年にQFDの最初の単行本が出版されました[14]。「品質機能展開のトータルシステム」は、その本の第5章中で手順として示され、その後の適用の規範とされています。今日行われているKJ法的に要求品質展開表を作成し、また品質特性の抽出法、品質表の作成手順を示しています。

 上記学会の研究会に引き続いて、1977には「品質展開研究会」が組織され、筆者は吉澤、新藤氏等と共に、以後10年間に亘って研究を続けました。例えば、その研究会の初期の頃には、トヨタ車体の竹沢氏は、当社独自の特性展開表の上部に相関関係を示す三角形を配置し、その全体を「品質の家」と呼んでいました。これが1980年代初期に米国自動車産業に伝わり、日本で言う品質表の代わりに “House of Quality”と言う言葉が、米国では一般に使われています。

 その後、以上の品質展開に加え、1983年技術展開、信頼性展開およびコスト展開を試行し、これらを統合した「総合的QFD」の手順を紹介しました。このモデルは、変形されていろいろに用いられています。これは筆者の指導による玉川大学での小野禎俊氏の修士論文を基に、大藤正・小野照道氏等の協力を得てまとめたものです。この際、双葉電子(株)の当時の原田明専務に技術的指導を頂きました[15]。

つづく

参考文献:

[11]小林三平・山本泰造・小西恒男・有川嘉邦(1976):「営業部門における“要求品質展開表”の導入とその活用」、品質管理、Vol.27,11 月臨時増刊号、pp45-48.

[12]赤尾洋二・山田良治:(1977): 「品質展開システムとそのケース・スタディ」、品質、Vol.7,No.3,pp30-37.

[13]新藤久和・赤尾洋二・白地孝志. (1978):「品質展開コンピュータシステムQECS」, 品質、Vol.8,No.1,pp33-39.

[14]水野滋・赤尾洋二(1978):「品質機能展開―全社的品質管理へのアプロ-チ」、日科技連出版社; Mizuno,S.,Akao,Y.(ed.)(1994): ”QFD-The Customer-Driven Approach to Quality Planning and Deployment", Asian Productivity Organization”

[15] 赤尾洋二、小野禎俊、原田明、田中英鋪、岩沢和男(1983):「コスト・信頼性・技術を含めた品質展開)」、品質、Vol.13,No.3,61~70

QFD

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この記事の著者

赤尾 洋二

品質機能展開(QFD)の開祖

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