技術文書の品質管理(その6)技術文書の最小単位、文の品質管理

投稿日

技術文書の品質管理(その6)技術文書の最小単位、文の品質管理

 

今回は、技術文書の最小単位である文と、その品質管理について解説します。文の品質管理は技術文書の品質管理に含まれます。しかし、文の品質管理は重要なので今回このテーマで解説します。

【目次】

    1. 文の品質管理が重要

    技術文書は文章の集合体です。文章は文の集合体です。技術文書の中には写真、図、表などもありますが、技術文書の最小単位は“文”です。つまり、技術文書は文で構成されています。例えば、メールは文だけで構成されています。

     

    すなわち、技術文書の最小単位となる文の品質管理は、技術文書の品質管理を行ううえで重要な管理です。

     

    2. 文の品質管理とは

    文の品質管理とは「自分が書いた文の内容が明確に伝わるかどうかを確認すること」と「内容が明確に伝わらない文を内容が明確に伝わる文に修正すること」です。例えば、『製品Aと製品Bの販売個数は、約10,000個/月である。』の文を読んだ人(読み手)は「この文はどのような意味だろう?」と思います注1)。この文は2つの意味に解釈できるからです。つまり、この文は不良品の文(内容が明確に伝わらない文)です。

     

    文章は文の集合体です。文章の中にこのような不良品の文が入っていると文章全体が不良品(内容が明確に伝わらない文章)になります。文章全体が不良品だとその集合体である技術文書も不良品(内容が明確に伝わらない技術文書)になります。

    注1):「技術文書の品質管理(その1)文書の内容が明確に伝わるかどうかを確認」を参照 

     

    3. 文の品質管理に必要なこと

    3.1 「文の品質管理に必要なこと」とは

    文の品質管理に必要なこととは「内容が明確に伝わらない文の基準を持つこと」と「内容が明確に伝わらない文の修正方法がわかること」です注1)。文の品質管理では「6つのルールと18の書き方注2)・注3)」の中の「ルール6」を習得すれば、内容が明確に伝わらない文の基準ができるとともに内容が明確に伝わらない文の修正方法がわかります。

     

    技術文書の品質管理(その6)技術文書の最小単位、文の品質管理

     

    技術文書の品質管理(その6)技術文書の最小単位、文の品質管理

     

    注2):「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その2)」を参照 
    注3):「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その10)」を参照 

     

    3.2 具体的な文の品質管理

    内容が明確に伝わらない文の基準とこの修正方法について「製品Aと製品Bの販売個数は、約10,000個/月である」の文を対象にして解説します。

    この文は「書き方14:意味が明確な文を書く」に抵触しています。書き方14とは、「意味が明確になるように必要な語句を忘れずに文を書くこと」です。この考え方に基づきこの文を修正すると以下のようになります。

    • ◆製品Aと製品Bの販売個数は、これらの合計で約10、000個/月である。
    • ◆製品Aと製品Bの販売個数は、それぞれ約10、000個/月である。

    つまり、修正前の文には「これらの合計で」あるいは「それぞれ」の語句が欠けていました。「これらの合計で」を入れるか「それぞれ」を入れるかで文の意味が異なります。

     

    4. 文の品質管理を行う

    文を書いたら文の品質管理を行うことで不良品の文(内容が明確に伝わらない文)を書くことがなくなります。

     

    文を書いたら文の品質管理を行うことは「日々のオンザジョブトレーニング注4)」です。日々のオンザジョブトレーニングで以下の2つの文が不良品の文(内容が明確に伝わらない文)であることがわかります。また、これらの2つの文を内容が明確に伝わる文に修正する方法がわかります。

    • ◆この課題の解決策を提案できたのは技術第2部の山...

    技術文書の品質管理(その6)技術文書の最小単位、文の品質管理

     

    今回は、技術文書の最小単位である文と、その品質管理について解説します。文の品質管理は技術文書の品質管理に含まれます。しかし、文の品質管理は重要なので今回このテーマで解説します。

    【目次】

      1. 文の品質管理が重要

      技術文書は文章の集合体です。文章は文の集合体です。技術文書の中には写真、図、表などもありますが、技術文書の最小単位は“文”です。つまり、技術文書は文で構成されています。例えば、メールは文だけで構成されています。

       

      すなわち、技術文書の最小単位となる文の品質管理は、技術文書の品質管理を行ううえで重要な管理です。

       

      2. 文の品質管理とは

      文の品質管理とは「自分が書いた文の内容が明確に伝わるかどうかを確認すること」と「内容が明確に伝わらない文を内容が明確に伝わる文に修正すること」です。例えば、『製品Aと製品Bの販売個数は、約10,000個/月である。』の文を読んだ人(読み手)は「この文はどのような意味だろう?」と思います注1)。この文は2つの意味に解釈できるからです。つまり、この文は不良品の文(内容が明確に伝わらない文)です。

       

      文章は文の集合体です。文章の中にこのような不良品の文が入っていると文章全体が不良品(内容が明確に伝わらない文章)になります。文章全体が不良品だとその集合体である技術文書も不良品(内容が明確に伝わらない技術文書)になります。

      注1):「技術文書の品質管理(その1)文書の内容が明確に伝わるかどうかを確認」を参照 

       

      3. 文の品質管理に必要なこと

      3.1 「文の品質管理に必要なこと」とは

      文の品質管理に必要なこととは「内容が明確に伝わらない文の基準を持つこと」と「内容が明確に伝わらない文の修正方法がわかること」です注1)。文の品質管理では「6つのルールと18の書き方注2)・注3)」の中の「ルール6」を習得すれば、内容が明確に伝わらない文の基準ができるとともに内容が明確に伝わらない文の修正方法がわかります。

       

      技術文書の品質管理(その6)技術文書の最小単位、文の品質管理

       

      技術文書の品質管理(その6)技術文書の最小単位、文の品質管理

       

      注2):「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その2)」を参照 
      注3):「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その10)」を参照 

       

      3.2 具体的な文の品質管理

      内容が明確に伝わらない文の基準とこの修正方法について「製品Aと製品Bの販売個数は、約10,000個/月である」の文を対象にして解説します。

      この文は「書き方14:意味が明確な文を書く」に抵触しています。書き方14とは、「意味が明確になるように必要な語句を忘れずに文を書くこと」です。この考え方に基づきこの文を修正すると以下のようになります。

      • ◆製品Aと製品Bの販売個数は、これらの合計で約10、000個/月である。
      • ◆製品Aと製品Bの販売個数は、それぞれ約10、000個/月である。

      つまり、修正前の文には「これらの合計で」あるいは「それぞれ」の語句が欠けていました。「これらの合計で」を入れるか「それぞれ」を入れるかで文の意味が異なります。

       

      4. 文の品質管理を行う

      文を書いたら文の品質管理を行うことで不良品の文(内容が明確に伝わらない文)を書くことがなくなります。

       

      文を書いたら文の品質管理を行うことは「日々のオンザジョブトレーニング注4)」です。日々のオンザジョブトレーニングで以下の2つの文が不良品の文(内容が明確に伝わらない文)であることがわかります。また、これらの2つの文を内容が明確に伝わる文に修正する方法がわかります。

      • ◆この課題の解決策を提案できたのは技術第2部の山田君以外にいなかった。
      • ◆3日前にA社から受け取った資料を紛失した。

       

      注4):「内容が明確に伝わる技術文書の書き方(その36)」を参照 

       

      【関連文献紹介】森谷仁著、「マンガでわかる技術文書の書き方」、オーム社、令和4年3月25日

      ◆関連解説記事:実践!技術マネジメント:7つのプロセスと35のチェックポイント

       

      特集】技術士第二次試験対策:技術士第二次試験に関する記事まとめページはこちら!口頭試験や論文対策などのポイントについての記事を紹介しています。

       

       

         続きを読むには・・・


      この記事の著者

      森谷 仁

      「君の書く文書は、わかりにくい」と言われる技術者から、「君の書く文書は、わかりやすい」と言われる技術者へのステップアップ!

      「君の書く文書は、わかりにくい」と言われる技術者から、「君の書く文書は、わかりやすい」と言われる技術者へのステップアップ!


      「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

      もっと見る
      ムーンショットとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その62)

      ◆ 挑戦的な研究開発:ムーンショット型研究開発事業について感じたこと  今回は、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度」の話題です。  ム...

      ◆ 挑戦的な研究開発:ムーンショット型研究開発事業について感じたこと  今回は、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発制度」の話題です。  ム...


      イメージしにくい商材の良さを伝えるには 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その39)

              今回は企画提案や初期開発でつまづきやすい、「開発商材の良さ」が相手に伝わらないという悩みの解...

              今回は企画提案や初期開発でつまづきやすい、「開発商材の良さ」が相手に伝わらないという悩みの解...


      新規事業部を作れば済むと思っていないか~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その18)

         【目次】 今回は、経営者的なリソース配分の解説です。面白い商品・事業を生み出すのに、優秀な経営者はどのように...

         【目次】 今回は、経営者的なリソース配分の解説です。面白い商品・事業を生み出すのに、優秀な経営者はどのように...


      「技術マネジメント総合」の活用事例

      もっと見る
      富士フィルムにおけるコア技術の活用戦略

       本業であるフィルム事業がなくなることを経験した、富士フィルムの技術の棚卸活動は注目に値します。アスタリフトや液晶用フィルムは、フィルム事業で培ったコア技...

       本業であるフィルム事業がなくなることを経験した、富士フィルムの技術の棚卸活動は注目に値します。アスタリフトや液晶用フィルムは、フィルム事業で培ったコア技...


      トレーサビリティの保証 プロジェクト管理の仕組み (その44)

       前回のその43に続いて解説します。    ハードウェア設計も、ソフトウェア設計ほど明確ではありませんが、同じように開発工程ごとに関連する設...

       前回のその43に続いて解説します。    ハードウェア設計も、ソフトウェア設計ほど明確ではありませんが、同じように開発工程ごとに関連する設...


      スーパーマンではなくプロフェッショナルな技術者に(その2)

      【プロフェッショナルな技術者 連載目次】 1. 製品開発現場が抱えている問題 2. プロフェッショナルによる製品開発 3. 設計組織がねらい通り...

      【プロフェッショナルな技術者 連載目次】 1. 製品開発現場が抱えている問題 2. プロフェッショナルによる製品開発 3. 設計組織がねらい通り...