技術文書の品質管理(その4)技術文書の品質管理の必要性

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技術文書の品質管理(その4)技術文書の品質管理の必要性

 

今回は、技術文書の品質管理の必要性について解説します。

 

1. 製造業での品質管理

製造業では品質管理が非常に重要です。品質管理を怠り不良品を出すと会社の信用を失うことがあるからです。近年、あらゆる分野で製品検査の不正が発覚しています。製造業でも発覚しています。不正が発覚した結果、信用を失った会社もあります。

 

会社の信用を失うと大変な事態になるため製造業では品質を徹底して管理します。

 

2. 技術文書の品質管理

日常業務の中で作成する技術文書注1)に対して徹底した品質管理を行うことは個人にも会社にもないと思います。ここで、技術文書の品質管理とは、自分が書いた技術文書の内容が明確に伝わるかどうかを確認することです注2)

注1):技術文書とは、日常業務の中で書くすべての文書のことです。例えば、報告書、会議や打ち合わせで使う資料、提案書、企画書、日常のメールなどです。
注2):「技術文書の品質管理(その1)」を参照

 

技術文書の品質管理が行われていない理由は2つあります。

■理由1:「技術文書の品質管理」という考えがない

「自分が書いた技術文書は読み手に伝わっている」と思っているからです。あるいは、このようなことも考えていないかもしれません。これは、「もしかしたら、今書いたこの技術文書では内容が明確に伝わらないかもしれない」という疑問を持たないからです。このため、「技術文書の品質管理をする」という考えがないと思います。

 

■理由2:技術文書の品質管理を怠っても大きな問題にならない

自分が書いた技術文書の品質が悪くこれが不良品であっても(内容が明確に伝わらない技術文書を書いても)会社の信用を失うことはありません。つまり、技術文書の品質管理を怠っても大きな問題になりません。

 

例えば、クライアントに提出した業務報告書の内容の中に一部わかりにくい箇所(内容が明確に伝わらない箇所)があっても会社の信用を失うことはないと思います。わかりにくい箇所を指摘されたりわかりにくい箇所の修正を指示されたりする程度だと思います。

 

ただ、クライアントに品質が悪い技術文書を何度も出すとこれらの技術文書を書いた技術者の評価が落ちることがあるかもしれません。

 

3. 技術文書の品質管理の必要性を認識する

技術文書の品質管理は必要です。技術文書の品質管理を怠ると(内容が明確に伝わらない技術文書を書くと)読み手の貴重な仕事の時間を奪うからです注3)。自分の仕事の時間を無駄に使うことがあるかもしれないからです注3)

 

また、製造業などでの品質管理にも関係している可能性があるからです。技術文書はコミュニケーションの手段です注4)。製品を作る場合にも、これに従事している様々な関係者と技術文書を通したコミュニケーションを取りながら製品を作ります。例えば、メールを通したコミュニケーションや会議の資料を通したコミュニケーションです。

 

わかりにくいメール(内容が明確に伝わらないメール)やわかりにくい会議の資料(内容が明確に伝わらない会議の資料)を書けば様々な関係者との正確なコミュニケーションが取れません。その結果、これが不良品を作る原因になるかもしれません。

 

技術文書の品質管理を怠り品質の悪い技術文書を書くと様々な悪影響が出ます。技術文書の品質管理の必要性を認識すべきです。

 

注3):「内容が伝わり難...

技術文書の品質管理(その4)技術文書の品質管理の必要性

 

今回は、技術文書の品質管理の必要性について解説します。

 

1. 製造業での品質管理

製造業では品質管理が非常に重要です。品質管理を怠り不良品を出すと会社の信用を失うことがあるからです。近年、あらゆる分野で製品検査の不正が発覚しています。製造業でも発覚しています。不正が発覚した結果、信用を失った会社もあります。

 

会社の信用を失うと大変な事態になるため製造業では品質を徹底して管理します。

 

2. 技術文書の品質管理

日常業務の中で作成する技術文書注1)に対して徹底した品質管理を行うことは個人にも会社にもないと思います。ここで、技術文書の品質管理とは、自分が書いた技術文書の内容が明確に伝わるかどうかを確認することです注2)

注1):技術文書とは、日常業務の中で書くすべての文書のことです。例えば、報告書、会議や打ち合わせで使う資料、提案書、企画書、日常のメールなどです。
注2):「技術文書の品質管理(その1)」を参照

 

技術文書の品質管理が行われていない理由は2つあります。

■理由1:「技術文書の品質管理」という考えがない

「自分が書いた技術文書は読み手に伝わっている」と思っているからです。あるいは、このようなことも考えていないかもしれません。これは、「もしかしたら、今書いたこの技術文書では内容が明確に伝わらないかもしれない」という疑問を持たないからです。このため、「技術文書の品質管理をする」という考えがないと思います。

 

■理由2:技術文書の品質管理を怠っても大きな問題にならない

自分が書いた技術文書の品質が悪くこれが不良品であっても(内容が明確に伝わらない技術文書を書いても)会社の信用を失うことはありません。つまり、技術文書の品質管理を怠っても大きな問題になりません。

 

例えば、クライアントに提出した業務報告書の内容の中に一部わかりにくい箇所(内容が明確に伝わらない箇所)があっても会社の信用を失うことはないと思います。わかりにくい箇所を指摘されたりわかりにくい箇所の修正を指示されたりする程度だと思います。

 

ただ、クライアントに品質が悪い技術文書を何度も出すとこれらの技術文書を書いた技術者の評価が落ちることがあるかもしれません。

 

3. 技術文書の品質管理の必要性を認識する

技術文書の品質管理は必要です。技術文書の品質管理を怠ると(内容が明確に伝わらない技術文書を書くと)読み手の貴重な仕事の時間を奪うからです注3)。自分の仕事の時間を無駄に使うことがあるかもしれないからです注3)

 

また、製造業などでの品質管理にも関係している可能性があるからです。技術文書はコミュニケーションの手段です注4)。製品を作る場合にも、これに従事している様々な関係者と技術文書を通したコミュニケーションを取りながら製品を作ります。例えば、メールを通したコミュニケーションや会議の資料を通したコミュニケーションです。

 

わかりにくいメール(内容が明確に伝わらないメール)やわかりにくい会議の資料(内容が明確に伝わらない会議の資料)を書けば様々な関係者との正確なコミュニケーションが取れません。その結果、これが不良品を作る原因になるかもしれません。

 

技術文書の品質管理を怠り品質の悪い技術文書を書くと様々な悪影響が出ます。技術文書の品質管理の必要性を認識すべきです。

 

注3):「内容が伝わり難い技術文書を書くことで起こる重大なこと」を参照
注4):「“技術文書を書くこと”について考える(その1)」を参照

 

【関連文献紹介】森谷仁著、「マンガでわかる技術文書の書き方」、オーム社、令和4年3月25日

◆関連解説記事:実践!技術マネジメント:7つのプロセスと35のチェックポイント

 

特集】技術士第二次試験対策:技術士第二次試験に関する記事まとめページはこちら!口頭試験や論文対策などのポイントについての記事を紹介しています。

 

 

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この記事の著者

森谷 仁

「君の書く文書は、わかりにくい」と言われる技術者から、「君の書く文書は、わかりやすい」と言われる技術者へのステップアップ!

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